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日本旅行業協会、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みや、旅行業界のネットセキュリティ対策を説明
2016年8月26日 20:31
- 2016年8月25日 発表
JATA(日本旅行業協会)は8月25日、定例記者会見を行ない、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けたWG(ワーキンググループ)の設置、旅行業界における情報セキュリティ対策などについての説明があった。
コンプライアンスを意識しつつ、2020年に向けて旅行業界を盛り上げる
まず、JATAの理事・事務局長である越智良典氏からは、「大規模イベント開催に伴う対応WG(ワーキンググループ)」についての説明があった。1998年のFIFAワールドカップのフランス大会では現地のチケットを入手できない日本人が多く、チケット詐欺被害も多かった経験を踏まえ、2020年の東京開催が決定してからはチケット詐欺などのトラブルが出始めていることや、オリンピック・パラリンピックは大会ブランドを守るための規定が厳しいといった背景から、このWGを設置することになったという。
オリンピック・パラリンピックのブランド規定を知らずに、旅行業者がツアーを企画したり、営業行為を行なったりし、それが違反行為と判定されると、日本の旅行業界全体に影響を与えてしまう可能性がある。知的財産権の保護などコンプライアンス意識をもって、正規ルートによるチケットの入手などの徹底、2020年に向けた文化プログラムの情報提供、パラリンピックを機としたバリアフリーツアーのより一層の推進、ボランティアの情報提供などに取り組んでいき、「マイナスの面を消して、プラスの面を盛り上げていきたい」と述べた。
WGの座長はJTB首都圏 代表取締役社長の池田浩氏、副座長は日本旅行 取締役国際旅行事業本部長の喜田康之氏が務め、メンバーには大手旅行代理店が名を連ねるほか、JATAの法務・コンプライアンス室室長の堀江眞一氏などが加わる。
旅行業界のサイバーセキュリティへの取り組み
続いて越智氏からはサイバーセキュリティへの対応について説明があった。JTBの数百万件規模の個人情報流出事件があって以降、旅行業界の信頼を回復する取り組みについてさまざまな検討が行なわれているという。「ITセキュリティ特別委員会」の設置に向けての動きもあり、この特別委員会によって情報セキュリティ対策の業務内容を明確にし、JATA会員向けにも2016年内にはその対策の徹底を図りたい意向であるという。
この特別委員会の取り組みの「一番新しい話」として、中小規模の旅行業者やそのアウトソーシング企業などを含めた情報セキュリティ対策について、日々進化して巧妙化するサイバーテロの情報を旅行業界で共有できるような体制作りを、観光庁らとともに検討していることも紹介があった。
「うちは中小・零細企業だからサイバーテロは関係ないよ」という認識を払拭するため、個人情報の扱いが大事だという意識を高め、責任者を決め、組織作りをしていくといった、全体のセキュリティの底上げを図るための「旅行業界向けガイドライン」を観光庁とともに策定を進めており、2016年内には完成をさせて会員に通知したいとした。
そのほかの施策としては、JATA会員である旅行業者のためのセキュリティセミナーが9月2日に開催されること、また同じく会員向けとしてサイバーセキュリティ相談窓口が、2016年度中の設置を目処に検討されていることなどが紹介された。
サイバーセキュリティ事故を補償する「JATA サイバーリスク団体保険」
情報セキュリティ対策の話を受けて、株式会社ジャタ 代表取締役社長の遠藤洋二氏からは、「JATA サイバーリスク団体保険」についての説明があった。この保険はJATA会員である旅行業者に向けて、情報セキュリティ対策支援の一環として8月1日に発売されたもので、取扱代理店がジャタ、引受保険会社が東京海上日動火災保険となる。
サイバーセキュリティ事故によって発生した賠償責任や費用負担のほか、不正アクセスなどに対応する費用、調査依頼の費用、海外で起きた損害賠償請求訴訟なども補償対象となる。契約プランはシンプルな3段階で、支払限度額が3億円の「高額補償プラン」、1億円の「標準プラン」、5000万円の「エコノミープラン」が用意される。
加入者にはメールや会報を通じたサイバー関連情報、セミナーやテキストを使った教育支援ツール、各種リスク軽減対策などを提供。また、加入検討者も受けられる、ヒアリングシートを使った簡易リスク診断も用意される。
定例記者会見の最後には9月22日~25日に開催される「ツーリズムEXPOジャパン 2016」において、旅行業界への就職を目指す学生向けに「第5回 旅行業界研究セミナー」が、9月23日10時~12時30分に行なわれることが紹介された。参加にはJATAのWebサイト内にある「第5回 旅行業界研究セミナー」事前申し込みページから登録する必要がある。