ニュース
これからの季節はラグビーを競技場で!「ジャパンラグビートップリーグ開幕戦」を観戦してみた
(2015/11/16 15:11)
ラグビー日本代表は、「ラグビーワールドカップ2015」の1次リーグ敗退になったものの、強豪である南アフリカを破る大金星を挙げてサモア戦、米国戦と3勝を収め、日本を熱狂の渦に巻き込んだ。その興奮が冷めやらない11月13日、日本代表を含め、日本トップクラスの選手が集結した「ラグビーのトップリーグ2015-2016」が東京・秩父宮ラグビー場で開幕した。
スポーツの試合を実際にスタジアムで観戦するのはテレビで見るのと違う楽しさがあるが、ラグビーにおける試合観戦の魅力とは何だろうか? 日本ラグビーフットボール協会ではプレス観戦体験会を開催。そのレポートと実際の試合観戦の楽しさについて紹介していきたい。
日本の頂点にあるラグビーチームが戦うトップリーグ
今回観戦したのは開幕戦であり、A組の第1試合であるサントリーサンゴリアスとパナソニックワイルドナイツ戦。2011-12シーズンと2012-13シーズンと連覇を果たしたサントリーサンゴリアスに、今シーズン3連覇を狙うパナソニックワイルドナイツ。今回の試合はワールドカップ直後という以外にも、トップリーグの中でも頂点を狙える2チームの対戦として注目度が高い。会場には「チケット完売」という貼り紙がされていた。
ラグビーというと男性のスポーツというイメージが強いが、会場にはサントリーサンゴリアスやパナソニックワイルドナイツのグッズを、またはチームカラーを身に着けた、根っからのラグビーファンであろう女性も多い印象だ。秩父宮ラグビー場は開場前からファンは入場の列に並んでいたファンは日本ラグビーフットボール協会の発表によると1905人。屋台でフードやドリンクを買い求めたり、サンゴリアスとワイルドナイツの物販テントでユニフォームのレプリカはじめ様々なグッズを購入していたファンも多かった。
また驚きなのが、目立たない場所であったが会場の一角いあるテントでラグビーのワールドカップで実際に使われた練習用ボールやジャージが展示されていたことだ。ボールは持ってもよいとのことで、実際に持ってみたら500mLペットボトルぐらいの重さでちょっとずっしりとした感触。まだ試合が始まっていなくとも、会場で試合への期待へ盛り上がるファンの様子に触れるだけでもワクワクする。
競技場のグルメで身体を温めるのも観戦の楽しみ
スポーツ観戦における楽しみのひとつがスタジアムグルメ。ラグビーも例外ではない。場外に屋台が並び、場内にも売店が設置されていて様々なフードとドリンクが販売されている。
ラグビーのトップリーグのリーグ戦と順位決定トーナメント戦は11月から1月下旬と寒い時期に行なわれるため、身体が温まりそうなラインアップが多いのが特徴だ。食べ物は、辛さやスパイシーさを活かしたものやボリューミーなもの。飲み物は暖かいココアやコーヒーなどはもちろん、ホットワインといったものが用意されている。
今回、記者がチョイスしたのは、ドライカレーにハヤシソースをかけた「ノーサイドハヤシライス」。ラグビーらしいネーミングのこのフード、ドライカレーのスパイスの風味とハヤシソースの濃厚さが組み合わさりながら、トマトのさわやかな風味でくどさを感じない食べ応えがある一品だ。
また実は13日は2400円、14日は3000円で生ビール飲み放題になる「生ビール飲み放題デー」も開催していた。スタジアムでガッチリと飲食を取ってお腹を満たすのは楽しいのはもちろん、身体も温まるので寒さ対策の一環としておススメしたい。
ルールがわからなくても楽しめる秘密はオーロラビジョン
実際にスタジアムに入ってみると、チケット完売のはずなのにゴールポスト側の席やスタンドの端の席がガラガラ。日本ラグビーフットボール協会によると、無料招待券の入場を断るなどチケットの判断を誤ったためだという。せっかくの試合がもったいない。この点だけが残念なところだった。
とはいえ記者が座ったスタンドとその対面のスタンドは満員だ。公式発表によるとこの日の観戦者は1万792人。試合開始前、スコアボードのオーロラビジョンで各チームの選手紹介が行なわれ、ワールドカップの日本代表になった選手が登場するたびに、観客席から歓声と拍手が飛び交った。
時計が19時を回り、いよいよ開幕。日本ラグビーフットボール協会の高島正之トップリーグチェアマンがフィールドにあがり、「ワールドカップで選手が活躍したおかげで、日本でラグビーが盛り上がりました。トップリーグでその流れを殺さないようにしたい」とあいさつをした。選手入場後に国家斉唱を行ない、キックオフへ。
ラグビーをスタジアムで観戦する際、「ルールが難しそう」というイメージがあり、実際、記者もそう思った。しかし、実況が分かりやすいのと試合の状況に即してオーロラビジョンに反則の内容や選手交代が映し出されるので試合の様子が把握しやすい。選手がボールを持ってステップする様やタックル、パス回し、スクラムといったダイナミックなプレーを見て観戦しつつ、試合の節目でオーロラビジョンやアナウンスをチェックするだけで十分楽しめそうだ。
開始早々、まさかのワイルドナイツ連続得点
試合自体は序盤から大きな展開に。開始直後の前半3分にサンゴリアスのオフサイドでワイルドナイツ側にペナルティキックが与えられ、ワイルドナイツのペリック・バーンズ選手がペナルティゴールを決めたのだ。
その後も山田章仁選手がトライを決め、バーンズ選手がゴールを決めるなど、開始して10分経たないうちにすでにワイルドナイツが10点先取。記者がいた席はサンゴリアスファンの側だったが、周囲から嘆声や「まだ始まったばかりだっ!」という声援が飛び交った。そう、スタジアムにいるファンの反応が感じられるのもスポーツの楽しいところ。それはラグビーも同じだ。
ワイルドナイツの連続得点に焦りを見せたのか、その後、サンゴリアスはボールを前に投げる「スローフォワード」や、倒れこんだまま離れない「ノットロールアウェイ」といったミスを連発。そのミスを狙ってバーンズ選手が次々とペナルティゴールを決めていく。
筆者はラグビーの生観戦は初めてであるものの、サンゴリアスにとって辛い展開というのが痛いほど分かる状況だ。
霧雨が舞う中でも快進撃のワイルドナイツ
序盤からのワイルドナイツの猛攻撃が続く中、秩父宮ラグビー場にパラッと雨が降ってきた。しかし、ワイルドナイツの進撃は止まらず盛り上がるファン。そして、前半30分でスタンドのサンゴリアスのファンサイドからどよめきが。サンゴリアスの青木佑輔選手が負傷したのだ。メディカルスタッフがやってきて、結果、負傷のため北出卓也選手に交替に。
さらにワイルドナイツの山田選手がトライしたのをTMO判定(録画した映像による判定)に持ち込まれた。ラグビーではゴールラインで激しい攻防が繰り広げられるため、こういった判定も導入されている。判定映像がオーロラビジョンに映し出され、固唾を飲んで見守る来場者。負傷による交替やTMO判定など緊張続きだ。選手の負傷は心配だが、このハラハラ感もラグビー観戦のポイントの1つかもしれない。
結果、山田選手のトライが認められ、ワイルドナイツはダメ押しの得点。サンゴリアスが1点も取れないまま26対0で前半が終了した。
ハーフタイムでは来場者のためのお楽しみ企画が開催。ワイルドナイツ・サンゴリアスのファン各1名をフィールドに上げ、ボールシューターから投げられたボールがキャッチできるかどうか、というゲームが行なわれた。ボールを取ることができたら、試合球プレゼントというファンにはうれしい企画だ。
顔にペイントしたワイルドナイツのファンは見事キャッチする一方で、五郎丸選手のポーズを真似していたサンゴリアスのファンは残念ながら失敗。
後半、サンゴリアスの反攻なるか?
前半の時点で26対0。サンゴリアスファンたちが「サントリー!」「ゴーゴー! サンゴリアス!」と声援を送る。サンゴリアスにとって厳しい状況だが、後半から今度はワイルドナイツがオフサイドやタックルした相手を離さない「ホールディング」などミスを繰り返して、サンゴリアスにチャンスが訪れる。
そんな中、サンゴリアスのトゥシ・ピシ選手がトライを決め、初得点。しかし、サンゴリアス側は果敢に攻めようとするもののパスが通せず、ボールを持って走るにもワイルドナイツにタックルを決められる。ワイルドナイツのディフェンスラインの鉄壁ぶりは見ていて驚くばかりだ。
また、ワイルドナイツの劉永男選手がトライ、ヘイデン・パーカー選手がゴールを決め、38対5と大差に。結果、サンゴリアスの反撃は実らないまま38対5で試合終了になってしまった。
試合後、ワールドカップ日本代表選手に拍手
試合後、フィールドでインタビューへ。ワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督は「大変な大会から帰ってきてチームに溶け込んでくれてよかった」とワールドカップから帰った選手をねぎらった。
また、両チームからワールドカップに出場した選手が出て一列に並び、応援したファンにあいさつをする場面も。自身も出場したワイルドナイツの堀江翔太キャプテンは「素晴らしい人、かっこいい人、好みの人を見つけて楽しんでください」とユーモアを交えながらワールドカップでラグビーの楽しさを知ったファンに向けてメッセージを送った。
試合場、記者会見が行なわれたが、サンゴリアスのアンディ・フレンド監督は「最初の15分20分、我々のメンバーのミスが多かった」と話し、真壁伸弥キャプテンも「初めからミスがあって80分間の試合時間で修正できなかった」と共に序盤のミス連発についての反省の弁が述べられた。
一方、ワイルドナイツでは、ロビー・ディーンズ監督が「あのような素晴らしい試合をしてくれてすごくうれしく思っています。コーチングスタッフの観点からすると選手は非常に正確なプレーをしてくれました」と選手たちのプレーを絶賛。また、堀江翔太キャプテンはワールドカップ帰りで疲労した選手と国内で残って練習をしていた選手に触れ「試合の中でしっかりコミュニケーションを取ろうと思った」と話した。
ラグビーこそ生観戦が楽しいスポーツ
記者はラグビーをスタジアムで初めて観戦したが、ラグビーの楽しさはやはりダイナミックさにあると思う。肉体のぶつかりあう場面やステップで相手のガードを突破する場面、パスやゴールでボールが高く放物線を描いて飛んでいくところ……動きや見どころが多く、実はスタジアム観戦が最も楽しいスポーツなのだと思った。
ラグビーのトップリーグ2015-2016は13日が開幕日で、12月26日の毎週末がリーグ戦、そして2016年1月9日から1月24日の週末が順位決定トーナメントになっており、まだまだ観戦のチャンスがある。
寒い季節でお出かけスポットも限られてくるものの、防寒対策さえしっかりしておけばラグビー観戦は楽しいイベントになるはず。ワールドカップでラグビーの魅力に開眼した人も、実際に競技場へ行なってスタジアムグルメで身体を温め、観戦でハートが熱くなる楽しさをぜひ味わってみてはいかがだろうか。