【イベントレポート】ツーリズムEXPOジャパン2016

日本財団パラリンピックサポートセンター、パラスポーツ導入の運動会プログラム「あすチャレ!運動会」の実施を発表

運営、実施のサポートとプログラム開発にJTBが協賛

2016年9月22日~25日 開催

 パラサポ(日本財団パラリンピックサポートセンター)は9月24日、ツーリズムEXPOジャパン会場内で記者会見を開催し、企業や自治体、大学などの全国の法人を対象とした、パラスポーツを取り入れた運動会プログラム「あすチャレ!運動会」を、JTBグループが協賛して実施すると発表した。

 あすチャレ!運動会は、一人でも多くの人が楽しみながらパラスポーツに触れる機会を創出したいという想いから誕生したもので、企業や大学などが実施している運動会に組み込むプログラムとして提供される。パラスポーツの振興を目的として、「ユニバーサル」と「スポーツ」の要素を合わせ持つ独自のプログラムとなっている点が特徴で、プログラムに必要となる車いすなどのパラスポーツ用品を無償で貸出すとともに、運営スタッフとしてパラスポーツの指導トレーニングを受けた人材も派遣される。

 そして、パラスポーツを通じて、障がいへの気付きを与え、意識を変え、行動、明日へのチャレンジへとつなげていく事業となる。併せて、あすチャレ!運動会の運営や実施をサポートするために、JTBグループが協賛し、プログラム開発に協力することも発表された。

挨拶するパラサポ会長の山脇康氏

 発表会の冒頭、パラサポ会長の山脇康氏が次のように挨拶を行なった。

「日本財団パラリンピックサポートセンターは、昨年(2015年)5月設立以来、2020年東京パラリンピック大会の成功、およびその後の共生社会への変革を目指すパラリンピックムーブメントの推進を目的に、より多くパラリンピックやパラスポーツに関心を持っていただく取り組みを進めています。その一つとして、4月より「あすチャレ!スクール」と題して全国の小中学校に車いすバスケットボールの出張授業を始めていまして、本年度中に100校、3万人の受講を予定しています。一方、パラスポーツに興味があっても、なかなか触れる機会がない、ぜひパラスポーツを見るだけではなく体験したいという声を、多くの企業や大学からいただいています。そこで、複数のパラスポーツを体験できる機会を作れないかと考えて、『あすチャレ!運動会』を企画しました。最近、企業の運動会が盛んになっていますが、主目的は社内のコミュニケーション向上やチームのビルドアップ、社員の融合といったものです。パラスポーツのプログラムには目隠しをしてコミュニケーションを取らなければならないものもありますので、パラスポーツが参加する人々のコミュニケーションを向上させるのにピッタリではないかと考えます。企業や自治体、大学の皆さまは、ぜひあすチャレ!運動会を活用いただいて、本事業を通じてパラスポーツの魅力を感じ、2020年東京パラリンピック大会につなげたいと思います。また、あすチャレ!運動会は、JTBさんの協賛をいただくことで実現できました。協賛だけでなく、プログラムの開発にも協力いただきましたことにお礼申し上げます」。

あすチャレ!運動会の趣旨や提供されるプログラムについて説明する、パラサポ 常務理事の小澤直氏

 続いて、パラサポ 常務理事の小澤直氏より、あすチャレ!運動会の趣旨や提供されるプログラムについて説明された。パラサポは、お年寄りや障がい者、外国人など、人と人との間にあえて線を引いて区別するのではなく、皆が活き活きと過ごせ、支え合い、足りない部分を補っていこうという“インクルーシブな社会を作る”ことを目的に活動しているという。そして、さまざまな企業や大学などから、2020年を契機に、社会をよくしたい、職場環境を良くしたい、豊かな人材を育てたいといった声が届いているそうで、小澤氏は「障がい者や”インクルーシブ”といったことを頭で理解することも必要ですが、実際に体験し、心で感じ、身体で感じて気づきを得ることが本当の意味での理解につながり、行動への変化が起こると思っています」とし、そのきっかけ作りとしてあすチャレ!運動会が最適と指摘する。

 また、あすチャレ!運動会のプログラムとして用意されているブラインド種目では、言葉や音、触るなど、工夫を凝らしてコミュニケーションを取る必要があり、チームが勝つためにどういったコミュニケーションが必要か、チームで考えることになるため、企業で必要とされているコミュニケーション、チームワークの重要性もあらためて感じてもらえると指摘。加えて、「車いすバスケットボール」や「ボッチャ」などパラリンピックの競技種目も盛り込まれているので、これを通してパラスポーツを盛り上げていきたいとしている。

 あすチャレ!運動会の詳細プログラムは、現在トライアルを繰り返しながら調整している段階とのことで、年度内はトライアルとモニター実施を行い、2017年春頃から本格始動する計画。対象は企業、自治体、大学などで、実施人数は100~200名程度。実施時間は4~5時間ほどを予定しているが、実施のニーズに添えるように対応するという。用意されるプログラムは、障がいを持つ方はもちろん、若い人から年配の人まで参加できる点が特徴とのこと。さらに、社内運動会では足の肉離れなどのケガをする人が多いそうだが、あすチャレ!運動会のプログラムには車いすを使う競技も多くあり、ケガのリスクも軽減できるとしている。

 プログラムに必要となる用具はJTBの協賛によって購入されており、それら用具はすべて無料で貸し出される。また、あすチャレ!運動会の実施によってパラサポが利益をあげることは一切ないとのことで、最低限の運営費用の負担で実施できるという。

あすチャレ!運動会への協賛について説明する、JTB グループ本社執行役員 スポーツビジネス推進室長の青木尚二氏

 また、あすチャレ!運動会に協賛している、JTB グループ本社執行役員 スポーツビジネス推進室長の青木尚二氏が登壇し、次のように挨拶した。

「あすチャレ!運動会にの推進のありかたについて、日本財団パラリンピックサポートセンターから詳しく趣旨を説明いただきましたが、お受けするに何のためらいもなく、趣旨に120%賛同し、即日協力させていただきたいとお伝えしました。障がいを持つ方々のアスリートを支援するプログラムや、この運動を全国に広めるといった活動は、1964年の東京オリンピック・パラリンピック大会まで遡ります。当時、選手村の旅行案内業務を行ないました。近年では、2001年から国体開催後に行われている全国障害者スポーツ大会の全ての大会で、旅行業者として宿泊やアクセスのお手伝いを行っています。そういった経験やノウハウを踏まえて、今回協賛のご指名をいただけたと思っています。最も大事なことは、2020年に東京でオリンピック・パラリンピックが開催されますが、東京一極集中にせず、全国にそのムーブメントを拡げていくこと、そして障がい者と健常者の垣根を越えて、共生社会の実現をサポートすることを、”あすチャレ!運動会”を通して趣旨に賛同いただける全国の企業や組織の方々とともに、グループをあげて進めていきたいと考えています」。

 その後、パラリンピック大会に参加した経験のあるパラリンピアンによるミニトークや、JTBからパラサポへ車いすの贈呈式などが行なわれた。

発表会に参加した、パラリンピック大会出場経験のあるパラリンピアンの方々

 リオデジャネイロパラリンピックにボッチャ日本代表キャプテンとして出場し銀メダルを獲得した杉村英孝さんは「イベントを通して一般の方にもボッチャを体験して、その魅力にはまってもらいたいと思います」と語った。

 アテネ、北京、ロンドンと3大会連続でパラリンピック射撃日本代表として出場した田口亜希さんは「見て楽しむのもいいですが、体験することで何が楽しいのか、何が難しいのか、どう応援したらいいのかわかっていただけると思いますので、どんどんチャレンジして体験していただきたいです」とコメントした。

 アテネ、ロンドンパラリンピックに陸上日本代表として出場した花岡伸和さんは「あすチャレ!運動会を通してパラスポーツを見て体験し、知っていただいて、2020年には自分の好きなパラスポーツの競技会場に行って、パラスポーツファンとして会場を埋めて選手に声援を送っていただけるとうれしいです」と期待を寄せた。

 最後にJTBの青木尚二氏から、パラサポ会長の山脇康氏に、あすチャレ!運動会で使用する車いすが贈呈され、発表会は終了した。

リオデジャネイロパラリンピックにボッチャ日本代表キャプテンとして出場した杉村英孝さん
アテネ、北京、ロンドンと3大会連続でパラリンピック射撃日本代表として出場した田口亜希さん
アテネ、ロンドンパラリンピックに陸上日本代表として出場した花岡伸和さん
JTBの青木尚二氏から、パラサポ会長の山脇康氏に、あすチャレ!運動会で使用する車いすが贈呈された