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ボーイング、787型機や777型機の成長を見込むワイドボディ旅客機の現況と将来予測を解説

2017年12月13日 実施

Boeing 民間航空機部門 北東アジア・マーケティング担当 マネージング・ディレクター ダレン・ハルスト氏(Darren Hulst)が来日し、ワイドボディ機(双通路機)市場を解説した

 ボーイング ジャパンは12月13日、ボーイング 777型機や787型機など双通路のワイドボディ機の市場に関する説明会を実施した。

 米Boeingで民間航空機部門の北東アジアマーケティングを担当するダレン・ハルスト(Darren Hulst)氏は、世界の航空ネットワークについて触れ、急速に市場が拡大し、過去30~40年の年平均成長率は5%程度だったものが、ここ10年はそれを上まわっており、2017年も同様に高い成長率になると見込む。

 ワイドボディ機の活躍の場である長距離路線(ここでは5500km以上の路線と定義)については、世界市場では便数、距離ともに伸びているなか、特にこの10年で直行便によるサービス提供都市が加速的な勢いを見せていることを提示。これは新しいワイドボディ機の効率向上が可能にしたものとした。

 具体的には、こうした長距離路線の便数が過去15年間で72%増加。一方で、1機体あたりのシート数は3%しか増えていないと指摘。これにより、新しい市場を開拓することが重要であって、それはより大きな旅客機を求めるものではないと指摘した。

 このデマンドを裏付けるデータとして、世界市場の上位200の市場と、それ以外の市場の比較を示して、新規市場の便数やシートが大きく増えていること。そして、航空会社にとって業績を伸ばすための3つの手段、既存路線の増便、新規路線開設、1便あたりを増席(旅客機の大型化)という3つの手法について、現実の内訳がそれぞれ43%、44%、13%といった数字を出し、席数の多い大型旅客機ではなく、新規路線の開設や増便がより重要であることを示した。

 アジア市場でも、上位5空港の成長が就航地の数が増えたことによるもので、提供座席数は逆に減っていることを示している。

 日本市場については、大手2社の長距離路線がビジネスを伸ばしており、2007年からの10年間で2倍以上増加。海外航空会社による長距離路線はほとんど伸びておらず、日本の航空会社がシェアを高めている。具体的には日本発着の長距離路線は47路線が新たに開設され、特に羽田発着便の増加が大きいとしている。

世界の航空ネットワークには北米、欧州、アジアという3つの“ホットスポット”があり、それを結ぶ長距離路線について説明
航空ネットワークの年ごとの成長率
ワイドボディ機の市場傾向
2004年から2017年にかけて長距離路線の便数は72%増加したのに対し、航空機の座席数はほとんど伸びていないことを提示
世界のトップ200市場とそのほかの市場それぞれで長距離路線について10年前と比較したデータ。便数、座席数ともに、そのほかの市場の伸びが大きい
航空会社における長距離路線のキャパシティ増は増便や新規路線開設によるところが大きいことを示したグラフ
アジアの5大ハブ空港においては、いずれも就航先が増加。一方で平均座席数は4%低下している
日本の航空会社においては過去10年間で長距離便が2倍に増加
新たに開設された日本発着路線は47路線。うち羽田発着が20路線を占める

 世界市場で見た機体の傾向は、25年前は4エンジンのボーイング 747型機が30%を占めていたのに対し、1995年ごろからボーイング 777型機が長距離路線に対応できる2エンジンのワイドボディ機として登場。柔軟性が高いワイドボディとしてシェアを高めた。そして、2022年の市場予測では、ワイドボディの製造数が2012年比で40~50%増加するなか、4エンジン機の納入は2~3%で、残りは2エンジンの中型/小型ワイドボディになると予測した。

 日本発着を含む太平洋路線においては、ボーイング機が85%のシェアを占有。これは2012年と2017年の比較であまり変わっていないが、その内訳は変化しており、4エンジン機のボーイング 747型機が大きく数を減らしたのに対し、ボーイング 787型機が数を増やしたことで同等のシェアを維持している。特にボーイング 777型機と787型機の合計で80%を超えており、日本の航空会社の長距離路線はさらに顕著でほとんどがこの2機種であるというデータを示した。

ワイドボディ機のシェア。1995年ごろからボーイング 777型機などの長距離に対応した2エンジンのワイドボディ機がシェアを伸ばしている
2022年の納入予測では4エンジン機は2~3%。残りは2エンジンの中型もしくは小型のワイドボディ機になると見込む
太平洋路線においてはこの5年間でボーイング 747型機が大きく数を減らし、取って代わるようにボーイング 787型機が増加。全体シェアでは85%を占める
日本の航空会社の長距離路線ではほとんどをボーイング 777型機と787型機が占める

 現在の最新鋭機であるボーイング 787型機については、先週時点で637機をデリバリー。特に1/3は一度納入した航空会社からのリピーターであるという点もアピールした。リライアビリティ(技術的な信頼性)は、実績のあるボーイング 777型機に匹敵する99.4%となっており、短中距離路線での利用も含めて1日あたり12時間の稼働を実現できているという。また、世界的に見ると、ボーイング 787型機によって170路線の新規路線が開設され、この存在が南米やアフリカなどの距離を縮めたと話した。

 このボーイング 787型機の次の派生機であるボーイング 787-10型機については、50~60席の増席が可能で、燃費を25%改善できるとし、「ワイドボディとして初めて、座席あたりの燃費を(単通路機の)ボーイング 737型機並みにできる飛行機」と説明。

 現在、飛行試験が進められており、2018年の納入を目指している。

ボーイング 787型機の優位点
ボーイング 787型機の実績
170の新規路線開設を実現
ボーイング 787-10型機の特徴
ボーイング 787はリピーター購入が多いという
グローバル市場、アジア市場ともに競合以上の実績

 日本発着の長距離路線においても多数の機体が稼働しているボーイング 777型機については、次世代のボーイング 777X型機について説明。性能と効率をより高め、「どの大陸にも行ける飛行機」とアピール。ANA(全日本空輸)からの20機を含む340機を受注している。

 今後、5~10年間で、ワイドボディ機の置き換えで大きな動きを見せると予測しており、その需要に対してボーイング 777X型機が役に立てるとの考えを述べた。

 現在は最終設計による組み立てが進められており、初飛行は2018年末~2019年、納入開始は2020年初頭を予定している。

ボーイング 777Xについて
「すべての大陸に行ける」とする長航続距離をアピール
ANAからの20機を含む340機を受注

 ボーイング 777型機と787型機の2機種について、ハルスト氏は最後に世界の長距離トップ15路線すべてが、この2機種で運航されていることを紹介。2014~2017年の納入数シェアの65%をボーイングが占めており、今後も、新たに登場する派生機によって、250~450席の航空機市場を、高性能、長航続距離、高効率な2機種のファミリーでカバーしていく方針だ。

世界の長距離路線トップ15のすべてでボーイング 777型機と787型機を使用
ボーイングのワイドボディ市場シェアは65%
ボーイング 787-10型機やそれに続くボーイング 777Xで250~450席の範囲をカバーする