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【インタビュー】羽田~バンコク線に投入する“1クラス上の最高品質”「JAL SKY SUITE 777」(SS2)について聞く

1-2-1のビジネスクラス、3-4-2のエコノミークラスの意図は?

全席通路アクセス&フルフラットを実現した新ビジネスクラスシート「SKY SUITE III」

 JAL(日本航空)が6月18日から羽田~バンコク線(JL031便/JL034便)に投入する新ビジネスクラスシート「SKY SUITE III」搭載のボーイング 777-200ER型機「JAL SKY SUITE 777」(時刻表や予約システムではSS2と記載)。

 このSS2に搭載された新ビジネスクラスシートは、1人での利用が多いビジネス客とカップルでの利用が多いウェディング客やファミリー客のニーズを同時に満たすような1-2-1配置が採用されている。プレミアムエコノミークラスのシートは従来同様2-4-2配置だが、エコノミークラスにおいては3-4-2配置を採用。JALがこれまで展開してきた長距離路線用のボーイング 777-300ER型機「JAL SKY SUITE 777」(SS7)とは異なる戦略が垣間見える。この新しいシートやシート配置戦略について、JAL 商品・サービス企画本部 開発部 空港サービス・客室仕様グループ 西垣淳太氏に話を聞いた。

日本航空株式会社 商品・サービス企画本部 開発部 空港サービス・客室仕様グループ アシスタントマネジャー 西垣淳太氏

――中距離路線用のボーイング 777-200ER型機であるSS2と、長距離路線用の777-300ER型機であるSS7のコンセプトの違いは?

西垣氏:コンセプトはまったく同じものです。それは、“1クラス上の最高品質”になります。(ビジネスクラス、プレミアムエコノミークラス、エコノミークラスなど)すべてのクラスで1クラス上のものを提供するものです。

 ただ、大きな違いとしては中距離路線用に作られていることがあります。中距離路線には、今後SS2を投入すると発表しているバンコク、シンガポール、ホノルルなどアジアやハワイなどが入ります。

――今回のSS2では、ビジネスクラスのシートがフルフラット&全席通路アクセスは変わらないものの、進行方向に正対した配列ではなく、1-2-1の中央の2列が内向きに、窓側の列が外向きになっています。この配置にした意図は?

 この配置は全席通路アクセスを実現すること、そして斜め配置を実現することを目的にデザインされています。斜め配置のメリットは、フルフラットという価値を実現しながら席数を確保できるというのが大きな特徴となっています。また、窓側の列では外側に向けて斜めにすることで、よりプライベート感が高まっています。

──中央の斜め配置、つまりヘリンボーン配置ですが、航空会社によっては外向き(通路側向き)配置もありますし、今回のSS2のように内向き配置もあります。JALはなぜ内向き配置を選択したのですか?

西垣氏:もともとビジネスクラスはプライベート感を重視して作ってきています。そのプライベート感を向上させるためには、通路側を向かないほうがプライベート感が高くなります。中央の2席ではコミュニケーションにも配慮しており、扇形の小さなプラバシーパーティションを格納すれば2人で会話が楽しめ、プラバシーパーティションを出せば高いプライバシー環境を実現できます。この機体が投入されるのはリゾート地のある中距離路線になりますので、ウェディングなどで利用されるカップルにも配慮してこの配置としています。

――今回の新ビジネスクラスシートでは、シートそのものは従来のSS7と違いはあるのですか?

西垣氏:新ビジネスクラスシート「SKY SUITE III」のシート幅に関しては、SS7の「SKY SUITE」とほぼ変わらないものとなっています。また、いずれもフルフラットになります。エンタテイメントシステムも、SS7に導入されているMAGIC-Vよりも世代の新しい、ボーイング 787型機から採用されたMAGIC-VIになります。ボーイング 787型機で提供しているスカイマンガはSS2では提供していないのですが、MAGIC-VIの特徴であるスマートフォン同様のレスポンスのよいインターフェースでエンタテイメントシステムを利用できます。

――プレミアムエコノミークラスのシートについては変更はありますか?

西垣氏:プレミアムエコノミークラスのシート「SKY PREMIUM(スカイプレミアム)」については、お客さまから非常に好評なことから変更はありません。(後ろの席から見て)背もたれの倒れてこないフィクスドバックシートを(プレミアムエコノミークラスに)採用している航空会社はほとんどありません。安心してリクライニングが利用できるシートとなっています。

プレミアムエコノミークラスのシートであるスカイプレミアムは、SS7と同じもの。利用者にはとても好評だという

──エコノミークラスのシートには変更がないようですが、配置が3-4-2配置になっています。胴体幅の同じSS7では3-3-3配置ですが、これはなぜ変更したのですか?

西垣氏:エコノミークラスのシートは、従来のスカイスイートシリーズと変更なく「SKY WIDER(スカイワイダー)」となっています。座席幅も変わらず、“新・間隔エコノミー”シートになります。ただ、ボーイング 787のエコノミークラスのシートは製造工程の関係で、ボーイングの指定した取り付け可能なシートメーカーのものの中から最もよいものを選んで「SKY WIDER II(スカイワイダー2)」となっていたのですが、今回のエコノミークラスのシートはSS7と同様スカイワイダーとなっています。

 スカイワイダーとスカイワイダー2の違いは、この製造メーカーの違いはあるものの座席幅や座席ピッチなど、足下空間を拡げた新・間隔エコノミーという提供価値は変わりません。あえて違いを挙げると、メーカーの違いからシート構造が若干異なっています。

エコノミークラスシートであるスカイワイダー。3-4-2配置で、利用者の多様なニーズに対応していく

 また、3-4-2配置についてですが、カップル利用の2名でも、3人家族でも、4人家族でも横並びで座席を利用できるようにしたものです。従来の3-3-3配置では、2名では占有できず、4名では分かれて座ることになっていました。この3-4-2配置であれば、2名でも、3名でも、4名でも利用しやすくなっています。

――進行方向に向かって3-4-2配置となっていますが、2-4-3配置でもよかったように思います。この配置に理由はあるのですが?

西垣氏:とくに意図はありません。3-4-2配置でも2-4-3配置でも、お客さまのメリットは変わらないと思います。この配置になったのは、ボーイング 777-200ERの構造においてシートレール取り付けの相性がよかったためです。3-4-2配置によって、お客さまの使い勝手がよくなればと思っています。