旅レポ

木更津KiSARA、銘柄豚「林SPF豚」を使った新メニューを7月から提供

千葉内房の生産者を訪ねるプレスツアーに参加

2016年6月27日 開催

木更津の広大な田園のなかにある平野養豚場

 カジュアル割烹「木更津KiSARA」は7月1日より、これまでの海鮮料理に加え千葉県内10軒の養豚場でしか飼育されていない「林SPF豚」を使った新メニューを提供する。それに先駆け、新メニューと生産者を紹介する報道関係者向けのツアーを開催したので、その様子をレポートする。

 木更津KiSARAは、地産地消をスローガンに、千葉県内房の食材にこだわった海鮮料理を提供するカジュアル割烹。三井アウトレットパーク木更津の駐車場前の立地で、県外からの来客も多いという。店舗はコンテナを利用したモダンな内装で、バーベキューも楽しめるテラス席では、ペット同伴も可能となっている。

木更津KiSARA

営業時間:ランチ11時30分~15時、ディナー17時~22時(ラストオーダー21時)
定休日:不定休
所在地:千葉県木更津市金田東6-3-6
TEL:0438-38-6887
Webサイト木更津KiSARA

 新メニューの目玉となる「林SPF豚」は、SPF種豚を両親にもつ肉豚を「日本SPF豚協会」の認定基準に沿った方式で育てた健康豚。トキソプラズマ感染症、豚赤痢、オーエスキー病、マイコプラズマ肺炎、萎縮性鼻炎の5つの大きな疾病を排除して生まれた健康な豚を育てたもの。抗生物質やワクチンを減らすことができ、安全、安心の豚として注目されている。

銘柄豚「林SPF豚」を育てる「平野養豚場」

平野養豚場の入口。防疫と衛生管理のため、これるのはここまで
林SPF豚を飼育する苦労を語る平野養豚場の平野賢治さんと恵さん

 林SPF豚を飼育する平野養豚場は、木更津では唯一の養豚場。家族3人で母豚120頭、計1300頭を飼育している。林SPF豚の飼育コストは6割が餌代で、餌は小麦やトウモロコシなど植物性のもの。脂身が甘く、軽い口当たりになるのだという。脂の質が落ち、豚の臭みが出る動物性油脂はコストが安くても使用しないという。

 餌代が高いという理由などで、林SPFブランドを飼育していた養豚場はもともと30軒ほどあったが、現在は10軒に減ってしまったという。平野養豚場の平野賢治さんは、「安心・安全だけではなく、美味しさにこだわっている。美味しい豚を作り続けることでブランド価値を守り、いい餌を使い続けることができる」と語る。

小麦やトウモロコシなど植物から作られた肉豚用の飼料。成長に合わせて5種類の餌を使い分ける
親豚用の飼料は、授乳期・妊娠期で使い分ける

1834年創業の「宮醤油店」

今年で創業182年目となる老舗の宮醤油店

 続いて訪れたのは、全国の醤油品評会で何度も上位入賞している「宮醤油店」。1834年に創業し、今年で182年目となる老舗の醤油店で、木更津KiSARAでも、刺身醤油と生醤油を使っている。店舗の建物は、1892年の建築で、近代和風建築として国の登録有形文化財に指定されている。

 醤油作りを説明する宮醤油店の宮敬一郎さんは、「千葉県内で一貫生産している醤油メーカーは、昭和初期には400軒近くあったが激減し、現在は13軒しかない。千葉県で一番南に位置する醤油メーカーです」と説明。なかでも宮醤油店は、自然のままの温度でもろみの発酵、熟成を行なわせる天然醸造という方式で、いまでも昔ながらの作り方をしている県内唯一のメーカーだという。

 もろみを発酵、熟成させるための桶は、創業当時は3本だったが現在は31本。大手の醤油メーカーは金属や樹脂製だが、こちらは杉の木でできている。木の桶には微生物が住み着き、それがもろみに作用して発酵を助ける。それぞれの桶で微生物が異なるため桶ごとに個性があり、味のばらつきも生じるが、条件がよい年は本当に美味しい醤油が作れるという。

1892年に建てられた店舗は、登録有形文化財に指定されている
順を追って醤油造りを説明する宮醤油店の宮敬一郎さん
もろみ桶は、直径3メートル、高さ2.7メートルで、約11000Lの容量。発酵期間は1~2年
下から見たもろみ桶
熟成したもろみから醤油を絞り出すプレス機
醤油は加熱することで香りが出る。プレス機で絞った生醤油は香りがないと宮さん
醤油とは違い、ワインにも似たフルーティな香りだった
醤油の絞りかすは、昔は飼料として販売されていたが、いまでは産業廃棄物になるという。宮醤油店では、契約農家に飼料として引き取ってもらっている
醤油を瓶詰めする機械。1日4000本作ることができ、月の半分ほど稼働しているという
駐車場には、以前使われていたもろみ桶が置かれていた。クルマと比較すると大きさがよく分かる

テレビでもたびたび取り上げられる海苔メーカー「富津 影丸」

テレビ取材も多く、有名な海苔の個人メーカー「富津 影丸」

 富津の海は遠浅で、古くから海苔の養殖が盛んな地域。江戸前の海苔は、木更津の金田と富津が90%以上のシェアを誇るという。見学した海苔メーカーの「富津 影丸」は、地域でも有数の個人海苔メーカーで、テレビでも多く取り上げられている。

 東日本大震災で40隻の船が転覆。5年前に数千万円の借金をして工場を建て、導入した海苔の加工機械は、全国で一番大きいもので7000万円とのこと。大手の海苔メーカーも全国から見学に訪れるという。海苔の作付けから加工、販売まで個人で行なっているため、大手メーカーではできない商品もあり、生海苔の佃煮は千葉県の優良推奨品となっている。

全国で一番大きい海苔の加工機械とのこと。海苔は冬がシーズンのため、デモンストレーションのみだった
ユニークで話も面白い影丸の景山社長
生海苔の味噌汁を試食した

小糸川漁港の見学後は「木更津KiSARA」で新メニューのお披露目

小糸川漁港

 小糸川漁港で、その日水揚げされたばかりの新鮮な魚介類を見学して、一行は木更津KiSARAへ到着。新メニュー試食会では、木更津KiSARA総支配人の中島正裕氏が登壇。「千葉の魅力ある食材に、経験豊富な板前の技を加えた料理を、美味しく味わっていただきたい。この地域の魅力をたくさんの人に伝えたい。そういう思いで、この場所に2年前にオープンした」と挨拶した。

 また、「地産料理は安定した供給量、仕入れ金額を維持するのが難しく、場合によっては原価率が80%を超えることもある。それでも仕入れたいと思える魅力あふれる食材が千葉にはたくさんある。そのなかでも、小糸川漁港の魚介類や、ようやく巡り会えた林SPF豚を使った料理を今回提供する」と新メニュー提供の意気込みを述べた。

小糸川漁港では、水揚げされたばかりの新鮮な魚介類を見学
今日水揚げしたなかで一番大きいスズキ
ツアーの移動中に配られた軽食は、木更津KiSARAこだわりのお米の味を味わえる銀シャリと、木更津のひじき、アサリを使った3種類のおにぎり
三井アウトレットパーク木更津のP4駐車場前にある「木更津KiSARA」
報道陣やゲストを招いての新メニュー試食会が開催された
「ようやく巡り会えた林SPF豚を使った料理を提供する」と新メニューへの意気込みを語る総支配人の中島正裕氏

 続いて、元木更津市商工会議所青年部会長で木更津KiSARAとも深い関係があるという千葉県議会議員の森岳氏が登壇し、「木更津KiSARAのファン第1号だと思っている。完成する前から通っていて、プレオープンにも参加した。木更津市は人口が増え続け、飲食店も増加している。そのなかで、地産地消にこだわっている店舗は多くないと思う。木更津KiSARAを拠点に近隣が発展してしていってほしい」と語った。

 さらに木更津KiSARAと生産者の窓口となっている地域アドバイザーの地引直輝氏、タレントの清水国明さん、女優の東ちづるさんらが挨拶。東さんは難病や障害などのマイノリティーPR表現団体の代表として、木更津KiSARAで販売するスイーツのプロデュースも行なっている。

木更津KiSARAのファン第1号を自負する千葉県議会議員の森岳氏
木更津KiSARAと生産者をつなぐ窓口として活躍する地域アドバイザーの地引直輝氏
地産地消に期待しているというタレントの清水国明さん
木更津KiSARAで販売するスイーツのプロデュースも行なう女優の東ちづるさん
木更津KiSARAは、美味しい食材をちゃんと料理できる素晴らしさがあると語る千葉県外房地区地域アドバイザーの那部智史氏

 乾杯の発声は、千葉県外房地区地域アドバイザーもしている那部智史氏。試食中は、平野養豚場の平野恵さんが改めて林SPF豚を説明。木更津KiSARAで使う米の土壌改良については、エーピー・コーポレーションの斎藤太一氏が説明した。

林SPF豚を説明する平野養豚場の平野恵さん
土壌微生物活性剤を使い、1年かけて米を作ったというエーピー・コーポレーションの斎藤太一氏
お通しで出てきたなめろう。当日の新鮮な魚貝を使い、特製の赤味噌とスパイスを絡めている

 木更津KiSARAの新メニューで一番力を入れているのは、林SPF豚を使ったメニュー。「“出汁”しゃぶ」は、料理長のこだわりの“和出汁”が、林SPF豚の特徴である「脂身」の甘さと旨さを引き出す。1人前1500円(税別)で、2人前から注文できる。肉の追加は1000円(税別)。実際に食すと、豚特有の臭みがなく、脂身が軽やかで甘い。熱を加えすぎると一般的に肉は固まってしまうが、撮影のため長い時間出汁の中に入れていても、いつまでも軟らかいままだったのには驚いた。

 試食会では、林SPF豚の旨さを感じられるように、豪快にグリルやバーベキューも提供された。一頭買いした林SPF豚をグリルし、スタッフが目の前で食べやすい大きさに切り分ける。出汁しゃぶでは薄くスライスした肉だったが、こちらは大きなかたまりとあって、より肉の味を感じることができると、期待してほおばってみた。すると口の中で脂身がとろけ、旨みが広がる。脂身のかたまりを食べても、十分に味を感じて美味しかった。

 林SPF豚だけではなく、試食会で口にしたものすべてが新鮮で美味しく感じた。カツの添え物の千切りキャベツでさえ甘みがあって、ソースもなにもつけずに食べてしまった。林SPF豚を使った新メニューの提供は7月1日からだが、7月31日までアサリとホンビノス貝の浜焼き食べ放題(1人1500円、60分間)も提供されている。夏の行楽で近くを訪れた際に、ぜひ立ち寄ってみてはいかがだろうか。

林SPF豚を使った出汁しゃぶ。通常はロースとバラ肉で提供されるが、今回の試食では脂の旨みを味わえるようにバラ肉で提供された
豚特有の臭みは感じず、脂身がさっぱり軽やかでいて甘く感じる
新鮮な魚介類のお造り
濃厚な味わいのホンビノス貝
林SPF豚のとんかつ(手前)。試食はひとくちサイズだが、実際に提供されるのは普通の大きさになるとのこと
テラスで提供されていた豪快なグリル。林SPF豚のティーボーン
人気メニュー。本マグロを中心に毎日違う食材が入った海宝丼
東京湾でとれる脂の乗った地穴子を使った地穴子重
当日の新鮮な魚介を使って赤味噌仕立てのなめろう重膳
季節や日によってさまざまな味が楽しめる新鮮な魚介類のお造り
新鮮な魚介を使った本格的な懐石のコース料理(2人分)。都内と比べて同じ品質を半額程度で提供できるという

政木 桂