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東京メトロとNTT、東京2020大会に向けて交通混雑緩和などで協業。混雑状況の予測・可視化で円滑輸送へ

2019年7月29日 実施

東京メトロとNTTは東京2020大会の交通混雑緩和などで協業する

 東京メトロ(東京地下鉄)とNTT(日本電信電話)は7月29日、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)以降に向けて、交通混雑緩和などで協業することを発表した。

「インフラの安全・安定性の向上」「移動の円滑性向上」「東京の魅力・活力の共創」という3つのテーマを設定しており、両社それぞれの資産を掛け合わせて推進に取り組む。

 東京メトロは中期経営計画「東京メトロプラン2021」において、鉄道インフラ保全のための監視技術の開発・導入、大規模イベント時の輸送対応、新たなモビリティサービスの実現などを掲げており、一方NTTも中期経営戦略「Your Value Partner 2025」において、情報通信インフラ保全のためのデジタル技術活用、モバイルデータを活かした地域経済振興、AI/IoT技術によるスマートモビリティの提供を挙げるなど、交わるところが多い。

 東京メトロ 代表取締役社長の山村明義氏は、両社がそれぞれ持つ資産を掛け合わせることで、「働きやすく、暮らしやすく、楽しめる東京を作りたい」と協業の背景を説明する。

東京地下鉄株式会社 代表取締役社長 山村明義氏

 東京2020大会まで1年を切ったことで関心が高まっているのは、3つのテーマのうち「移動の円滑性向上」だろう。

 大会期間中の混雑緩和に向けて、東京メトロでは列車の増発や駅員の増配置などを実施するが、各駅の混雑予想、駅間混雑情報などを可視化・発信する交通需要マネジメント(TDM:Transportation Demand Management)でNTTの技術を活用する。

 具体的には、東京メトロの入出場記録にモバイルデータを掛け合わせて駅間混雑度予測に活用するとしており、すでに目的地までの最適な出口案内などは実施しているが、人の流動・混雑をリアルタイムに把握できるようになることで、混雑を回避した最適ルートの案内なども可能になるという。東京メトロでは、共同実証などを通じて得られる知見を今後の最適化に活かし、大規模イベント時などの円滑輸送を実現できるとみている。

交通混雑緩和の取り組み

 なお、3つのテーマのうち「東京の魅力・活力の共創」は、出発地から到着地までさまざまな交通手段を一元的かつシームレスに提供する「モビリティ連携」を指しており、具体的にはNTTドコモが都心の一部で展開するシェアサイクルが鍵を握るという。NTT 代表取締役社長の澤田純氏によれば、ドコモのバイクシェアは月100万回の利用があり、2018年は810万回の利用実績がある。出発地から駅まで、あるいは駅から目的地までといった電車移動を補完するモビリティを用意することで、「東京の街の魅力向上に資するようなインフラを整えていく」という。

日本電信電話株式会社 代表取締役社長 澤田純氏
モビリティ連携

 最後のテーマ「インフラの安全・安定性の向上」は、東京メトロの車両や線路など、鉄道システム運営についてのもの。これまで時間基準保全(TBM:Time Based Maintenance)を行なってきたが、同一の設備であっても使用状況や頻度が異なり偶発的な故障などを予期しづらい、状態監視技術の不足により、設備寿命から乖離した時期に修繕や更新が必要になる、対応に当たる現地社員の経験や知識などに頼りがち、一度故障すると長時間の輸送障害になるといった問題をはらんでいた。

 これを状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)に変えて、NTTと協働でIoTやAI、ビッグデータによる稼働状態監視を行なうことで、故障予知や寿命予測、保全の効率化などが行なえるという。

インフラ保全の取り組み

 今回掲げた3つのテーマはいずれもまだ具体的なサービスや実証実験には至っていないものの、両者の連携によって「国内外に展開できるモデル作り」を目指すとしている。