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JAL、「2012~2016年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2016」策定
2016年度は安定した成長で中期経営計画達成を目指す
(2016/2/20 00:30)
- 2016年2月18日 発表
JAL(日本航空)は2月18日、「2012~2016年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2016」を発表した。このローリングプランとは再上場前の2012年の2月に発表した「2012~2016年度 JALグループ中期経営計画」について、毎年度末に過年度の振り返りを行ない、中期経営計画の期間内での経営目標を達成するため同計画の進捗や取り組み方針を公表するものである。
2016年はこの計画の最終年度となるため、その計画内容を聞くため会場には多くのメディアが詰めかけていた。
まずはJAL代表取締役社長の植木義晴氏の挨拶から始まった。「振り返りますとこの中期経営計画の策定に当たっては自らが正しく、正直であることを心に誓い、結果がいかなるものであっても必ずレビューをするということを毎回行なってきました。毎回新しい課題が出てきましたが、問題のない企業はないと考え、1つずつ社員と共に考えていくつもりでローリングプランを策定してきました。2015年は日本の景気回復の継続、燃料価格の下落、そして訪日旅客の増加による追い風のもと、経営基盤の強化に着実に取り組んだ1年でありました。しかしながら急激な円高基調や株式市場の低迷など見ると、国際社会の動きは年々早くなっており、予想もしえない社会、経済、そして事業環境の変化を考えると、今後より一層の迅速かつ柔軟な対応が求められると考えております。
2016年はより多くのお客様にご利用していただけるよう、安全運航を堅持し、お客様、株主の皆様、お取引先の皆様への感謝の気持ちを持ち続け、変化の激しい航空業界で勝ち抜いていくための強い意志を持って、快適なサービスを提供し、それを通じて業績向上に務め、社員一同でこの経営計画目標を必ず達成する努力を行なっていく」ということであった。
そして「2016年度平成29年3月期のグループ連結業績につきましては、売上高1兆3430億円、営業利益2010億円、営業利益率は15%、自己資本比率58.4%を計画しています」という目標が示された。ただし、「この数字では前年度対比では増収減益となる計画ですが、社員一丸となって増収増益を目指します」とも付け加えられた。
次に日本航空取締役専務執行役員 経営企画本部長 事業創造戦略部担当の乘田俊明氏より、経営目標の進捗度についての報告が行なわれた。
まずは事業環境の振り返りだが、2015年度における日本経済は円安や原油安を背景とした企業収益、雇用などの環境の改善により景気に緩やかな回復が見られた。世界経済は中東を中心とした地政学的リスクや新興国経済の減退がみられたものの、先進国を中心に回復傾向となった。国際線では年間の訪日外国人が出国日本人をの数を上回ったが、貨物需要については日本発着需要は前年度を下回る見込みだという。ただ、国内線では日本経済の回復やLCC(ローコストキャリア)による需要創出によって旅客需要は増えているという。
今後の見通しについて日本、世界ともに経済の回復傾向は持続すると考えられていて、訪日需要に関しても拡大が期待され旅客需要は国際線を中心に引き続き増加すると予測。貨物需要については新興国経済の動向が懸念されるものの、底堅く推移していくと想定しているとのこと。
さて、この中期経営計画では3つの大きな目標が立てられているので、本会見ではその進捗状態の報告が主題となる。そこでここからはそれぞれの目標と進捗について取り上げていく。
最初に揚げる目標は「安全運航はJALグループの存立基盤であり、社会的責務であることを認識し、輸送分野における安全のリーディングカンパニーとして安全運航を堅持する」というものだ。2015年度には航空事故は起こってないが3件の重大インシデントが発生した。また、航空機システムの不具合等で目的地が変更される事態やヒューマンエラーによる不具合などは横ばいで推移しているので、それらの背景にある間接的な要因に対してもさまざまな取り組みを行ない、安心して利用してもらえるよう努めていくとのことだった。
2つ目の目標は「お客様が常に新鮮な感動を得られるような最高のサービスを提供し、2016年度までに顧客満足度ナンバーワンを達成する」ということ。2015年度は国際線へのJAL SKY SUITE、国内線へのJAL SKY NEXTの導入を進めたほか、社員ごとのヒューマンサービス向上に向けた内外評価の分割、活用によって顧客満足度の向上に取り組んだ。その結果、国際線における再利用意向率は3年連続で1位を達成しているが、JALのサービスを受けた経験を家族や知り合いに伝えたり、ブログなどで発言したりする「他社推奨意向率は2位に順位を落としてしまった。
また、国内線における再利用意向率は前年から順位を落とし5位となり、他者推奨意向率は前年同様の3位に留まった。
このように顧客満足度でナンバーワンを達成することについては厳しい状況といえるが、中期経営計画の残り1年で目標を達成するため2015年度の結果分析を踏まえて、スピード感のある商品サービスの改善になんとしても努めるとのことだった。
3つ目は「景気変動やイベントリスクを吸収しうる収益力、財務基盤として、5年連続営業利益率10%以上、2016年度末自己資本率50%以上を達成する」という目標だ。結果的に営業利益率は2015年度の見通しで15.3%。2016年度計画では15%と目標を確実に上回っている。そして自己資本比率も2015年度見通しで53%、2016年度計画では58.3%とこちらも目標をクリアする。
この中期経営計画が立てられた2012年は経営破綻からそれほど時間も経っていない時期だったので、財務目標のうち、5年連続営業利益率10%以上という項目については「無理ではないか」という意見もあったが、しかし確実に実行してきて5年目に関しても15%以上の好結果となっている。このことに対して、植木社長から「まずお客様に感謝し、そして社員にも感謝したい」という言葉が出た。
各年度の位置付け
この中期経営計画は2012年から2016年度まで対象期間としているので、今年はいよいよ最終年度となる。そこで改めて各年度の位置付けを下記のとおり整理していた。
まずは2012~2013年度だがこの期間は「高収益体質を本当に確率できるかが問われた期間」だった。それまでは決めたことを実行できず、その原因分析も行なわないまま、新しい計画策定を行なっていたのでそれを反省し、JALグループが変わったことを示す取り組みを行なってきた。ボーイング 787の運航見合わせや急激な円安といった厳しい事業環境もあった2年間だったが、新商品の投入、サービス向上、生産性向上などに努めて、結果的に営業利益率10%以上を最初に段階で実現した。ところが、増収はしていても減益になっていたので、厳しい事業環境への対応が今後の課題と認識した期間でもあった。
2014~2015年度は「経営基盤を整え、成長の実現に向けた第一歩を踏み出した期間」となっている。この期間、羽田の国際線発着枠の大幅増加による首都圏の競争激化や、消費税増税による需要への影響、円安による燃油費増といった厳しさを想定していたが、それらの影響は限定的だった。それよりも訪日需要の大幅な増加があったり、燃油市況の下落などが厳しさを緩和。加えて全社一丸となったコスト削減や商品サービスの改善を継続的に行なった結果、2015年度も増益を達成する見込み。「経営基盤を整え、成長の実現に向けた第一歩を踏み出す」という目標は達成されたと言えるだろう。
そして2016年度は「安定した成長により中期経営計画を達成し、2017年度以降に備える期間」としている。新興国経済の成長鈍化や中東を中心とした地学的リスクによる日本、及び世界経済の停滞や為替、燃油市況の急激な変動といった外部環境のリスクに耐える体制を作るため、引き続き「自立」「挑戦」「スピード」をキーワードとして競争に勝ち抜くための差別化に取り組むとのこと。加えて2017年以降を見据え、競争に打ち勝っていくための新たな取り組みの検討を進めるとのこと。
最後に植木社長は「中期経営計画をしっかり完遂して基盤を作れた2017年からが本当の意味の新生JALとして経営をしていきたい。なによりもここまで来るためにいろいろな方に力を借りたので、それをしっかりと還元できる企業になりたいと思っている」と語った。