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はじめての観艦式。令和元年度自衛隊観艦式の見どころと楽しみ方

台風19号の影響で全日程が中止に

2019年10月12日~14日 中止決定

令和元年度観艦式は中止が決定したが、次回実施時の参考にしていただきたい

 自衛隊は3年に一度、例年10月に「自衛隊観艦式」を開催している。観艦式とは、「自衛隊の最高指揮官である内閣総理大臣が艦隊を観閲することにより、部隊や隊員の士気を高め、国内外に自衛隊の精強さをアピールすること」と「国際親善や防衛交流を促進すること」「国民に自衛隊への理解を深めてもらうこと」を目的としている。

 観艦式は1957年(昭和32年)の第1回目を皮切りにこれまで28回(2002年/平成14年度の国際観艦式を含む)開催しており、今回で29回目となる。なお、自衛隊ではこのほかに陸上自衛隊が主体となる「観閲式」、航空自衛隊の「航空観閲式」があり、海上自衛隊主体の「観艦式」と、毎年持ちまわりで実施している。

「観艦式」はWeb上での事前登録および抽選の結果、当選者のみが乗艦できる。また洋上で行なわれるため当選者以外が見学することは不可能だ。そこで、「観艦式ではなにが行なわれるのか」「見学のベストポジションは」といった内容をまとめてみた。乗艦予定の方は事前のシミュレーションとして、また残念ながら今回乗艦できなかった方は観艦式のイメージとして、ぜひ一読願いたい。

 なお、艦隊の序列イメージを図示しているが、あくまでも入手できた情報からの推測であり、実際にはこのとおり行なわれない可能性があることもあらかじめご承知おき願いたい。

【注意】
・令和元年度自衛隊観艦式は台風19号の影響により「中止」が決定した。
・10月12日~13日の事前公開も中止している。
・観艦式、および予行の乗艦券を持っている方には艦艇の特別公開が行なわれる予定。

令和元年度自衛隊観艦式について

開催日時

観艦式: 10月14日(※中止決定)
第1回事前公開: 10月12日(※中止決定)
第2回事前公開: 10月13日(※中止決定)

開催場所

相模湾

乗艦場所

横須賀: 吉倉桟橋、船越岸壁、横須賀新港
横浜: 山下ふ頭
木更津: 木更津公共ふ頭

マップの位置はイメージ。(1)横須賀、(2)横浜、(3)木更津。艦隊は黄色のルートで相模湾に向かう
艦艇部隊編成

観閲部隊:5隻
「たかなみ」「いずも」「こんごう」「ちょうかい」「あけぼの」
観閲付属部隊:4隻
「しもきた」「むらさめ」「いかづち」「せとゆき」
受閲艦艇部隊:24隻
旗艦「あさひ」
第1群「かが」「はるさめ」「さみだれ」「ありあけ」
第2群「あたご」「ふゆづき」「ちくま」「やまゆき」
第3群「はたかぜ」「しまかぜ」
第4群「ましゅう」
第5群「くにさき」「うらが」「ひらど」「はつしま」「あいしま」「ゆげしま」
第6群「しょうりゅう」「こくりゅう」「せとしお」
第7群「はやぶさ」「おおたか」「くまたか」
祝賀航行部隊:13隻
「てるづき」「いず(海保)」「カナダ艦」「中国艦」「シンガポール艦」「英国艦」「米国艦」「インド艦」「オーストラリア艦」

観艦式の持ち物

 観艦式では、8~10時間程度艦艇に乗ることになる。途中で降りることもできないし、また客船ではないので快適な空間や設備は限られており、ほとんどの人が甲板上で1日を過ごすことになる。天気がよければ日照対策が必須で、天気がわるければ雨への備えも必要。また、自然の風+艦のスピードによる合成風力で強風になることもあるし、波が高い場合は海水の飛沫などから身体やカメラなどの荷物を守ることも必要となる。決して快適とはいえない艦上だが、装備が充実していれば必要以上に心配することはない。以下に、筆者の経験などから用意しておきたいものをまとめた。

服装・持ち物・あると便利なもの

・乗艦券、身分証明となるもの
・服装は長ズボン、長そでシャツ、運動靴
※艦上は強風になる恐れがあり、またタラップ(階段)は急。女性はスカートやヒールを避けること
※艦上、艦内は突起物も多いため、ひっかかりにくい服装とすること
・レインウェア(上下セパレートタイプ)
※防寒着兼用となるもの。防水透湿性素材のものが望ましい
・帽子(キャップ)
※風で飛ばされないよう注意、または対策すること
・サングラス、日焼け止め、タオル
・カメラ、ビデオカメラ、双眼鏡など
※落下しないようネックストラップストラップなどを推奨
※一眼レフカメラの場合、便利な焦点距離は70㎜~400mm程度
・飲料、食料
※食べ終わったあとのゴミをコンパクトに畳めるよう、おにぎりなどが無難。飲料はガラス瓶は禁止
・クッションシート(携帯座布団)
※甲板にはチェアなどはなく、デッキに座ることになる
・ティッシュペーパー、ウェットティッシュ
※カメラボディやレンズなどに海水の飛沫が付着しても応急的にメンテナンスできるもの
・モバイルバッテリ
※洋上は圏外になりやすく、通常よりバッテリ消費が激しくなる
・酔い止め、携帯カイロ、常備薬など
※酔いが心配なら、酔い止めを出港直前に飲んでおく
・50リットル程度のビニール袋(ゴミ袋など)
※荷物を入れ、海水の飛沫や雨などから守るためのもの。甲板が濡れている際のシート代わりにもなる
・小さめのビニール袋
※吐しゃ物やゴミなどを入れるためのもの

持ち込めないもの(観艦式公式サイトに記載)

・油脂類、ナイフ類、火薬などの危険物、ガラス、ビン類
・旗、垂れ幕、ビラその他の配布物、酒類、ペット、無線機など
・自衛隊制服のレプリカの着用は禁止
・小型無人機(ドローン)の基地内や艦内の持ち込み、周辺飛行も禁止
・航海中の日傘・雨傘の使用は禁止(乗艦までに使った折り畳み傘などは一時預かりとなる)

乗艦方法/乗艦時刻/乗艦したらまず何をすべきか

 乗艦時間、場所は「乗艦券」に記載のとおり。観艦式は出港から帰港まで8時間から10時間程度となるため、航海中快適に過ごすためには早めに乗艦し、広く見渡せる場所などを確保することが大切だ。乗艦開始時刻には列もできているため、公共交通機関を利用する場合は始発で向かうようにしたい。自動車の場合は、最寄りの公共駐車場を利用することになるが、混雑も考えられるため余裕を持った行動が大切だ。

 乗艦場所に到着し「受付」を済ませるとそのままタラップから乗艦する。「受付」近くでは弁当や飲料も販売されていることがある(確実ではない)ので、必要ならここで買っておきたい。乗艦後は、甲板上、艦内など公開されている範囲は自由に移動可能だ。ただし出港時刻までにどんどん観客が乗ってくるので、航海中の居場所を早めに決めておきたい。タラップ付近や後甲板などで毛布を配布している場合もあるので、複数人で行動している場合は1名が場所を確保、もう1名が毛布を取りに行くなどして快適に過ごす準備をしておく。

出港後、観艦式が始まるまで

 出港後、東京湾内は揺れも少なく快適に過ごしやすい。横須賀、横浜、木更津から出港してきた艦艇が自分の乗った艦の前後に並び隊列を組み始める。第二海堡、浦賀沖を通過すると外洋に出るため、波が高くなる。多くの護衛艦にはフィンスタビライザーと呼ばれる水中翼があるため、揺れは最小限に抑えられるが、潜水艦救難艦や掃海母艦には(潜水艦や掃海艇を横付けする際に破損しないよう)これがないため、揺れはやや大きくなる。ただし艦そのものが大きいので必要以上に心配することはない。

 三浦半島沖の南を抜けると、艦隊は「観閲部隊」「観閲付属部隊」の2列に並び、まっすぐ西(熱海市の方向)に進む。このとき東風だと艦の速度と相殺されて風は収まるが、西風だと風+艦速の合成風力で艦上は強い風が吹く。帽子などが飛ばされないよう注意するとともに、ウィンドブレーカーやレインウェアなども使用して暖かくすること。複数人で来ている場合は、この時間(もしくは観艦式終了後)に交代で艦内見学やトイレなどへも行っておこう。

 また、「受閲部隊」の艦艇は東京湾を出ると速度を上げて西進し、熱海の東で180度回頭、今度は東に向かって速度を落として航行する。「観閲部隊」「観閲付属部隊」とすれ違うためだ。艦上は強風になる可能性もあるため、対策はしっかりとしておきたい。

観艦式見学のベストポジションは?

 艦艇では甲板が最も広い場所で収容人数が多く、一般的な護衛艦では艦橋より前の「前甲板」、ヘリ格納庫やヘリパッドがある「後甲板」だと左右の視界も開けているため見学には適している。

 ただし、自分が乗っている艦艇が「観閲部隊」か「観閲付属部隊」か「受閲部隊」かのいずれかによって、また部隊の前の方に位置しているか後ろの方に位置しているかによってベストポジションは異なる。

 また、観閲艦「いずも」のほか、「かが」「しもきた」「くにさき」は全通甲板(空母型の甲板)になっていて航空観閲などは甲板のどこからでも見られる。

「いずも」飛行甲板。配布された毛布を敷けば意外と快適

 艦橋(ブリッジ)に入れる艦もあり、艦隊運動を行なうために速力や針路を細かく調整する様もつぶさに観察できる。ただし観艦式を見学する場所としては視界が限られること、艦橋は非常に混雑すること、そのために座って休む場所がないことを知っておいていただきたい。艦橋を見学するのなら、観艦式の前か終了後の東京湾~相模湾の移動時間に(混雑は必至だが)行ってみよう。

 一部の艦は艦橋トップ(操艦を行なう場所のさらに上)まで上がれる。ここは周囲を俯瞰できるので観艦式全体を見るにはよい場所だ。ただしここも大混雑するうえ、波が荒い場合は最も揺れる場所でもある。真っ先に乗艦できた場合を除いて、のんびりと見学したい人にはあまりお勧めはしない。

艦橋と艦橋トップ。写真は一般公開時のもので、観艦式では混雑する

 艦内は、機関室(兼応急部署)や食堂などが見学可能。機関室ではエンジンのコントロールやダメージコントロールのパネルなどを見ることができ、意外に空いているので、艦内を探索する場合はぜひ立ち寄りたい。また食堂も開放されており、艦によっては食料や飲料、グッズなどを販売(または後部のヘリ格納庫)していることがあるのでぜひ立ち寄りたい。食堂は椅子とテーブルがあり座って休むことができるが、年配の方などが詰めかけていることが多くそれなりに混雑する。なにより、ここにいては観艦式を見ることはまったくできない。

「いずも」航空要員のブリーフィングルーム。非常に広いが観艦式は見学できない
護衛艦の多くは甲板が艦の外周を囲んでいる。場所によっては観艦式がまったく見えないので、場所選びは慎重にしたい
写真を撮る人は左右、空が開けた場所を確保しておきたい
スマホなどで航空機を撮る場合は、ズームを使わず広く撮ると臨場感が出やすい

 トイレは艦内にあり、混雑はしない。水(海水)を流す際には独特のバルブを操作する必要がある。説明板があるので、その案内に従うこと。自衛艦独特のものなのでこの機会に見ておきたい(ただしトイレなので撮影などは注意すること)。

 以上をふまえて、甲板上などから見学する際、どこがベストポジションとなるのかを考える際の参考に、場面ごとの艦艇の配置図を作成した。ただし、これは10月上旬に行なわれた訓練の際のAIS(自動船舶識別装置)の情報から参照したもので、本番では序列が変更されることがあること、また台風19号の影響で規模が縮小されることが確定しており、展示内容も変更される可能性があることから、あくまでも参考程度のものであるとご承知いただきたい。

 展示内容のイメージは記事中の写真も参考にしていただきたい(写真は2012年、2015年のもの)。なお、撮影する場合、レンズは200~400mm程度が便利。航空機などは超望遠での撮影もしたいところだが、観艦式のショットと分かるようにするには広めの方が無難だ。

※過去に観艦式を見学した向きからは、「観閲部隊」と「観閲付属部隊」の位置が南北逆になっていること、訓練展示の位置も南北逆になっていることに違和感を覚えると思う。しかし、AISの情報ではこのようになっているようだ。これはおそらく艦橋が甲板右舷寄りにある「いずも」で、観閲官(内閣総理大臣)の視界を確保するためと考えられる。

観閲前の序列。東京湾を出てこの並びをとる。受閲部隊はいったん西に移動し、回頭する
横浜、横須賀、木更津を出港した艦艇が東京湾上で列を形成しながら南下する
艦上ではヘリは公開されたり、CIWS(近接防御火器)や主砲のデモが行なわれたりする
観艦式に向けて整列する艦も撮影しておきたい
「艦艇観閲」は、観閲部隊と観閲付属部隊の中央を受閲部隊、祝賀航行部隊が反航する
並走する「くらま」「むらさめ」「あたご」
「観閲部隊」から、反航する「受閲部隊」を見たイメージ
「観閲付属部隊」から反航する「受閲部隊」を見たイメージ。晴れると逆光になる
反航するミサイル艇。ゆっくり反航していくので、露出を変えてシルエットにするなど撮影も楽しんでみたい
祝賀航行部隊の外国艦艇。ホストシップ(今回は「てるづき」)に続いて航行する。艦上では乗員が正装して登舷礼を行なう様子にも注目。また、旗旒(きりゅう)信号は「U」「W」が掲げられるはずだ。これは「御安航を祈る」の意味
艦艇観閲後、受閲部隊の一部が180度回頭して観閲部隊、観閲付属部隊に続行する
回頭する補給艦「ましゅう」と潜水艦救難艦「ちはや」
航空観閲は観閲部隊、観閲付属部隊の上空を通過する
P-1哨戒機(左から600mm、160mm、200mmで撮影)
航空自衛隊F-2戦闘機。観閲部隊と観閲付属部隊では光線が全く異なる
航空自衛隊F-15戦闘機
P-3C哨戒機
陸自CH-47とAH-64D。AH-64Dは今回は不参加
米海軍P-8哨戒機も参加
航空観閲後、訓練展示に向けて180度回頭する
回頭中の艦艇を撮影するチャンス(いずれも200mmで撮影)
訓練展示は護衛艦による「祝砲」と、ミサイル艇による「IRフレア発射、高速航行」が行なわれる
祝砲を発射する「しまかぜ」
「くらま」はすでに退役した
IRフレアを発射、その後に高速で接近してくる「はやぶさ型」ミサイル艇
航空部隊の訓練展示。対潜爆弾、フレア発射、US-2の離着水はいずれも貴重なので見逃さないようにしたい
P-3Cからの対潜爆弾投下。爆弾は水中に潜ってから爆発する。艦底に「ゴン」という音と衝撃があり、続いて水柱が上がる
フレアを発射するP-1哨戒機(500~600mmで撮影)
フレアを発射するP-3C哨戒機(300mmで撮影)
US-2の離着水は迫力満点。ただし波高や風向によって行なわれない可能性もある
観艦式のラストを飾るのは航空自衛隊のブルーインパルス(400mmと70mmで撮影)

 以上の図で、例えば観閲艦「いずも」に乗った場合、(2)(4)(6)(7)いずれも見学に適しているのは「右舷」だということが分かる。「いずも」は全通甲板だが右側中央部に艦橋があるため、右舷が開けているのは艦の前方、または後方のみ。つまり「右舷前方」「右舷後方」がベストポジションと捉えることができる。特に艦艇や航空機の写真をたくさん残しておきたい場合は、自分が乗る艦のポジションを把握し、乗艦とともに最適な場所を見つけて確保しておきたい。

 観艦式終了後、艦隊は速度を上げてまっすぐ東京湾へ向かう。艦内散策もできるが、艦の前後を航行する多数の護衛艦を写真に収める絶好の機会でもある。非常に力強く頼もしい光景なので、ぜひ記録に残してほしい。

艦首から前方を望む
艦尾から後方を望む