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ハワイ州議員団、マウイの支援に感謝を伝える訪日で「そのほかの地域は観光客を歓迎」。旅行会社の日本語365日対応など「海外でハワイほどインフラの整ったところはない」と自信も

2023年9月5日 実施

ハワイ州議員団がインタビューに応じた。写真は左から、ハワイ・ツーリズム・オーソリティ 最高管理責任者 ダニエル・ナーホオビイ氏、ハワイ州議会 下院議員 ダニエル・ホルト氏、ハワイ州議会 上院議員 副議長 ミシェル・キダニ氏、ハワイ州産業経済開発観光局 事業開発・支援部門管理官 デニス・リン氏、ハワイ州観光局 日本支局 局長 ミツエ・ヴァーレイ氏

 ハワイ州観光局は9月5日、来日しているハワイ州議員団の報道向けインタビューを実施した。

 議員団は州議会の上院議員4名、下院議員4名、産業経済開発観光局2名、ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)1名、観光局2名の計13名で、8月30日~9月7日に日本へ滞在し、広島・東京の視察および表敬を行なっている。

 この背景には、コロナ禍を経て回復期にある観光市場、とりわけハワイへの出国者数が2019年以前の半分に満たない日本市場の今後に向けた取り組みと、8月8日(現地時間)に発生したマウイ島西部の山火事に対する支援・寄附への感謝を伝える目的がある。

 寄附については、日本円で送金できる窓口をハワイ州観光局が8月17日に開設しており、そこから2週間で法人・団体13社、個人4356名から計5222万円の救援金が集まっているという。マウイ西部への救援金については、引き続きWebサイトで受け付けている

 この日、議員団のなかからインタビューに対応したのは、ハワイ州議会 上院議員 副議長のミシェル・キダニ氏、ハワイ州議会 下院議員のダニエル・ホルト氏、ハワイ州産業経済開発観光局 事業開発・支援部門管理官のデニス・リン氏、そして、HTA 最高管理責任者のダニエル・ナーホオビイ氏とハワイ州観光局 日本支局(HTJ)局長のミツエ・ヴァーレイ氏の5名。

ハワイ・ツーリズム・オーソリティ 最高管理責任者のダニエル・ナーホオビイ氏

マウイ西部の現状と支援の輪

 マウイ西部の現状としては、9月1日に慰霊行事「キプニ・アロハ・ノ・マウイ(K.puni Aloha no Maui)」を行なっており、人種や宗教を問わず1日中祈りを捧げたとのこと。引き続き喪に服す姿勢に変わりはないが、訪日議員団としては「マウイ東部は安全である」というメッセージを出していきたいという。

 特に壊滅的な打撃を受けたラハイナはかつてハワイ王国の首都であり、「ツーリズムという面では大打撃を受けている」が、まずは現地のコミュニティと話をして州内で復興に向けたプランを検討している状態。

 8月21日には、ハワイ州知事のジョッシュ・グリーン氏とHTAがマウイ西部(ラハイナ、ナピリ、カアナパリ、カパルア含む)へは渡航を控えるよう呼びかける一方、「マウイ島のそのほかの地域とカウアイ島、オアフ島、ラナイ島、モロカイ島、ハワイ島は旅行者を歓迎している」と声明を出しており、議員団としても「マウイ西部以外を訪問してもらうことで、その地域が間接的にマウイを支援できる」と説明した。

 また、直行便がないこともあり、日本からマウイへの渡航者は市場の2%未満であるという。そのためハワイ州観光局としては、まずは「7月末時点でコロナ前の30%台に留まっている日本市場全体を戻すことに注力」する。

 10月以降、ANAのエアバス A380型機3号機の投入やデルタ航空の羽田~ホノルル線のデイリー化、JALのホノルル線増便など航空座席数増が控えているものの、かつての供給量の65%にも届かないという。そこで、まずは日本発の直行便のあるオアフ島・ハワイ島へ観光客を戻していくことで、間接的にマウイの支援を行なっていく。

 また、ミツエ・ヴァーレイ日本局長は発災時にホノルルにいたそうで、マウイ島にどのくらい旅行者がいるかを把握して島外への移動を促す際、州政府と市郡、旅行業界が緊密に連携しており、移動のためのエアラインやバス会社の協力、ホテル客室の確保、赤十字とボランティアの初動の早さなど、ハワイのリスクマネージメントの高さに驚いたという。また、局長自身も24時間体制でチームを組んで支援に当たっており、被災時も観光客を守るための仕組みが構築されていることを再認識したと話す。

 一方、日本からの支援については、「いま安全に渡航できるか」ではなく、「どうすればマウイを支援できるか」という問い合わせが多かったそうで、日本円で信頼できるところに寄附するための仕組みを発災後1週間で構築したという。

日本から見たハワイ市場の現状、マウイ被災者の保護

 前述したとおり、ハワイへの日本人旅行者数は7月末でコロナ前の30%台に留まっており、ハワイにおける日本市場のプレゼンスが下がってるだけでなく、円ドル相場や宿泊料金の高騰などで、日本人にとってのハワイ市場もプレゼンスが下がってしまっている印象がある。

 こうした現況について、そもそも日本の海外旅行がフルオープン(水際措置撤廃)になったのは5月であり、まずは海外旅行から遠ざかっていた日本人のマインドを掘り起こす必要があり、そのためにJATA(日本旅行業協会)と連携してパスポート取得のサポートなどを実施しているほか、6月からは広告キャンペーン「Beautiful Hawai'i(ビューティフルハワイ)」を展開。島の美しさや人との出会い、歴史と文化の学びなどを伝えていく。

 また、前提として「為替など我々がコントロールできない要素はある」としつつ、業界全体で見ると「海外でハワイほどインフラの整っているところはない」という。災害やパンデミックといった不安要素は世界中にあるが、「すべての旅行会社が日本語で365日サポートを行なっていて、パッケージでこれほど安心して渡航できるデスティネーションはほかにない。そこはもう一度しっかりと掘り起こす必要がある」と述べ、ハワイが持つ底力をアピールした。価格面についても、今後便数が増えてパッケージ旅行が増えて、客室数が増えていくことで「旅行者のニーズに合った旅ができるようになる」と見通しを示した。

 最後に、マウイ西部の被災後、土地の買い漁りが発生していた件については、「グリーン知事からも新しい法律について発表があったが、搾取・略奪的行為は許されないこと、不謹慎な方法で土地を購入しようとする相手については政府に報告するように呼びかけている」という。