ニュース

JR東海、リニア中央新幹線の名古屋駅新設工事を公開。2027年品川~名古屋開業に向けて工事桁を架設

2019年8月8日 公開

リニア中央新幹線の名古屋駅新設工事(中央東工区)の一部、工事桁の架設を公開

 JR東海(東海旅客鉄道)は8月8日、「リニア中央新幹線」の名古屋駅新設工事(中央東工区)の一部を報道陣に公開した。

 リニア中央新幹線は超電導磁気浮上方式を採用したリニアモーターカー(最高時速505km)によって東京~大阪間を結ぶ新規の路線で、総工費は9兆300億円の巨大事業。当初の計画では品川~名古屋間の開業は2027年、大阪までの全線開業は2045年を予定していたが、名古屋開業後は連続して大阪への工事に着手し、全線開業までの期間を最大8年前倒すことを目指している。

 リニア中央新幹線の名古屋駅は地下30~40mの深さに東西に渡って設置され、南北に伸びる現在の名古屋駅に直交するような形になる。工区は西側(大阪側)から「西工区」「中央西工区」「中央東工区」「東山線工区」の4つに分かれており、中央西工区と中央東工区は工事が始まっていて、東山線工区も工事準備に着手している。中央西工区が新幹線部、中央東工区が在来線部になる。

 中央東工区の工事の概要は3つに分けられる。まず、仮受準備工として工事桁と仮土留杭を設置して掘削してもレールが落ちないようにする。次に地中連続壁工・本体柱工として地中連続壁の設置と本体柱を設置することで地下駅の大枠を造成する。掘削したあと、受替工・本体構造物構築工・埋戻工によって本体構造物を構築し、工事桁の撤去と埋め戻しを行なって線路を復旧する。

 今回公開された工事はこの仮受準備工の工事桁を2番線に搬入して1連架設するもの。在来線の2番線から稲沢線までの73連を工事桁に変更していくわけだが、現在は稲沢線と3番線の11連と2番線の1連が工事完了している。

工事桁の施工手順を示したスライド
8月8日の工事桁架設の作業スケジュール(参考)

0時20分ごろ: 線路閉鎖、き電停止
0時30分ごろ: 軌道撤去
0時50分ごろ: バラスト撤去、掘削
1時30分ごろ: 工事桁搬入
2時20分ごろ: 工事桁架設
3時50分ごろ: 軌道復旧
5時10分ごろ: 線路閉鎖、き電停止解除

 おおよその工事スケジュールは上記のとおりだが、2番線は現在使用が停止されているので、軌道撤去とバラスト撤去・掘削は前日までに行なわれており、当日は工事桁の搬入と架設までを見学できた。工事桁は長さ約13m、幅約3m、高さ約0.8mの鉄製で、重量が約23トンある。工事桁を載せた保守用車は2番線の隣である3番線に入線し、架設場所まで移動。隣接する線路がある場合は「横取り」という方法で架設される。この場合は3番線から2番線に架設機が移動できる仮レールを設置し、工事桁を吊るした架設機をゆっくりと移動させ、目的の場所で工事桁を降ろして据え付けられる。

今回の工事で工事桁を架設する2番線の一部。すでにバラストやレールが撤去されている
3番線に入線してきた工事桁を載せた保守用車
重さが約23トンある鉄製の工事桁。これを従来のレールの代わりに据え付ける
保守用車の編成を示した図
レールに散水する水タンク
250トンまでけん引可能なモーターカー
架設機
架設場所の横まで移動した保守用車
架設機を移動させるための仮レールを組み立てる。工事桁の架設は約30人のスタッフで行なわれる
工事桁を吊るした架設機を2番線まで移動させる。約4.3mの距離を安全を確認しながらゆっくりと運ぶ
約3分ほどかけて工事桁を架設地点まで運搬
吊るしてある工事桁を降ろして架設する。このあとは受桁に固定し、軌道の復旧作業などを終えて工事は完了

 工事を担当しているJR東海の愛知工事事務所の所長である加藤均氏は、大規模な駅の地下に新しい駅を新設する難度の高い工事であるが、地元の理解もあって現在のところは順調に進んでいるとコメント。今後も安全を第一に、周囲への配慮を怠らずに工事を進めていくと話した。

東海旅客鉄道株式会社 中央新幹線建設部 名古屋建設部 愛知工事事務所 所長 加藤均氏