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東京楽天地、浅草に商業施設「まるごとにっぽん」を12月中旬オープン

2015年6月25日 実施

2015年12月中旬オープン

 東京楽天地は、浅草再開発プロジェクトとして、商業施設「まるごとにっぽん」を2015年12月中旬に開業することを決定した。6月25日、浅草ビューホテルにて、報道関係者向けにコンセプトやターゲットなどを説明する事業説明会を行なった。

東京楽天地が浅草再開発プロジェクトの一環として建設中の「東京楽天地浅草ビル」のイメージ。「まるごとにっぽん」は、この1~4階にオープンする商業施設だ

東京楽天地浅草ビルに地域振興の拠点をオープン

 東京楽天地は、浅草再開発プロジェクトの一環として「東京楽天地浅草ビル」を浅草六区に建設中だ。このビルは、地上13階、地下2階から成る施設で、高層階にはアールエヌティーホテルズにより「リッチモンドホテル プレミア浅草インターナショナル」が、また地下1階には正栄プロジェクトが運営するパチンコホールがオープンすることが決定している。

 そして、「まるごとにっぽん」は、このビルの1~4階にオープンする商業施設で、地域情報の総合拠点として地方自治体や地方事業者が出店して情報を発信できる仕組みを構築し、「真の地域振興の拠点」を目指すという。つまりは、浅草の再開発とともに、地方の村おこし、町おこしを助ける役割を目指しているということだ。

 説明会では、始めに東京楽天地の取締役社長である山田啓三氏が、浅草再開発プロジェクトの全体像を説明した。山田氏は、6年前まで在籍した東宝にて不動産事業を担い、新宿コマ劇場跡地の再開発など、数々の再開発プロジェクトを手がけてきた実績を持つ人物だ。「東京楽天地が責任もって地域の皆様と手を携えながら、浅草六区街が昔の隆盛を取り戻せるべく取り組んでいきたい」と、力強く抱負を語った。

 山田氏に続き、全国にリッチモンドホテルを展開するアールエヌティーホテルズの代表取締役社長である成田鉄政氏が登壇。東京楽天地浅草ビルの高層階にオープンする予定の「リッチモンドホテル プレミア浅草インターナショナル」は、リッチモンドホテル35棟目にしてはじめて「インターナショナル」ブランドを冠したことを挙げ、海外からの観光客も強く意識しているとしつつ、「日本の方にも日本の良さを知っていただきたい」と強調した。「世代、国籍、すべてのお客様に親切なやさしいホテルづくり」を目指すというコンセプトのもと、「リッチモンドホテルの集大成として位置付けている」と語った。

 地下フロアにパチンコホールをオープンする正栄プロジェクトは、札幌に本社を置く、業界内では比較的後発の企業だ。代表取締役である美山正広氏は、パチンコの健全化、近代化を目指してきた同社の方向性を紹介しつつ、記念すべき東京都内出店第1号店として、浅草の人々の憩いの場であるとともに外国人観光客に日本独特の娯楽に触れてもらう場として、新たな考えを積極的に取り入れて展開していきたいと意気込みを語った。その一環として「ジャパニーズモダン」というコンセプトのもと、祭り、花火、着物、桜といった、和を象徴するイメージを店舗デザインに取り入れていく構想も明らかにした。

冒頭に登壇し、浅草再開発プロジェクトの概要と進捗状況などを説明した株式会社東京楽天地 取締役社長の山田啓三氏。東宝時代には日比谷シャンテの建設、新宿コマ劇場・新宿東宝跡地の再開発など、数々の不動産事業、再開発プロジェクトを手がけてきた実績を持つ
全国にリッチモンドホテルを展開するアールエヌティーホテルズ株式会社 代表取締役社長の成田鉄政氏。東京楽天地浅草ビルの高層階にオープンする予定の「リッチモンドホテル プレミア浅草インターナショナル」をリッチモンドホテルの集大成として位置付けていると述べた
株式会社正栄プロジェクト 代表取締役の美山正広氏。札幌に本拠を置き、パチンコホールの展開と運営を行なっている。東京楽天地浅草ビルの地下フロアにオープンする予定のホールは東京都内出店の第1号店として、大きな挑戦と位置付けていると語った

日本の地方を感じられる4フロアの小旅行

株式会社まるごとにっぽん 取締役社長の小笠原功氏。東宝時代に、山田氏とともにさまざまな不動産事業、再開発事業に携わってきたという。今回のプロジェクトにあたっては、1年半かけて自分の足で日本全国を周り、地方の方と対話を重ねながら構想を練ってきたという

 今回のメインテーマは、東京楽天地浅草ビル1~4階にオープンする商業施設「まるごとにっぽん」だ。まるごとにっぽんの取締役社長である小笠原功氏が登壇し、説明を行なった。同氏も東宝出身で、山田氏とともに数々の不動産事業に携わっており、日比谷シャンテの運営管理を任されるなど、テナント誘致、行政折衝などを含む商業施設の運営管理においても実績を持ち、山田氏が大きな信頼を寄せている人物として紹介された。

 このプロジェクトに加わる際には、山田氏から「地方を直接まわり、地方の農業、畜産、加工業などに携わっている方、行政の方と、直接話をしてきてほしい」という要請を受けたといい、実際に1年半かけて日本全国を周り、地方のさまざまな方とふれあい、話をして、まるごとにっぽんを構想してきたという。

 まるごとにっぽんは、「町おこしのメッカ」と「風土巡礼」という2つの側面がある。前者については、地方の食、文化、情報を発信する地方情報の総合拠点として、これまでのルートでは流通させることが難しかった小ロットの生産物、季節限定の商品など、地方ならではの商品を取り揃え、ほかとは異なる商品構成をしていきたいとした。

 また、後者の風土巡礼については、東京(浅草)にいながらにして、日本全国を旅行をしたような気分になれるよう、新しいスタイルの空間を作っていきたいという構想を披露した。ターゲットは首都圏在住の40代を中心とした主に女性を想定しているという。

まるごとにっぽんのコンセプト。まるごとにっぽんがハブとなって、相互作用で浅草(東京)の活性化にも地方の生産者にも良い効果が得られることを期待しているということだろう
まるごとにっぽんのシンボルマーク。丸いフタをあけると、モノ、コト、フードなどがぎっしりつまっているというのを図案化したものだという。格子柄は広がりを、赤と白のカラーは、日本の伝統の祝い事のイメージから
まるごとにっぽんには、「村おこし、町おこしのメッカ」と「風土巡礼」という2つのテーマがある
まるごとにっぽんの運営理念。真の地域振興の拠点を目指す

協働パートナーと作る地方との絆

 続いて、まるごとにっぽんの各フロア構成が紹介され、特に3階フロアの展開について詳細な説明が行なわれた。実演、体験、情報発信の場と位置付けられたこのフロアには、20の自治体がテナントとして入り、自治体と協賛企業のコラボレーションにより、共通のテーマ(祭りなど)に沿ったイベント、カフェ、料理教室などが用意される。

 47PLANNINGが運営するイベントスペース「おすすめふるさと」は、最新型プロジェクターを設置して20自治体の四季の風景を写し出し、自治体の環境を体験でき、来店する人がわくわくできるような場所を目指すという。自治体のPRスペースとして活用され、UターンやIターンの支援窓口、ふるさと納税の窓口なども用意される。

 また、丸の内の再開発でも実績を挙げているgood morningsが担当する「cafe M/N」と名付けられたカフェでは、日本全国のおいしいものを発信するというテーマで、20自治体のさまざまな食材を独自のアレンジを通じて提供し、ブックカフェ的なスタイルで、地方で出版されている本を用意するなど、本から地方の情報を知ってもらえるような工夫もしていくという。

 JFCSと協働する料理教室「おいしいのつくりかた」では、日本全国の郷土料理、食文化を料理教室を通して楽しめる。フードコーディネイターが地方の食材や調味料の使い方の提案や、家庭で作る際のアレンジの仕方なども紹介していきたいという。

まるごとにっぽんの各フロアのテーマと概要
1階フロアのイメージ。「にっぽんの食」をテーマにしたフロア。生鮮食品から加工品まで、ワンストップで手に入るワンストップ型のマーケットで、直営のスーパーマーケットも運営し「ここでしか手に入らない品揃え」を意識するという
2階フロアのイメージ。「にっぽんの叡智」「暮らしの道具」をテーマにしたフロア。伝統工芸の形を取りながらも、今の暮らしで使える、これからの生活を便利にするものを中心に紹介していきたいという。伝統工芸の後継者を求める場としても期待しているという
3階フロアのイメージ。「にっぽんの絆」「たびの窓口」をテーマに、実演、体験、情報発信の場と位置付けられている。こちらについては、後ほど詳細説明の場が設けられた
4階フロアのイメージ。「にっぽんの風土」をテーマにしたテーマフードゾーン。いわゆる飲食フロアだ。地方から事業者を招いたり、地方の食材を使って料理をしてもらうなどといった展開を考えているという
3階フロアには、20の自治体がテナントとして入り、イベントスペース、カフェ、料理教室などを通じて、情報発信をしていく
3階フロアの協働パートナー
株式会社47PLANNINGの代表取締役を務める鈴木賢治氏。同社が運営を担当するイベントスペース「【event space】おすすめふるさと」では、最新型プロジェクターを設置して各地の見どころを探訪できるテーマ性の高い空間演出を行なうとともに、UIターン、ふるさと納税の窓口も設置する
good mornings株式会社で代表取締役を務める水代優氏は、小笠原氏の理念に強く共感しているという。同社が運営に携わる「【cafe】 M/N」では、地方の食材や調理法を活かした期間限定のオリジナルメニューを提供するとともに、ブックカフェ的なスタイルで、地方独自の本や映像などを体験できる空間を用意する
株式会社JFCS 取締役の三井愛氏。同社が運営する料理教室「【cooking studio】おいしいのつくりかた」では、館内で販売する食材や器、調理道具を使用しながら、地域独自の食材や調味料を使用し、さまざまな郷土料理のレシピを紹介し、食べ方やアレンジの提案を行なっていく

20自治体は1年ごとに入れ替え

 説明会の最後には質疑応答コーナーが設けられた。その内容を一問一答形式で掲載する。

――東京楽天地浅草ビルは、オープン予定が当初より1年近く遅れているが、その理由は?

山田氏:建設予定地の土壌が、元々沼を埋め立てて使っていた土地だったため、整備に手間取った。土壌汚染の問題もあり、処置に時間がかかった。

――文化財が出てきたという話もあるが?

山田氏:たしかにそういうこともあった。沼だった時代に住民がいろいろなものを投げ入れた形跡があって、文化財(庶民の生活必需品、湯飲みなど)が出てきた。東京都と一緒に対応した関係で、約1~2カ月ずれた。

――高さや景観に問題があるとして、浅草寺が反対の意向を示す看板を境内に掲げているが?

山田氏:高さについては、東京都、台東区の行政の地区計画により、53mまでは建設して良いということになり、それを受けて当初の計画を変更して地下に拡張することで49mに収めた。浅草寺から反対されていることは事実だが、こちらも正しい手順を踏んでやっている。浅草寺も地区計画決定の会議には参加されているし、話合いを重ね、理解を求めている。周辺の景観をできるだけ阻害しないような形にまとめたつもりだ。

――40代女性がターゲットということだが、インバウンド(外国人観光客の誘致)対策についてはどう考えているのか?

小笠原氏:浅草という土地柄、外国人のお客様のための配慮は考えているが、特に外国人向けにということは考えていない。まずは日本の地方のいいものを、日本人、特に東京の方に知っていただきたい。そして地方に興味を持っていただきたいと考えている。

――地方のアンテナショップと何が違うのか?

小笠原氏:アンテナショップは、財力のある県や大きな市が自ら出店している。想定しているのは、もっと小さい規模の自治体。自分のところだけでは東京に出店できないが、なんとかできないかと思い、頑張っている市町村だ。

――3階フロアに20自治体が入るという話があったが、テナントを決定するにあたって基準はあったのか? 固定されているのか、あるいは入れ替えはあるのか。

小笠原氏:20自治体はまだすべて決まっているわけではない。これから公募する可能性がある。テナントは年度末を区切りに、1年ごとに入れ替えていく方向で考えている。

左から、鈴木賢治氏、水代優氏、三井愛氏、小笠原功氏、山田啓三氏、成田鉄政氏、美山正広氏
フォトセッションにて。左から、小笠原功氏、美山正広氏、成田鉄政氏、山田啓三氏

鈴木雅暢