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日本の駅弁の魅力を海外に発信する「日本の食文化『EKIBEN(駅弁)』とご飯の魅力」

100種類の駅弁を海外メディアに紹介

2016年1月14日 開催

 米穀安定供給確保支援機構は1月14日、海外メディア向けの記者説明会「日本の食文化『EKIBEN(駅弁)』とご飯の魅力」を開催。会場には国内外のメディアが集まり、日本独自の文化である“EKIBEN”の歴史や魅力についての講演と、100種類に及ぶ駅弁の展示と試食、そして日本最古の駅弁である“おにぎり弁当”作り体験などが行われた。

 説明会は、訪日外国人観光客が拡大するなかで、駅弁を通して和食などの伝統的な食文化とご飯の魅力を海外への発信することが目的。旅行先で手軽に郷土料理が味わえ、冷めてもおいしく食べられる工夫や、さまざまなご飯の食べ方など、こだわりの駅弁100種が会場に集合。参加した記者らは、好みに合わせて1つずつ駅弁が提供され、駅弁を味わいながら講演を聞くスタイルで記者会見は進められた。用意された駅弁は東京駅の駅弁屋「祭」で購入が可能もの。白米はもちろん、おこわやチャーハンなどお米の調理による食べ方の違いが楽しめる製品をラインアップ。容器の造詣が凝ったカニ型の「山陰鳥取かにめし」や、新幹線の形をした「E5系はやぶさ弁当」などが外国人旅行客には人気とのことで、実際にパッケージの見た目が華やかな製品を手に取る記者が多かった。

ずらりと並んだ100種類の駅弁。北は北海道の「北の海鮮づくし」(1180円)から南は鹿児島県の「鹿児島黒豚&イベリコ豚味くらべ」(1080円)まで日本全国の人気駅弁が一堂に会した
北陸新幹線開業で生まれた「W7系新幹線弁当」(1300円)や、東北新幹線「E5系はやぶさ」(1200円)、「新幹線E7系弁当」(1300円)、「E6系こまちランチ」(1300円)など新幹線車両デザイン駅弁・夢の共演も見られた
カニや乗り物系などパッケージにインパクトのある駅弁が訪日外国人観光客に人気があるという
公益社団法人・穀物安定供給支援機構の木村良氏。日本の食文化の根幹である米の魅力を世界に、そして駅弁でご飯の食べ方のバリエーションを楽しんでほしいと述べた

 記者会見の冒頭で、主催者の米穀安定供給確保支援機構の理事長 木村良氏が登壇。松尾芭蕉の「奥の細道」の序文を例に「日本人は古来から旅をし、地方の名産や雰囲気、交流を楽しむ文化があった。そのなかで交通機関の発達とともに列車内で味わえる各地の産物を活かした駅弁が生まれ、進化した」と説明。「3000年の栽培の歴史があり、2013年に日本人の伝統的な食文化としてユネスコ無形文化遺産に登録された“和食”の根幹である米、ご飯の魅力を駅弁を通して海外へ発信してほしい」と挨拶。

日本列島の立地も含め、冷めてもおいしい米とおかずがあったからこそ弁当、駅弁が発達したと伝承料理研究家の奥村彪生氏

 続いて、「おにぎりは日本人のソウルフード~駅弁は地方の顔~」と題して、伝承料理研究家の奥村彪生氏が公演を行った。まずは、携帯食としての“にぎりめし”と花見などの弁当にまつわる習慣を説明。「駅弁誕生は1885年と言われており、旅に持参した竹の皮で包んだ“にぎりめし”が進化したもの。日本人にとって今も昔も旅の楽しさは風景、人情だけではなく、その土地の弁当を味わうこと。旅の移動時間は減っても昔からの楽しみはそのまま受け継ぎ駅弁となっている」と話した。

奥村氏の呼びかけに応えるように記者たちが駅弁を一斉にオープン。会場からは「おいしい」「美しい」などの声がいたるところから聞こえた

 また、米のルーツにも言及し、「現在日本人が食べている品種・温帯ジャポニカ米は冷めてもおいしく、握れるのが特徴、合わせるおかずも油脂が少なく冷めても味わい深いため弁当が発達した」と述べた。公演の途中には「とにかく食べましょう!お腹空きましたね!」と呼びかけ、記者たちに食事を促すユニークな一幕も。

 なお、駅弁は「海に囲まれた島国であったこと、海流やアジアモンスーン、地形が変化に富んでいるなどの影響で、各地で収穫される産物が異なるため発達した」と語り、「皆さん方もどうぞ北海道から沖縄から旅をしながら日本の文化と味を楽しみ発信してほしい」と締めた。

株式会社NRE大増の商品開発部長・白木克彦氏。海外における弁当販売では、味の異なる食材がひとつのパッケージ内にあるため細かく味の傾向と内容を購入前に聞かれるという

 次に駅弁を販売する事業者としてNRE大増の商品開発部長・白木克彦氏が登壇。日本で駅弁の各種開発などを手掛けてきた同社の海外への取り組みを「海外における駅弁販売とチャレンジ」として講演した。シンガポール、台湾での販売を例に、日本での販売との違いを説明。シンガポールでは“伊達巻”を“卵焼き”にしたり、冷たいご飯が好まれないことを考慮し寿司飯にするなどの変更を行ったという。また台湾では冷たいご飯に抵抗があるため、おにぎりにし手軽に日本の米を食べてもらえるようにしたという。

内容変更のほかにも、シンガポールでは握り寿司の中のわさびを抜き別添えにするなどの工夫も
台湾では温かいご飯に、食材が載せられ購入後すぐに食べるというスタイル。そのため、冷たい状態で食べることは少ない。日本米を抵抗なく食べて頂くことを最優先にし、おにぎり弁当を販売

 同社の海外での駅弁販売の目的は“日本独自の食文化・旅文化である駅弁に込めたこだわりや楽しさを伝えたい”としており、古来からの旅のお供として進化した駅弁をもっと多くの人に知ってほしいとの意義から行っている。

 また、今回の講演では現在の駅弁についても言及。“幕の内弁当”“海鮮弁当”“肉弁当”の3つが主流で、1つの容器に日本の四季の食材詰め込まれたもの、地元特産の魚介類をふんだんに使用したもの、地域特産の肉を土地独特の味付けをし提供するものがあり、それぞれの魅力を含んでいるとも語った。

駅弁ならではの魅力は中身の見えない容器ならではのもので、想像しながら“開ける楽しみ”がある。また、駅弁は基本的に“オリジナルパッケージ”であり、掛け紙に関してはコレクターも多いほどの魅力を持っていると白木氏
現在の駅弁における3つの主流を説明
幕の内弁当「東北丸ごとべんとう」
海鮮弁当「北の海幸づくし」
肉弁当「但馬牛 牛めし」
「日本最初の駅弁“おにぎり弁当”作りの体験・試食」として“おにぎり”の調理実習も行われた

 記者会見の最後には、「日本最初の駅弁“おにぎり弁当”作りの体験・試食」として“おにぎり”の調理実習も行われた。冒頭で公演を行なった奥村氏が実演を交えて記者たちに手ほどき。おいしく作るコツは両手の握るタイミングを合わせることとして、ふんわり握る技を伝授。伝統的な竹の皮に出来上がったおにぎり2個を包み、英語新聞風の包装紙でラッピングを施し手持ちができる方法を紹介。実習では、東京スタイルのおにぎりを製作、東北は円盤、京都は卵型など地方によって握る形が異なることも伝えた。

今回のおにぎりの具はツナマヨと鮭、梅干しの中から選択。左手はコの字に、右手は三角にし同時にキュッと瞬間的に軽く押さえることがおいしく作るコツ。これを3回ほど繰り返すと完成
また添えるピクルスの作り方も伝授。小指サイズに切った大根、セロリ、ニンジンをしょうゆ3、みりん2、酢1の割合のつけ汁で1~2時間に浸し完成する
実習体験では、記者たちがおにぎりを2つつくり、竹の皮でラッピング。それを包装紙で包み手持ちできるスタイルに挑戦した

(相川真由美)