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インバウンド向けに高速バスを利用促進する「JAPAN BUS LINES協議会」正式設立

乗り放題の「JBLパス」を発行、高速バス事業者59社が参加

2016年7月20日 設立発表

左からWILLER TRAVEL株式会社 代表取締役の村瀬茂高氏、名鉄バス株式会社 取締役 藤田信彰氏、京王電鉄バス株式会社 常務取締役 立石努氏、南海バス株式会社 常務取締役 大野秀雄氏

 日本全国の高速バス事業者59社が参画した「JAPAN BUS LINES協議会」(以下、JBL協議会)が7月20日に正式に設立した。インバウンド(訪日外国人旅行者)向けに乗り放題パスの販売を行なうなどインバウンド向けに簡単・便利・安心に移動できる仕組みを提供していく。まずは9月上旬より全国100路線程度を対象とした乗り放題の「JBLパス」(仮称)の提供を目指す。

新たな高速バスの成長市場の創造

代表理事の京王電鉄バス、理事の名鉄バス、南海バス、事務局を置くWILLER TRAVELから1名ずつ登壇して設立会見が行なわれた
京王電鉄バス株式会社 常務取締役 立石努氏

 JBL協議会の設立経緯については、代表理事社となる京王電鉄バスから常務取締役の立石努氏が説明した。

 高速バス市場は近年、規制緩和と若者の利用が増え市場拡大してきたが、人口減少により利用者の減少が見込まれる段階に入ってきているという。減少分を下支えするためには、インバウンド市場を取り込む必要があり、そのため「高速バス事業をとりまく環境の危機感と、理念や価値観を共有した59社が、正式に設立することになった」と経緯を説明した。

 JBL協議会は7月20日が正式な設立だが、すでに2015年9月1日に高速バスの予約ができる「JAPAN BUS LINES」のWebサイト「JBLサイト」を立ち上げ、準備会を発足させ、これまで準備を進めてきた。

高速バスの市場推移
インバウンド市場の課題
JBL協議会設立までの活動
ビジョンと販売目標
JBL協議会の組織体制

 立石氏は「統一ブランドサイト、JBLサイトを立ちあげることで、インバウンドがワンストップで高速バス路線を比較検討することができるようになる」「将来的には、高速バス路線だけでなく、空港から観光地までのアクセスを、一般路線を含めて情報提供することも検討している」とWebサイトでの展開を語った。

 今後の目標としては、高速バス予約は2015年9月の立ち上げからこれまで述べ4000名が利用してきた実績があるとし、2019年にはWebサイトの売上は15億円、取扱人数は37万5000人まで拡大させることを掲げた。

 この数値は2020年のインバウンドが4000万人という政府が掲げた目標数値から2019年のインバウンドは3000万人と想定、そのうち高速バスの利用者が2.5%で75万人、JBLのサイトをインバウンドにとってスタンダードな存在まで認知させることで、JBLの利用者が50%とすると37万5000人。JBL利用者の平均単価を4000円とすると、37万5000人を掛けて15億円という数値になるという。

 また、準備を進めるなか、サービス検討会で翻訳のガイドラインとピクトグラムの必要性が挙げられ、その対応も行なった。

 翻訳ガイドラインは主にバス停名の表記に使用し、高速バスサイトで頻出する単語を訳す際のガイドラインを定めた。英語圏以外の人にも分かりやすいよう、バスの利用案内に必要なピクトグラムを作成、参加した会社が自由に使えるものとした。

事業者間の問題解決として翻訳ガイドラインを作成した
JBL協議会会員社が使えるピクトグラムの作成

 なお、JBL協議会は59社が参加。理事は京王電鉄バス、名鉄バス、南海バスの3社が務め、代表理事は京王電鉄バス。事務局はWILLER TAVEL内に置かれる。

全国約100路線を網羅する乗り放題の「JBLパス」

 JBLサイトでは高速バスの予約のほか、「JBLパス」(仮称)を発売する。全国約100路線を網羅する乗り放題のパスで、2016年9月上旬発売予定。まずはテストとして販売、テスト運用後に次回の計画を検討するという。

 価格は7日間のパスが2万円、14日間が2万8000円。JBLのWebサイトで販売している予約制高速バスのなかから約100路線が対象となる。有効期限は購入日から2カ月間の連続する7日間または14日間。利用資格はインバウンドのみとなる。

WILLER TRAVEL株式会社 代表取締役 村瀬茂高氏

 JBLパスの概要を説明したWILLER TRAVEL 代表取締役の村瀬茂高氏は、インバウンド向けに簡単・便利・安心に移動できる仕組みを提供し、ターゲット国としてタイ、インドネシア、フィリピン、アメリカ、フランスとした。そして、日本滞在期間は1週間からそれ以上、年代は22歳~35歳の若者、FIT(Foreign Independent Tourist、個人海外旅行者)で1人もしくは友人・パートナーと訪日し、ローコスト旅行を好み、日本文化、自然、歴史に興味がある人とした。

 ターゲットを設定した理由として、滞在日数が長い方がJBLパスでの旅行計画を立てやすいほか、ターゲット国の選択については、これまで準備期間としてリリースしたJBLサイトの利用者の国や地域、利用者の国でのバス旅行市場の存在などから選んだという。

検討の背景
JBLパスを今秋リリース予定
JBLパスのターゲット
JBLパスの概要
JBLパスの特徴
JBLパスの今後

 また、村瀬氏はJBLパスの提供により、鉄道では行きにくい観光地へのダイレクト移動の促進や、夜行の高速バスの特性を活かして、より遅くまで過ごし、朝早くから活動できることで、バス独自の周遊旅行が可能になるとした。今後はパスを売るだけでなく、各地域で魅力的なモデルコースの提案や、JBLパスで巡る訪日ゴールデンルートの開発も検討するという。パス自体も全国パスだけではなく、観光地を巡るような利用シーンに合わせたパスを作っていくことも検討しているという。

 なお、JBLパスの発売開始は9月上旬予定だが、発売時点ですぐにバスの予約や利用も可能となるよう、現場の乗務員の対応なども含めて準備を進めているとのことだ。