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マリオットと楽天トラベルが予約システム接続で提携、全世界のマリオット系列ホテルを楽天トラベルから予約可能に

マリオット アジア太平洋地域セール担当 ジョン・トゥーミー副社長に狙いを聞く

 世界的なホテルチェーンを運営するマリオット・インターナショナル(以下マリオット)と、旅行予約サイト「楽天トラベル」を運営する楽天は、楽天トラベルとマリオットの予約システムを直接接続する提携を発表した。この提携により、楽天トラベルのユーザーは、全世界に4300軒以上あるマリオット系列のホテルを、オンラインで直接予約することが可能になる。

 発表に先立ってインタビューに応じたマリオット アジア太平洋地域セール担当副社長 ジョン・トゥーミー氏は、「従来、楽天トラベルからはマリオットの一部ホテルしか予約できなかったが、連携が開始されれば、マリオット系列の全ホテルがオンラインで楽天トラベル経由で予約できるようになる」と、そのメリットを説明した。

マリオット・インターナショナル アジア太平洋地域セール担当副社長 ジョン・トゥーミー氏

グローバルにホテルチェーンを展開するマリオットと日本のOTA「楽天トラベル」が提携

 マリオットは、全世界に展開する大手ホテルチェーンを運営する米国企業だ。85カ国、合計19のブランドで4300軒以上の宿泊施設を展開、運営している。そのブランドのなかには「マリオット・ホテル」のほか、「JWマリオット」「ザ・リッツ・カールトン」「ブルガリ・ホテルズ&リゾーツ」などのプレミアムなブランドや、「レジデンス・イン」「タウンプレース・スイート」などの長期滞在向けまで幅広いブランドを揃えている。

 日本でも東京都品川区御殿山にある「東京マリオットホテル」(2013年開業、249室)、名古屋駅の直上にある「名古屋マリオットアソシアホテル」(2000年開業、774室)、新大阪駅の「コートヤード・バイ・マリオット 新大阪ステーション」(2015年開業、332室)など14軒のホテルを展開、運営している。

 これに対して楽天トラベルは、いわゆるOTA(Online Travel Agent、インターネット経由で旅行予約サービスを提供するオンライン旅行取引事業者)としては大手の事業者で、観光庁のサイトで公開されている電通が作成した資料(PDF)によれば、2014年10月の時点でのcomScoreの調査で月間1億PV(ページビュー)があるとされており、リクルートが運営する「じゃらん」と並び日本でトップクラスのOTAとなっている。

 今回両社から発表されたのは、その楽天トラベルの予約サイトから、直接マリオットグループの予約サービスに接続してホテルを検索、予約できるようにするというものだ。このサービスが開始されると、楽天トラベルのユーザーがホテルを検索すると、そこにマリオットグループのホテルが表示され、直接マリオットグループのホテルを予約することが可能になる。

楽天トラベルのWebサイト、今春よりマリオット系列の全ホテルをオンラインで検索することができるようになる

従来は一部マリオット系列のみが予約可能だったが、すべてのホテルで可能に

 実は今までも楽天トラベルからは、いくつかのマリオット系列のホテルを予約できていた。新しい提携が発効したあとは、何が変わるのだろうか? それについてマリオット・インターナショナル アジア太平洋地域セール担当副社長 ジョン・トゥーミー氏は「最大の違いは、マリオットが全世界に持つすべてのホテルが対象になるということ。これまでも楽天トラベルが独自に我々のホテルと提携して予約できていた例はあったが、今回の包括提携が開始されたあとは、楽天トラベルの予約システムからすべてのマリオットのホテルを検索し、予約することができるようになる」と説明する。

 具体的にどういうことかと言えば、例えばマリオットは中国の上海に29のホテルを展開している。現状の楽天トラベルではこのうちのいくつかのホテルだけを検索/予約できる状態で、楽天トラベルが契約していないマリオットのホテルはリストに表示されない。しかし提携後は、楽天トラベルのシステムとマリオット全体のシステムが直接接続される形になり、29のホテルすべてが表示されることになる。もちろん、その恩恵は上海だけでなく、全世界のマリオット系列のホテル4300軒以上に適用されるので、楽天トラベルユーザーがホテルを予約する際の選択肢が広がることになる。

マカオの「JWマリオット・ホテル・マカオ」
タイ・バンコクの「バンコク・マリオット・ホテル・スクンビット」
新大阪にある「コートヤード・バイ・マリオット 新大阪ステーション」

地域トップOTAと提携を進める戦略の延長線上にある楽天との提携

 このマリオットと楽天トラベルの提携についてトゥーミー氏は、「我々は多くの地域でパートナーシップの最適化を行なっている。例えば中国なら“Ctrip”、インドなら“MakeMyTrip”、タイなら“Agoda”など、地域トップのパートナーとの提携を進めてきた。日本では楽天が最大のOTAとなるので、今回パートナーとして提携を深めることにした」とその狙いを説明する。

 旅慣れた人であれば、マリオット系列ホテルの予約はマリオットのWebサイトなどから直接予約すればよいという人も少なくないだろう。特にビジネスで出張というユーザーは、そうした予約方法を実践している人も少なくないと思われる。実際、トゥーミー氏によれば、自社Webサイトからの予約と、OTAの割合は「6:4」とのことで、自社Webサイトからの予約が多いという現状はある。しかし、逆に4割はOTA経由だと考えるなら、これまでのように日本のOTAから同社のホテルをすべて検索できない現状は機会損失に繋がっていたと考えるのは自然だろう。

 むろん、同社もグローバルに展開する海外OTA、例えば「Expedia」や「Booking.com」のような事業者との提携は行なっているが、それらの日本でのシェアは楽天トラベルのような国内の事業者に比べて高くないのが現状だ。同氏が話すパートナーシップの最適化というのは、そうした現状への対応が必要と判断して楽天トラベルとの提携を行なったことであると考えられるだろう。

他チェーンのホテルとも比較検討しながら予約できるOTAの利便性

 OTAとして国内シェアの高い楽天トラベルから、マリオットグループのホテルをすべて検索/予約できるようになることはユーザーの利便性が増すという意味で歓迎してよいだろう。むろん、現状でもマリオットのWebサイトに行けば予約することは可能だが、OTAの利便性は複数のホテルチェーンを横断的に検索して、価格や設備などを比較できることにある。楽天トラベル側にとっても、ビジネスの機会が増えると考えることができるため大きなメリットがあるはずだ。

 両社はすでに提携の契約を結んでおり、マリオットによればこの春から順次サービスが開始になる予定だという。個人手配の海外旅行を計画していて、マリオット系列のホテルに泊まってみたいというユーザーであれば、今春より開始される包括予約システムを利用してみてはいかがだろうか。

(笠原一輝)