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日本から約800枚! ハワイアン航空が募集した絵馬をハワイ出雲大社へ奉納

4月のイベントから3カ月。ついに絵馬を成田~ホノルル線に乗せてハワイへ

2016年7月23日 初便運航

「ハワイ出雲大社」。ハワイに? と驚く方もいるかもしれないが実は110年の歴史があるのだ

 4月10日に開催されハワイアン航空が特別協賛したイベント「第2回 ナ・ホク・ハノハノ・アワード 2016 ノミネーション&ミュージック・フェスティバル」。イベントの模様は弊誌記事でもお伝えしたが、会場では来場者に「ハワイに届けたい願いごと」をオリジナルの絵馬に書いてもらう催しを行なった。

 書いてもらった絵馬は約800枚。成田~ホノルル便の初便に乗せ、ホノルル現地時間7月23日にハワイ出雲大社で式典が行なわれ、無事に奉納することができた。ここではハワイ出雲大社で執り行なわれた奉納式の様子を紹介していきたい。

ハワイに出雲大社がある理由

ハワイ出雲大社。こうやって見ると、日本の一風景といってもおかしくない佇まいだ

 ホノルルの西、ノース・ククイ・ストリートにハワイ出雲大社がある。ハワイに出雲大社があるのは不思議に思えるが、れっきとした出雲大社の分院である。1906年に鎮座して、今年で110周年とのこと。

 どうしてハワイに出雲大社があるかというと、移民がハワイに定住することになった際、心のよりどころとして神社を創建していったのだが、移民のなかでも広島と山口の出身者が特に多かったことから、彼らの故郷に近い出雲大社も神職を派遣して布教を行なったのが始まりだそうだ。

 しかし、1941年の太平洋戦争では、神社は敵国にかかわる施設ということで、活動の停止や財産没収、さらには神職の拘束がされるなど厳しい状況に立たされた。戦後、10年の法廷闘争を経て、今の土地に社殿を移築して復興させたという歴史がある。

 これまでハワイ出雲大社は地元の日系人の信仰の対象として親しまれるのみで、観光客にとっては知る人ぞ知る場所だった。しかし近年ではメディアに取り上げられたことから、日本でも知られるところとなり、JTBの'OLI 'OLIトロリーや、H.I.S.のLeaLeaトロリー、ジャルパックのレインボートロリーといったトロリーが停車するようになっている。

 なお、出雲大社は普通の神社と違って、しめ縄の巻き方が左から右へと逆であり、柏手も普通なら2回のところ出雲大社では4回打つ。ここハワイ出雲大社でも分社ということで島根県の出雲大社と同様のしめ縄となっており、柏手も4回打つしきたりだ。

神社の敷地入ってすぐのところに手水鉢があるのは日本と一緒
ただし、手水鉢そばにはセンサーで感知してペーパータオルを出すハイテクなホルダーが
しめ縄は出雲大社同様に左から右に巻かれている

ついに絵馬をハワイ出雲大社へ奉納

 実際にハワイ出雲大社の本殿に足を踏み入れると、舞台状の内陣の前には絵馬が三方に乗せられ置かれていた。今回、絵馬を奉納するにあたり、筆者もあらかじめ絵馬をいただき、自宅で書いてハワイアン航空のスタッフにお渡しした次第。とりあえずお願いごとは「皆さまが日々、健やかでありますように。健康に仕事ができますように」である。やはり健康第一だ。

ハワイ出雲大社本殿の内観
約800枚の絵馬がついにハワイ出雲大社に
筆者も絵馬に願いごとを書いてきた。徹夜のテンションで絵まで描いてしまった次第

 神社の建物自体は出雲大社の大社造を思わせる造りで、中に入ると一瞬、日本に戻ったような感覚。ただし、本殿に入ってよく見ると神紋がネオン製で、お神酒に添えられているのがプルメリアとハイビスカスの花、内陣への階段にはハワイの儀典に使われるマイレ・レイ、とさりげないハワイらしさも見かけられた。

 式典にあたって英語のプログラムをいただいたところ、役職名が「Rev.」や「Bishop」とキリスト教風に書かれており、「Rev.」は神道でいうところの「禰宜」で、「Bishop」は「宮司」とのこと。このあたりも日本の神社で見かけることがないので少し新鮮な感じだ。

ネオンサインの神紋もハワイならでは
屠蘇器に飾られているプルメリアとハイビスカス。違和感はない
ハワイでおめでたいときに使われるマイレ・レイが階段に渡されている

 奉納式は宮坂純禰宜の司会進行で行なわれた。宮坂禰宜が太鼓を叩いたあと、天野大也宮司が榊の枝をつけた大幣で払う、いわゆる「修祓」を行ない儀典に先駆けてお清めを行なった。

英語で奉納式について説明する宮坂純禰宜
宮坂禰宜の太鼓が式典の始まりを告げる
大幣で払って式典の場を清める

 続いて絵馬の奉納に。4台の三方に分けて乗せられた絵馬をハワイアン航空のスタッフが一つずつ天野宮司に渡し、宮司が内陣に上がって神前に供える。その後、宮司が祝詞を上げ、ハワイアン航空と日本のつながりやイベントで多くの絵馬が集まったことを神前に報告。祈願を行なった。

宮司が大幣で払ったあと、玉串拝礼へ。絵馬奉納に続き、ハワイアン航空のスタッフが今度は玉串を持って神前に捧げた。最後に宮坂禰宜の太鼓で儀典が締めくくられたあと、天野宮司が改めて「皆さんが一生懸命に祈りを込めて書き、日本からハワイに渡ったすべての絵馬の願いがかなうことと、ハワイアン航空の繁栄を祈願します」と挨拶した。なお、絵馬はしばらくの間、神前にお供えされるとのこと。最後に、宮司からハワイ出雲大社の破魔矢とお守り、そして絵馬をいただいた。

三方に乗せられた絵馬が天野宮司に渡される
天野宮司が絵馬を神前に納めていく
神鈴を鳴らし、祝詞をあげて願いごとの成就やハワイアン航空の繁栄を祈願
玉串拝礼に先駆けて大幣でお払い
ハワイアン航空のスタッフが玉串を神前に捧げた
式典は最後に天野宮司による挨拶で締めくくられた

 式のあと、天野宮司はハワイ出雲大社の戦時中・戦後の苦難について説明したうえで「皆さんがバックアップしてくれたから生き残ることができた。やはり神様の力を感じます」と話し、また「ハワイにも自然の神様がいっぱいいて、そういうところは日本の神道と似ていると思います」と日本とハワイの信仰の共通点について語った。なお、ハワイ出雲大社では出雲大社と同様に大国主大神はもちろんハワイ産土神も祭っている。

ハワイ出雲大社の天野大也宮司
式典終了後、式典を執り行なったお2人とハワイアン航空のスタッフで記念撮影

 式典が終わって社殿の外に出てみると「IZUMO OFFICE」なる建物が。「これは日本でいう社務所かな?」と近寄ってみると、入口脇に販売しているお守りやお札の一覧表が掲げられている。そう、日本の神社同様にお守りが販売されているのだ。残念ながらオフィスの中は撮影できなかったが、さまざまな願いごとのお守りやお札がおいてあり、思わずお土産としてお守りを購入してしまった。

日本の神社でいうところの社務所と思われる「IZUMO OFFICE」
オフィス内で販売されているお守りやお札などの一覧
今回、購入した幸福のお守り(左)と開運のお守り(右)。幸福のお守りは英語で神社名が刺繍されている
こちらは天野宮司からいただいたハワイ出雲大社の破魔矢と絵馬とビジネスお守り

 神社をパワースポットととらえ参拝する人は多いかと思う。もちろん、それもわるくないけれども、実際にうかがってみたところ、ハワイという異国の地で苦難に耐えながら再興を果たしたという点で歴史的な価値が高い場所ではないかと感じた。ハワイの神社に興味を持った方はぜひホノルルを訪れた際に訪ねてみて、110年の歴史に思いを馳せつつ、参拝して、日本はもちろん、ハワイの神様にご挨拶をしてみてはいかがだろうか。