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海上自衛隊、3年に1度の観艦式に向けた体験航海を相模湾で実施

体験航海は10月12日と15日、観艦式本番は18日

2015年10月12日 第1回事前公開(体験航海)

2015年10月15日 第2回事前公開(体験航海)

2015年10月18日 観艦式

 海上自衛隊は10月12日、10月18日に実施される「平成27年度自衛隊観艦式」の事前公開として一般応募者が護衛艦に乗艦しての「体験航海」を実施した。

 観艦式は、自衛隊最高指揮官である内閣総理大臣が海上自衛隊の艦艇、潜水艦、航空機などを観閲する行事。部隊の士気高揚、国際親善や防衛交流の促進、国民への自衛隊に対する理解を深めてもらうことを目的に、ほぼ3年に1度実施されている。

 海上自衛隊では10月18日の観艦式に向けて「Fleet Week」と称して、連日さまざまなイベントを実施中だ。横浜新港、横須賀港、木更津港 公共ふ頭において満艦飾や電灯艦飾、横浜港大さん橋での護衛艦「いずも」の一般公開(10月14日、17日)ほか、自衛隊艦艇の一般公開や各種イベントが行なわれている。詳しくは「平成27年度自衛隊観艦式」特設ページ内のイベント情報ページを参照されたい(http://www.mod.go.jp/msdf/formal/kankan/2015/fleetweek/)。

 今年の観艦式では、体験航海を10月12日、10月15日。観艦式を10月18日に実施。一般の乗艦応募は8月31日に締め切られ、当選者は横須賀、横浜、木更津の各港から指定の護衛艦に乗艦。ほぼ丸1日の体験航海へと出港した。ちなみに、横須賀、横浜には複数の岸壁から出港するため、乗艦場所はさらに細かく分けられている。

護衛艦「うらが」乗艦の集合場所となった横須賀港の船越岸壁入り口
観艦式に参加する掃海艇「みやじま」と「たかしま」
体験航海で乗艦できる護衛艦は船越岸壁の奥の方に停泊していた
今回乗艦取材をした護衛艦「うらが」
乗艦から出港までは1時間ほどあるが、場所取りはもちろん、艦橋を含めさまざまな場所を見学できるので時間を持てあますことはないだろう
同じく体験乗艦が可能な掃海母艦「ぶんご」と並んで停泊しており、うらがの甲板を通って乗艦する。ぶんごは一足早く出港していった
出港準備が始まるのと時を同じくして、後部甲板で佐世保音楽隊による演奏が行なわれた。出港時には、出港ラッパが吹かれたあと、行進曲「軍艦」を演奏する
乗組員が整列し、8時45分過ぎに離岸。後方では護衛艦「とね」も、ほぼ同時刻に出港した
横須賀港を出て、東京湾へ向かう。その間も甲板では舫いの収納など作業が続いていた
東京湾、浦賀水道を航海していると、普段は陸から見ているものが海から眺められる。写真左は富津沖の第2海堡、写真右は防衛大学校
横須賀、横浜、木更津の各港から出港した艦が集まってくる。ヘリコプターも頻繁に往来していた
うらがと同じ船越岸壁から出港し、うらがの後方を航行していた護衛艦「とね」が追い越し。このように航行中に陣形を整えていく

 観艦式は相模湾で行なわれ、内閣総理大臣が乗艦する観閲艦「くらま」を中心とした観閲部隊と、観閲付属部隊が2列で航行し、その間を観閲を受ける受閲艦艇部隊が航行する。海上自衛隊の艦艇、潜水艦など36隻、海上自衛隊のほか陸上自衛隊、航空自衛隊を含む航空機37機、船員などを含め8000名以上の隊員が参加している。

 艦艇や潜水艦は北海道の余市、青森県の大湊、京都府の舞鶴、広島県の呉、長崎県の佐世保の各基地から、10月9日以降より上記3港に停泊。航空隊は徳島県の徳島、広島県の岩国、長崎県の大村、鹿児島県の鹿屋の各基地からの部隊も含め、神奈川県の厚木、千葉県の館山、下総の各基地から出発して参加した。

くらまが、うらがを追い越していく
内閣総理大臣が乗艦する観閲艦には紅白の幕などが準備されている
くらまの後部甲板にヘリが着艦
先導艦となる護衛艦「むらさめ」、観閲艦となる護衛艦「くらま」が、記者が乗艦した随伴艦となる護衛艦「うらが」の前方を進む

 観艦式は相模湾で、観閲部隊が西へ進む形で進められた。各部隊の編成は下記のとおり。カッコ内は艦番号。本稿は、随伴艦のうらがに乗艦しての取材である。

●観閲部隊

観閲艦:
護衛艦(144)「くらま」
先導艦:
護衛艦(101)「むらさめ」
随伴艦:
掃海母艦(463)「うらが」、訓練支援艦(4203)「てんりゅう」、練習艦(3517)「しらゆき」、潜水艦救難艦(403)「ちはや」、護衛艦(176)「ちょうかい」
観閲付属部隊:
試験艦(6102)「あすか」、護衛艦(229)「あぶくま」、護衛艦(234)「とね」、訓練支援艦(4202)「くろべ」、護衛艦(173)「こんごう」、護衛艦(174)「きりしま」
観閲艦:護衛艦(144)「くらま」。2012年(平成24年)の観閲式に続いて観閲艦を務める
先導艦:護衛艦(101)「むらさめ」
随伴艦:訓練支援艦(4203)「てんりゅう」
随伴艦:練習艦(3517)「しらゆき」
随伴艦:潜水艦救難艦(403)「ちはや」
随伴艦:護衛艦(176)「ちょうかい」
「うらが」の後方を進む随伴艦隊
観閲付属部隊:試験艦(6102)「あすか」
観閲付属部隊:護衛艦(229)「あぶくま」
観閲付属部隊:護衛艦(234)「とね」
観閲付属部隊:訓練支援艦(4202)「くろべ」
観閲付属部隊:護衛艦(173)「こんごう」
観閲付属部隊:護衛艦(174)「きりしま」
●受閲艦艇部隊

旗艦:
護衛艦(177)「あたご」
受閲第1群:
護衛艦(172)「しまかぜ」、護衛艦(111)「おおなみ」
受閲第2群:
護衛艦(104)「きりさめ」、護衛艦(106)「さみだれ」
受閲第3群:
護衛艦(183)「いずも」
受閲第4群:
潜水艦(505)「ずいりゅう」、潜水艦(506)「こくりゅう」、潜水艦(592)「うずしお」
受閲第5群:
掃海母艦(464)「ぶんご」、掃海艦(302)「つしま」、掃海艦(303)「はちじょう」、掃海艇(601)「ひらしま」、掃海艇(603)「たかしま」、掃海艇(690)「みやじま」
受閲第6群:
補給艦(425)「ましゅう」、輸送艦(4001)「おおすみ」、LCAC(2101)、LCAC(2102)
受閲第7群:
ミサイル艇(826)「おおたか」、ミサイル艇(829)「しらたか」、ミサイル艇(827)「くまたか」
●祝賀航行部隊

護衛艦(107)「いかづち」

オーストラリア・フリゲート「STUART」

フランス・フリゲート「VENDE'MIAIRE」

インド・フリゲート「SAHYADRI」

韓国・駆逐艦「DAEJOYOUNG」

アメリカ・巡洋艦「CHANCELLORSVILLE」

アメリカ・駆逐艦「LASSEN」

(※海外艦艇は12日の体験航海に不参加)

受閲艦艇部隊が前方に現われ観艦式が始まる
受閲艦艇部隊旗艦:護衛艦(177)「あたご」
受閲第1群:護衛艦(172)「しまかぜ」
受閲第1群:護衛艦(111)「おおなみ」
受閲第2群:護衛艦(104)「きりさめ」
受閲第2群:護衛艦(106)「さみだれ」
受閲第3群:護衛艦(183)「いずも」
受閲第4群:潜水艦(505)「ずいりゅう」
受閲第4群:潜水艦(506)「こくりゅう」
受閲第4群:潜水艦(592)「うずしお」
受閲第5群:掃海母艦(464)「ぶんご」
受閲第5群:掃海艦(302)「つしま」
受閲第5群:掃海艦(303)「はちじょう」
受閲第5群:掃海艇(601)「ひらしま」
受閲第5群:掃海艇(603)「たかしま」
受閲第5群:掃海艇(690)「みやじま」
受閲第6群:補給艦(425)「ましゅう」
受閲第6群:輸送艦(4001)「おおすみ」
おおすみは陸上自衛隊の車両を積載して参加
受閲第6群:LCAC(2101)、受閲第6群:LCAC(2102)
受閲第7群:ミサイル艇(826)「おおたか」
受閲第7群:ミサイル艇(829)「しらたか」
受閲第7群:ミサイル艇(827)「くまたか」
祝賀航行部隊:護衛艦(107)「いかづち」。12日の体験航海では海外艦艇の参加はなかった
●受閲航空部隊

指揮官機
P-3C×1
受閲1群
SH-60J、SH-60K、UH-60J
受閲2群
MH-53E×2、MCH-101
受閲3群
AH-64D、CH-47×3(陸上自衛隊)
受閲4群
TC-90×3
受閲5群
P-3C×3
受閲6群
P-1×2
受閲7群
C-130R
受閲8群
F-2×3(航空自衛隊)
受閲9群
F-15J×3(航空自衛隊)
祝賀飛行:
P-8Aポセイドン(米軍所属)
祝賀飛行:
MV-22オスプレイ(米軍所属)
受閲艦艇部隊の通過後、航空部隊が飛来
指揮官機:P-3C×1
受閲1群:SH-60J、SH-60K、UH-60J(写真左は左からSH-60J、SH-60K、UH-60J。写真左は手前がSH-60K、奥がUH-60J)
受閲2群:MH-53E×2、MCH-101(写真左は両脇がMH-53E、中央がMCH-101。写真中央は左がMCH-101、右がMH-53E。写真右はMCH-101)
受閲3群:AH-64D、CH-47×3(陸上自衛隊所属)
受閲4群:TC-90
受閲5群:P-3C
受閲6群:P-1
受閲7群:C-130R
受閲8群:F-2(航空自衛隊所属)
受閲9群:F-15J(航空自衛隊所属)
P-8Aポセイドン(米軍所属)
MV-22オスプレイ(米軍所属)

 観艦式終了後、観閲部隊は進路を東に反転、訓練展示が行なわれた。訓練展示は、

  • 護衛艦しまかぜによる祝砲発射
  • 護衛艦きりさめ、さみだれ、おおなみによる戦術運動
  • 潜水艦ずいりゅう、こくりゅう、うずしおの潜航、浮上
  • LCACによる高速航行
  • ミサイル艇おおたか、くまたか、しらたかによるIRデコイの発射と高速航行
  • P-3Cによる対潜爆弾投下
  • P-1によるIRフレアー発射
  • 航空自衛隊ブルーインパルス(T-4×6機)による飛行展示

が行なわれた。

 観艦式、訓練展示終了後は、それぞれの艦が停泊地へ向け帰投。途中、観閲艦くらまが浦賀水道を通過する際には、観音崎砲台から21発の祝砲も贈られた。

先導艦むらさめ、観閲艦くらまが左へ回頭し、進路を東へ反転
うらがを含む随伴艦も続く
訓練展示を実施しない艦艇も隊列を組んで続いた
前方から訓練展示を行なう艦艇が近付いてくる
護衛艦しまかぜの5インチ単装速射砲からの祝砲
護衛艦きりさめ、さみだれ、おおなみによる戦術運動。一斉に向きを変える
潜水艦の潜航および浮上。写真はうずしおの潜行(写真左)と浮上(写真右2枚)
東日本大震災時の救援物資輸送にも活躍したことで知られる、エア・クッション型揚陸艇(LCAC)による35ノット(65km/h)での高速航行
ミサイル艇おおたか、くまたか、しらたかによる、対赤外線誘導弾ミサイル防御を行なうIRデコイの発射と35ノット(65km/h)での高速航行
P-3Cによる対潜爆弾投下
P-1によるIRフレアー発射
航空自衛隊ブルーインパルス(T-4×6機)による飛行展示
「デルタ360°ターン」
「さくら」
「ビッグハート」
観艦式や訓練展示の前後の航海は計4~5時間に及ぶが、音楽隊による演奏や救命胴着の着方、ロープの結び方、信号ラッパに関する説明会など、さまざまなイベントを行ない、長い航海を楽しめるよう工夫されている
訓練展示終了後、各艦艇はそれぞれの停泊地へ向けて帰投する
乗艦している「うらが」の後方を航行していたはずの「こんごう」や「くろべ」もいつの間にか前方を進んでいた
観閲艦の「くらま」に向けて、観音崎砲台からの祝砲が発射された
綺麗な隊列を組んで浦賀水道を通過する艦艇
うらがの後方には、受閲艦艇部隊の旗艦を務めた「あたご」が続いていた
浦賀水道では一般の船舶もまるで隊列を組むかのように並んで通過
横須賀港が近付き艦を西へ向けたところ
10月12日の一般公開が大変な話題となった米海軍の空母「ロナルド・レーガン」の姿もチラリ
後部甲板では舫いなど着岸準備が始まった
港内ではタグボードに押されて進む
デッキに並んで着岸の準備。舫いを投げる順序を指示したうえで地上へ放つ
地上でスタンバイしていた隊員が舫いを固定
甲板で舫いを引っ張るのは単に力任せの作業ではなく、前方と後方のテンションを調整して、岸壁と並行に艦が固定されるよう緻密に行なわれていた
観艦式に参加したほかの艦艇も続々と帰投
朝の7時30分過ぎに乗艦して約10時間を「うらが」で過ごす。降りるころには艦が夕焼けに染まっていた

(編集部:多和田新也)