井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

駅のホームで列車が止まる場所を知る方法

 鉄道を利用する際に、ホームに出て「なんとなく適当に」立っていたら、そこから離れた場所に列車が止まってしまい、慌てて走って移動した。そんな経験をお持ちの方は少なくないかもしれない。都市部では、「次の列車は○両編成で、乗車口はどこそこ」と案内されることが多いが、どこでも常にそういう案内があるとは限らない。

 そこで今回は、「列車がどの辺りに停車するかを知る方法」を紹介する。単にホーム上で慌てずに済むというだけでなく、「先頭車の運転台直後で前面展望の“かぶりつき”をしたい」という場合にも、役に立つかもしれない。

停止位置目標を探す

 東海道新幹線みたいに「すべて16両編成で出入台の位置もみんな同じ」なら話は簡単だが、これは全国的に見ると、むしろレアケース。長いホームに短い列車が停止する場面は多々ある。国鉄~JRグループでは1980年代から、「長編成の列車をときどき走らせる」代わりに「短編成の列車を頻繁に走らせる」流れが出てきたが、それが「長いホームの一部に短い列車がちょこんと止まる」場面を増やした。

 すると、冒頭で書いたような事態が発生する。それを避けるためには、「列車がどの辺りに止まるのか」を知る手がかりがあればよい。列車が駅に進入するとき、停止すべき位置は決まっており、好き勝手に停めているわけではない。それなら、停止すべき位置が分かれば解決である。

 その位置を示しているのが「停止位置目標」、略して「停目」。運転士は、この停止位置目標に合わせて減速・停車させている。設置の形態は、ホームの屋根からぶら下げる方法、線路脇に立てる方法、左右のレールの間に設置する方法がある。

 すると、列車が停止位置目標より先に停車することはないわけだから、停止位置目標を見つけることで、次に来る列車がどの位置に止まるかが分かる。その位置よりも、進行方向に向かって後方に陣取っていれば外れはない。ただし、編成両数だけは分かっていないといけないが。

 本来は運転士にしか用がないものだから、普通の乗客がいきなり「停止位置目標」と言われても「は?」となってしまうだろう。そこで、まずは実例を御覧いただこう。

停止位置目標の例

 まず、もっともポピュラーと思われる「編成両数ごとに、それぞれ異なる停止位置目標がある」ケース。

屋根から吊るされている、札幌駅の停止位置目標。「3」と「5」は同じ位置だから、3両編成と5両編成は先頭がこの位置に停まる。奥の方に「6」と「7」が見えるから、6両編成と7両編成は先頭がそちらの位置に停まる

 編成両数に関係なく同じ停止位置目標を使用する場合、数字を書かずに、無地の「◇」にするのが一般的だ。なお、停止位置目標は編成両数別に設置されるとは限らない。こんな事例もある。

小山駅宇都宮線ホームの停止位置目標。これは地上に設置するタイプで、「15」は15両編成の普通列車に対応する。「貨物」も併設していることから、貨物列車も先頭はここに停まるのだと分かる

 また、特定の列車だけを対象とする停止位置目標が設置されることもある。

土讃線・讃岐財田駅で。「千年」は「四国まんなか千年ものがたり」を意味する

このほか、特定の車両に対応する停止位置目標の事例もある。

これは小田急ロマンスカーのうち、前面展望室を備えた車両のための停止位置目標。運転台の位置が高いため、視認性を考慮して屋根から吊るしている。「LHV」は「7000形LSE」「10000形HiSE」「50000形VSE」の意(撮影時、まだ70000形GSEは存在しなかった)

編成両数ごとに位置が変わることもある

 同じ路線でも列車によって編成両数が異なることがある。その場合、停止位置は編成両数に関係なく同じになる場合と、編成両数ごとに変わる場合がある。例えば、ホームの一端に階段や改札口がある場合、そこに寄せて止めるのが好ましい。すると、停止位置目標の配置が上り列車と下り列車で違ってくる。

階段がホームの左端にある場合。下り列車(図ではホームの下側)は、編成両数に関係なく同じ位置に先頭車を停めればよい。しかし、上り列車(図ではホームの上側)は、編成両数に応じて異なる停止位置目標を設置する必要がある

 階段や改札口がホームの中央付近にある場合には、編成両数に関係なく中央付近に停めたいから、編成両数によって停止位置目標の位置が変わる。山陽新幹線を例にとると、ホームは16両分あるが、「こだま」「ひかり」には8両編成もあるし、「さくら」「みずほ」はすべて8両編成。そして通常、8両編成はホームの中央付近に止める。新幹線の駅では基本的に、ホーム中央付近に階段やエスカレーターを設置しているからだ。

 ただし駅によって、前後均等に4両分ずつ空ける場合もあれば、新神戸のように博多方に寄せて止める場合もある。在来線や私鉄各線でも、似たような話はある。