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パラオ政府観光局と日本旅行業協会、「パラオセミナー/ワークショップ」開催
2017年4月13日 23:00
- 2017年4月11日 実施
パラオ政府観光局とJATA(日本旅行業協会)は4月11日、旅行業界向けに「パラオセミナー/ワークショップ」を開催した。セミナーではパラオの魅力について、世界遺産、自然、文化、アクティビティなどの視点で紹介するとともに、パラオ観光の現状と取り組みについて解説。パラオ観光関連12社によるプレゼンテーションも行なわれた。
海外旅行復活に向けてより魅力的な観光商品の企画が重要
マリンスポーツだけではなく、旅行商品としての素材が満載のパラオ。今回の「パラオセミナー/ワークショップ」には100名以上の旅行業界関係者が集まり、その関心の高さがうかがえた。
冒頭、JATA 海外旅行推進部 村井秀章氏が挨拶。海外旅行の現状について、「2年前のパリ同時多発テロの余波から、ようやく海外旅行復活の兆しが見えてきました。そんな今こそ、旅行会社の企画力を高め、観光客を旅行会社に戻していきたい」とコメントした。
JNTO(日本政府観光局)のデータによると、日本人の海外旅行者数は2015年の1621万人に対して、2016年は1711万人となり、前年比5.6%増。直近では2017年2月が前年同月比11.8%増の148万8000人となり、円高で海外旅行が最も盛んだった2012年の1849万人に続く勢いだという。
「インバウンドは依然好調で、アウトバウンドの伸び率も大きくなってきています。韓国や中国などの近場は昨年、観光商品作りを強化。ヨーロッパへの観光客も復活の兆しが見えてきました。パラオにおいても、4月7日~9日開催のマリンダイビングフェアで行った11のセミナー中、一番、来場客が多いなど、マーケットは動いてきています」と村井氏。
JATAは今年2月に、政府観光局、旅行会社、航空会社、鉄道会社、宿泊施設など計122社・団体が参加する「アウトバウンド促進協議会」を設立。2020年に2000万人の海外旅行者数という目標を掲げる。村井氏は「これからの旅行会社にとって大切なことは企画力、斡旋力、安全対策の3つ」と述べ、なかでも魅力ある観光商品の企画力の重要性を述べた。
「Pristine Paradise Parau」というブランドを立ち上げ、豊かな自然を発信
続いて、パラオ政府観光局 日本事務所 代表の芝村 剛氏が登壇し、パラオの魅力や現状について紹介した。パラオは神戸や姫路から真南に3000kmの場所。時差がなく、日本語も通じるので、「沖縄の先にあるような国」だと芝村氏。586の島の内、人が住む島はたった9つ。ほかは無人島なので、手つかずの自然があるところが魅力だという。
パラオで一番大きな島がバベルダオブ島。この島は火山島で、グアム島に次ぎ、ミクロネシアで2番目に大きい島となる。その南に広がるのが珊瑚礁の隆起によってできた島々。これらがロックアイランドで、2012年に世界複合遺産に認定された。「世界遺産は現在1052件ありますが、文化遺産と自然遺産の両方を兼ね備えた複合遺産は35件。日本には複合遺産はないので、日本から一番近い複合遺産と言うことでも、多くのビーチリゾーターや自然好きの人がパラオを訪れています」と芝村氏。
世界複合遺産に登録された「南ラグーン・ロックアイランド群」の大きさは約10万ヘクタール。東京都の約半分の大きさのなかに、445の島と52の湖がある。珊瑚礁は385種類が確認されており、狭い海域に数多くの珊瑚が密集。「その魅力はグレートバリアリーフや沖縄にも引けを取らない」。また、パラオは大陸続きになったことがないので、独特の変化を遂げた固有種がたくさんいる。その1つがジェリーフィッシュと呼ばれるクラゲ。地殻変動の影響でまわりを島々で囲まれた汽水湖・ジェリーフィッシュレイクで生息するこのクラゲには外敵がおらず、刺す機能が退化したため、人が一緒に泳ぐことができる。昨年、エルニーニョの影響で減少したものの、ポリプーと呼ばれるクラゲの赤ちゃんは健在。これらが大きなクラゲに成長していけば、来年以降には従来のジェリーフィッシュレイクに戻ると期待されている。
珊瑚礁の恩恵は、ミルキーウェイという乳白色の海にももたらされている。これは珊瑚礁が長い時間をかけて堆積して、微生物によって分解されたもの。真っ白なドロは美容効果が通常の100倍あると言われ、どろんこ遊びをしながらキレイになれるというアトラクションが楽しめる。
また、周囲に世界一深いマリアナ海溝やパラオ海溝があり、多くの回遊魚が見られるので、パラオは世界でも有数のダイバーの聖地。マリンダイビングフェアでも海外のダイブエリアの人気投票で6年連続の1位を受賞するなど、ダイバーからの関心も高い。
このような海の魅力に加え、ネイチャーカヤックツアーや過去に30年間統治していた日本軍のトロッコ列車の跡、伝統的な建物や歴史的に古い道もある。「パラオには文化的な要素もあり、なかでもペリリュー島は70年以上前の戦跡が残っている生きた歴史博物館。今後はこれらに加え、バードウォッチングやフィッシングなどの企画にも力を入れていきたい」と芝村氏。「Pristine Paradise Parau」というブランドを立ち上げ、豊かな自然を発信していきたいと語る。
パラオの環境保護の取り組みを伝える「レガシーキャンペーン」がスタート
セミナーにはパラオ政府観光局の本局局長であるナナエ・シンゲオ氏が来日し、現状と取り組みについて解説した。パラオの観光客数は何度か減少しているものの、全体的に上昇。ここ数年は中国マーケットの急増で飛躍的な伸びを示すが、それもやや落ち着き始めているという。
「中国マーケットは2013年に9%だったのが、2014年には28%と約4倍になりました。2016年には約半分の観光客が中国からと、かなりインパクトがありましたが、直近の3月には日本の観光客が30%と、一番に返り咲いています」とシンゲオ氏。日本人向けの観光商品企画が大切であることを促す。
今後の取り組みとしてシンゲオ氏は、「ジョイント パートナーシップ」「MICE」「環境保護の取り組み」「新キャンペーン」の4つを掲げる。「ジョイント パートナーシップ」ではナショナル ジオグラフィックとのコラボで作った映像を彼らのメディアで発信してもらうなど、グローバルに広く展開。「MICE」は約300名が参加するPATAのフロンティアフォーラムが、2017年11月にパラオで開催されることを予定している。「環境保護の取り組み」については、「2009年に世界初のサメの保護区が誕生。2015年には排他的経済水域の80%を海洋保護区に制定するなど、海洋保護においては世界的なポジションにあります」と語り、イギリスに本社があるグリーフィンという団体とタイアップし、正しい海の知識を環境保護の一環として伝えていく取り組みも行なうという。
そして「新キャンペーン」が、パラオの美しい国、海、環境を次の世代に伝えていくための「レガシーキャンペーン」だ。このキャンペーンは今回の「パラオセミナー/ワークショップ」でいち早く伝えられた。正式には9月の第2週に予定されている国連で、トミー・レメンゲサウ大統領が発表する予定となっている。
その後、パラオ観光のサプライヤーのプレゼンテーションでは、デルタ航空やユナイテッド航空のほか、ホテル、施設、ツアー会社など、パラオ観光関連の12社が登壇。東急不動産を親会社に持つリゾートホテルの「パラオ パシフィック リゾート」からは、パラオ初の独立型プールヴィラを2018年末に開業予定であることが発表された。そのほか、バードウォッチングやヨガなどのオプショナルツアーのスタートなど、パラオの新しい魅力が各社によって伝えられた。