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JALとジャルパックが夜の北九州空港を楽しむツアー開催。実はスゴイ連絡橋の設計秘話や機長のトークショー、盛りだくさんを体験してきた!
2023年9月14日 00:00
- 2023年9月9日 実施
日本新三大夜景都市の1位に選ばれた福岡県北九州市、その瀬戸内海側の海上に浮かぶ北九州空港において、JALとジャルパックは「夜の北九州空港見学会」ツアーを催行した。
専門家の話を聞きながら連絡橋から夜の空港や街を眺め、営業終了した出発ロビーを使って紙ヒコーキを飛ばし、最後は整備中の飛行機を見学する、盛りだくさんの内容になっていた。
JALとジャルパックが連携したツアーには、現役パイロットが本気で考えた「帯広空港でボーイング 737を満喫 日帰りチャーターフライト」や、退役機のフェリー(輸送)フライトに乗客を乗せる「ボーイング 777-200ER ロサンゼルス行きチャーター便ツアー 4日間・6日間」など、ユニークで飛行機好きにはたまらない企画が登場してきた。
今回の夜の北九州空港見学会ツアーにおいては「夜景の街 北九州を体感する」をコンセプトに、夜の北九州空港をじっくり楽しめる内容に仕上げたそうだ。ちなみに北九州空港は日本では数少ない24時間運用が可能な空港でもある。ツアーの受付開始時刻になると続々と参加者が集まり、最初の目的地である新北九州空港連絡橋に向かった。
実はスゴイ連絡橋を橋の専門家が分かりやすく解説
大型バス3台に分乗して到着したのは、新北九州空港連絡橋の苅田町側にある展望所。ここでは、橋の設計や管理・修繕などを手掛ける「橋の町医者」こと松永昭吾氏が解説を行なった。
こちらの連絡橋は海上部分は2.1kmだが、本来の長さは東九州自動車道の苅田北九州空港IC手前までが含まれており、総全長は7.5km以上になるそうだ。同氏はこの連絡橋を「とてもラッキーで、とてもチャレンジングな橋」であるとし、ラッキーな部分は工費が想像以上に安くできたこと、チャレンジングなのはその当時の最新技術を駆使した設計に挑戦していることを挙げた。
橋梁部分は700億円ほどかかっているが、空港と陸地を結ぶ重要な橋としては土木関係者からすると驚くほどのコストで完成したそうだ。その理由としては、海底の軟弱地盤が広がるなかで1か所だけフタコブラクダのように岩山が隆起している場所があり、そこに重量のかかるアーチ橋を架けられたのが大きいと説明。本来なら軟弱地盤上に橋を架ける際は基礎をしっかりさせるために膨大なコストがかかるが、この岩山の発見は非常に幸運だったそうだ。
橋の大きさからするとアーチの高さが抑えられているデザインについては、少し離れた場所にある航空自衛隊の築城基地が関係していると説明。戦闘機は離陸直後、発見を逃れるために低空飛行を必要とする場合があり、アーチ橋を高くすると空域制限に引っかかってしまうことから今のデザインが採用された。本来なら、両端に大きなタワーを建てた吊り橋にすればよいところをさまざまな制限のなかで模索し、挑戦した結果が、当時の最先端技術を結集したすごい連絡橋になったことを強調した。
現役機長が機上の知られざる苦労話や海外との違いを紹介
連絡橋を堪能したあとは北九州空港の出発ロビーに向かった。出発便の最終は21時10分なので、以降は貸し切り状態で現役の機長によるトークショーが行なわれた。
今回マイクを握ったのはフライト歴20年以上の増田寛氏。国際線のボーイング 747型機、777型機を長年担当し、今年からは737型機で国内線フライトに就いている。国際線パイロットとしての苦労話や外国と日本との違いなどを軽妙な語り口で紹介し、会場を沸かせていた。
増田機長は長い国際線生活のなかで大韓航空に3年ほど出向していた時期もあったそうで、そのときのエピソードもいくつか披露した。路線のなかには中東方面へのフライトも数多くあり、これがかなりの緊張を強いられたと話す。イラン上空では管制を担当する空軍に許可を取るも、先方の通信品質のわるさが原因で事後報告になるのを毎回どやされ、キリスト教の聖地があるイスラエルは空爆が行なわれている時期にアサインされてドキドキしたこともあったそうだ(結果的には出発直前にキャンセルとなった)。
また、増田氏によると韓国の上空1万フィート以下になるとキムチの匂いがほのかに感じられるそうで、戻ってきたと実感するそうだ。ほかの国ではハワイやロサンゼルスなどもその場所特有の匂いがあると話していた。
コロナ禍においては意外と思われるかもしれないが、国際線パイロットは多忙だったと話す。船員が集められないことから多くの船便が欠航となり、その代わりに航空輸送が大きく伸長。客室が真っ暗な状態で、旅客機を輸送機として頻繁に飛ばしていたのは今までにない経験だったとのことだ。
国際線から国内線に担当が変わって驚いたこととして、空港へのアプローチや着陸が海外と比べて難しい点を挙げた。海外の空港の多くは海沿いの平地で滑走路もフラットだが、日本の空港では松山空港など滑走路に傾斜がある場合や、広島空港のように山間に位置しているため独特の風に注意を払う必要があるなど、平地が限られている日本ならではの空港事情があることを解説した。ただし、滑走路の路面状態や設備に関しては日本が優秀であることも伝えていた。
松本零士にほめられた「ネジチョコ」と初公開の新作がお土産として渡される
今回のツアーの目玉の一つとして用意されたのが、「ネジチョコ」の夜景デザインパッケージ「ネジチョコNIGHT」だ。ネジチョコは、チョコレート製のボルトとナットで構成されたお菓子で、実際に締めることができる精巧さが人気を呼んでいる。
官営八幡製鉄所関連の施設が世界文化遺産に登録されたことを受け、「北九州らしいお土産を作りたい」と地元企業であるオーエーセンターが立ち上げた「ネジチョコラボラトリー」が作り上げたものだ。北九州空港には小倉に住んでいたこともある松本零士氏(故人)の代表的作品「銀河鉄道999」のヒロインであるメーテルの像が飾られている。
作品のなかで主人公である星野鉄郎はネジにされかけるというのがあり、松本零士氏から「本当に北九州らしい、いいものを作られましたね」と称賛されたエピソードを代表取締役社長である吉武太志氏が披露した。
この日のためだけに用意された特別限定パッケージであるネジチョコNIGHTには、JとAとLの星座、赤い橋、工場の煙突、赤いワンポイントが入った飛行機やスーツケースを引く女性などが描かれていた。
そしてもう一つ、サプライズとして用意されたのが「メカサブレ飛行機セット」だ。こちらはすでに販売されている「メカサブレ工具セット」の第2弾となるもので、今回が初のお披露目となった。メカサブレ飛行機セットは、サブレのボディに主翼や水平尾翼を取り付け、エンジンをネジチョコで固定できるようになっている。お菓子の家ならぬ、お菓子の乗り物という、大変ユニークな商品だ。
ただし、輸送に耐えうる強度と同梱する乾燥剤の形状選択を詰めている段階なので、お土産屋などの店頭に置かれるのはまだしばらく時間がかかるそうだが、同社の直営店やオンラインショップでは先行して販売するとのこと。
出発ロビーを貸し切って紙ヒコーキ教室を開催
トークショーのあとは折り紙ヒコーキ教室が開催された。JALでは「空育」のもと、折り紙ヒコーキを通じて空の楽しさを学べるイベントを開催してきた。
今回のインストラクターは主任指導員の肩書を持つ、津田雅章氏が担当した。実はこの主任指導員は、JALのなかでも3人しかいないスペシャルな存在だということも教えてもらった。ちなみに正指導員は12人ほど、準指導員は2000人ほどだそうだ。
用意されたJAL特製折り紙ヒコーキ用の紙を用い、参加者はワイワイと楽しそうに組み立てていた。折り紙ヒコーキを作るうえでのポイントは、「不必要に紙を触らないようにし、爪の先ではなく、指の腹でやさしく折る」こと。今回は夜ということで、暗闇に浮かぶよう蛍光テープも用意された。テスト飛行を重ね、最後は3階から2階の出発ロビーに向けて、思い思いに紙ヒコーキを飛ばしている参加者の姿は非常に楽しそうだった。
機体を間近にして参加者のテンションは深夜でも最高潮
最後はお待ちかねの機体見学で、明日の出発に合わせて整備が行なわれていたボーイング 737型機に向かった。すぐ間近で機体を観察し、機内ではコクピットの見学もできるということで、夜遅くであるが参加者の足取りも軽い。
普段、飛行機に乗る際はボーディングブリッジ経由がほとんどで、小規模空港を除き、駐機場に出て外観を観察できる機会はめったにない。そのような貴重な機会であるため、整備士の説明を全員が真剣に聞き、機体やエンジンをバックにした記念撮影や機体の撮影を楽しんでいた。機内では増田機長が参加者の質問に答え、コクピットを案内し、記念撮影にも気軽に応じていた。