【イベントレポート】パリ航空ショー2015
パリ航空ショー2015に登場した軍用機ギャラリー
(2015/6/23 14:14)
- 2015年6月15日~6月21日(現地時間) 開催
フランス パリ郊外のル・ブルジェ空港で開催された「パリ航空ショー2015」は、“航空ショー”(Air Show)という名のとおり、民間機のみではなく、軍用機を含めた航空機全般が出展の対象となっている。
国内でも航空自衛隊の基地航空祭に数十万単位の人が集まるなど、そのテクノロジやフォルムに興味を持つ人が多い。本稿ではパリ航空ショーで地上展示、飛行展示された注目の軍用機をまとめる。
ダッソー「ラファール」(フランス空軍)
機体、エンジンともにフランス独自開発の戦闘攻撃機(当初はイギリス・ドイツとの共同開発計画だったが頓挫)。エンジンはスネクマ製「M88」エンジンの双発。今回飛行展示を行なった単座のC型のほか、複座のB型、海軍向け艦載機のM型などの派生型がある。
空母上での運用を考慮し、機体はかなり小型で、デルタ翼とカナード(クロースカップルドデルタ)が特徴。初飛行は1986年。海外への売り込みも積極的でありながら契約を得られない状況が続いていたが、2015年に入ってインド、エジプト、カタールが次々と導入を決定した。
エアバス「A400M」
エアバス・ミリタリーが開発した軍用輸送機。米国製のC-130とC-17の間を埋める搭載量の機材として開発されたが、エンジンと機体の両方を新規開発としたことが祟って開発は大幅に遅れ、当初は2009年デリバリー開始予定であったのが、量産初号機がフランス空軍に引き渡されたのは2013年であった。
エンジンは、MTUアエロエンジンズ、ロールスロイス、スネクマ、インダストリア・デ・ターボ・プロパルザーズの合弁企業であるユーロプロップ インターナショナル製の「TP400-D6」を4発搭載する。
現在、フランス、ドイツ、イギリス、スペイン、ベルギー、トルコ、ルクセンブルク、マレーシアが導入を決めているが、2015年5月にスペインで試験飛行中に墜落する事故が発生し、さらなる計画の遅延が危惧されている。
NHインダストリーズ「NH90」
フランス、ドイツ、オランダ、イタリアが共同開発した軍用輸送ヘリコプター。胴体とローターブレードがすべて複合材製であることが特徴で、自動操縦とフライ・バイ・ワイヤを採用するなど先進的設計となっている。
エンジンはロールス・ロイス・チュルボメカ製「RTM322-01/9」を2発備える。1995年に初飛行し、2005年から引き渡しが開始され、現在までに241機が納入済みとなっている。一時期、日本でも海上自衛隊の「SH-60J」の後継機として候補に上がったが、「SH-60K」が選定され、導入には至らなかった。
DGA「Fokker 100 飛行試験機」
フランス国防省 装備総局(DGA:Direction generale de l'Armement)が保有する飛行試験機で、ベース機体はFokker 100であるが、ノーズ部分が戦闘機のノーズ形状になっており、また翼下や胴体下に兵装を取り付けるためのハードポイントが設置されているなどの改造がなされている。主に戦闘機用のレーダーやターゲティングポッド、ミサイルといった各種兵装・装備品を飛行試験するための機材で、2013年12月に導入され、今回初公開となった。
今回の展示では、ノーズ部分にはラファールのノーズが取り付けられており、内部には戦闘機用のタレス製「RBE-2アクティブフェーズドアレイレーダー」(AESA)が収められているほか、翼下にはミサイルの供試体が、胴体下にターゲティングポッドが装着されていた。機内は試験用機材が並んでいるが、最後部に15席だけ客席が装備されている。
パキスタン空軍「JF-17」
JF-17は、中国とパキスタンが共同開発した戦闘機(中国名:FC-1)で、パリ航空ショー初参加。Mig-21やF-16を参考に開発したと言われているが、ダイバータレス・バンプ・インテーク(注)を量産機としては初めて実用化するなど、先進的な部分も見られる。
開発中に西側諸国と関係が悪化したため、レーダーやアビオニクスも独自開発となった(当初は米国からの輸入を見込んでいた)。エンジンはロシアのクリーモフ製「RD-93」単発。今回のパリ航空ショーで初めて海外から受注したことが発表された(相手国や機数などは公表されず)。
(注)飛行中、機体の表面付近を流れる空気には、機体表面との摩擦により流れが遅くなった「境界層」が発生するが、エンジンにはできるだけ均一な気流を吸い込ませたいため、エンジンのインテークに「ダイバータ」という部品を設けて、境界層を分離する方法がよく採られる。ダイバータレス・バンプ・インテークはダイバータを持たず、代わりに機体表面の「バンプ(コブ)」で境界層を分離する方法。
アントノフ「An-178」
An-178はウクライナのアントノフが開発中の輸送機で、5月7日に初飛行したばかり。エンジンはイーウチェンコ設計局プロフレース「D-435-148FM」という3軸ターボファンの双発。今回のパリ航空ショーで、西側諸国への輸出を目指し、米国製アビオニクスとエンジン(CF34またはPW1500G)を装備する派生型が発表された。
テキストロン「スコーピオン」
「スコーピオン」はテキストロンが開発中の軽攻撃機で、今回がパリ航空ショー初参加。既存の戦闘攻撃機を投入するほどではない比較的低脅威での対地攻撃に特化した近接航空支援機で、滞空性能を高めるため、アスペクト比の高い主翼を持つ。まだ受注はないが、米国をはじめとして売り込みをかけている。また、米空軍の次期練習機(T-X)への採用も目指している。
エアバス「E-Fan」
E-Fanはエアバスが開発した2人乗り電動航空機。2014年に初飛行し、現在は実証中だが、2017年頃からの市販を目指す。主翼内にリチウムイオン電池を備え、2基の30kWのモーターによりファンを駆動し、266lbsの推力(1基あたり)を得る。最高速度は220km/hで、最大1時間程度飛行できる。