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全国の「写真映えスポット」で絵はがきを作って・送れる日本郵便の「ポストカー」出発。小山薫堂氏「直筆の手紙を受け取った人は幸せ」
2019年7月19日 15:16
- 2019年7月19日 発表
日本郵便は7月19日、手紙交流の価値を見直し、新たな可能性を探る「&Post(アンド・ポスト)」プロジェクトの一環として、7月19日から「ポストカー」の運行を開始することを発表。同日、日本郵便の商業施設であるKITTE(東京・丸の内)で出発式を行なった。
&Postプロジェクトは4月にスタートしたもので、手紙をとおしてコミュニケーションすることを見直し、新たな価値を探るもの。ポストがつなぐ手紙の本質を紐解き、価値や魅力を引き出すことを目的としている。
ポストカーの出発式には、その&Postプロジェクトのプロデューサーを務める放送作家の小山薫堂氏があいさつ。「放送作家としてのキャリは18歳にスタートしたが、最初の仕事がラジオのリスナーから届くはがきを整理することだった。全国のリスナーの皆さんが思い思いにラジオへの感想や企画、ネタを書き、それをADとしてまず最初に見る仕事だった。会ったこともない人だが、手紙の文字を見ると、その人の雰囲気や個性がなんとなく伝わってきて、一方的ではあったが、たくさんの人とつながっているような印象を受けながら仕事をしていた。50歳のときに僕は人生のハーフタイムと称して、世界一周の旅を1か月かけて行なったが、旅先ごとに絵はがきを探して、社員にメッセージとして送った。それによって安否を社員が知る。でも、たった1枚のはがきだがいろいろな思いが伝わっていたと思う。直筆で人に思いを伝える文化を大切にしたい。手紙のコミュニケーションの価値を改めて発信したい、それが&Postプロジェクト」と、&Postプロジェクトの背景にある思いをコメント。
ポストカーについては、「もっとも実験的な挑戦」であるとし、「2万4000局の郵便局の皆さんが1つにつながる。それぞれの心を1つにつないで、世の中をもっと元気していく。そういう挑戦」と紹介。
そして、「言ってみれば動く郵便局、動くレタールーム。これが日本全国、2万4000局ある郵便局のどこかに行く。そして移動郵便局として人々の前に姿を現わし、特別なはがきを販売したり、いろいろな風景を絵はがきにするサービスをしたりする。ポストカーが各地に赴くことで、地域創生にもつながるのではないか」と話した。
さらにポストカーのデザインについて、「見た目にもなかなかかっこいい。これによって、いままで手紙を出したことのないお子さんも近寄ってきてくれるのではないか。ここに集まったいろんな方々がコミュニケーションして一つの出会いとなり新しい何かが生まれたら」といった期待を述べ、「どんな場所で、どんな出会いが生まれ、どんな化学反応から人々の感動が生まれるのか見守っていただければ」と思いを述べた。
また、ポストカーに対しては、「手紙を書くということは、誰かを思うこと。誰かを思うということは、思われた人は幸せになる。手紙を受け取った人は、自分が思われていると感じて幸せになる。つまり手紙は幸せを想像する文化だと思う。手紙というものをポストカーによって、一人でも多くの人がその価値を見直して、誰かに出そうと思っていただけたらうれしい。そのきっかけになったら、このポストカーを作った甲斐がある」との期待を寄せた。
続いて、日本郵便 東京中央郵便局長の金児博幸氏が登場し、それまでベールに包まれていたポストカーをお披露目。「第1回目の運行を担当させていただくことを光栄に思っている。全国の郵便局がつながって、お客さまに心に残る手紙の体験をできるよう努めていく」と話すとともに、「いまここにしかない気持ち、情景といったものをはがきを通じて誰かに届ける、そんなお手伝いをさせていただく。それを通じて、我々自身が手紙、はがきの持つよさに改めて気付きたい。また、東京も一つの地方であり、日本のランドマークでもある。この地域のよさをはがきを通じて発信できればと思う」と意気込みを述べ、ポストカーで実施するサービス内容について紹介した。
ポストカー車両は、トヨタ自動車のピックアップトラックであるハイラックスのシングルキャブモデルをベースにしたもの。デザインは「手紙やはがきが持つ温かさをイメージ」したというクラシックなデザイン。ポストカーの名のとおり赤色を基調としているのはもちろん、後部にはポストをイメージした造形も施される。また、車両最前方のエンブレムは日本郵便のキャラクターである「ぽすくま」をイメージしたものになっている。
後部の荷台に積まれたコンテナは、ドアを開くと窓口とポストが現われる。実際に各地の郵便局の局員が「絵はがきコンシェルジュ」として窓口に立ち、はがきを出す案内や、絵はがきや切手の販売を行なう。コンシェルジュの帽子やエプロンは専用にデザインされたもので、小山氏は「それぞれの地域の郵便局員の方がお入りになるので、誰が入るのか、それぞれの郵便局で争奪戦になるか、譲り合いになるか(笑)」と期待を込めて話した。
ポストカーでは、撮影した写真をその場で絵はがきにするサービスや、「&Post」オリジナルデザイン絵はがきの無料提供、運行先に関連した絵はがきや季節ごとに発売する絵はがき・切手の販売を行なう。
絵はがきに記入するためのテーブルや文房具も用意。文房具はじっくり書ける万年筆や、はがきを彩るマーカー、子供も楽しめるスタンプや色鉛筆などを用意する。金児氏は「手書きの楽しさを体感いただけるラインアップをそろえるのでお楽しみに」と呼びかけた。
そして、アンティークなデザインのポストには投函口を3つ備える。宮崎県のフェニックス・シーガイア・リゾートにある「未来への手紙」「大切なひとへの手紙」「あてのない手紙」という3つの投函口を備えたポストが有名だが、このポストカーも似たように宛先によって投函口を分けている。
ポストカーが備えるのは以下の3つの投函口となる。
誰かへの手紙: 家族や友人などに宛てる通常の手紙
自分への手紙: その日の記念に自分に宛てて出す手紙
宛先のない手紙: 誰に宛てるでもない思いや、言えない思いを宛先を書かずに出す手紙
「誰かへの手紙」と「自分への手紙」は普通郵便として郵送。「宛先のない手紙」は日本郵便が収集し、その一部をKITTEの4階にある旧東京中央郵便局長室に展示する。先述した無料提供する&Postオリジナルデザイン絵はがきも、普通郵便用と「宛先のない手紙」用の2種類を用意している。
ポストカーは月に1か所を目途に、全国の「絵はがき映えする」スポットを巡回。まずは7月19日~20日に「体験会」としてKITTE(Googleマップ)の1階アトリウムでサービスを開始する。開催時間は19日が12時~18時、20日/21日の両日が11時~18時。
KITTEでの体験会は東京中央郵便局が担当し、4階の旧東京中央郵便局長室で絵はがき作成サービスを実施。東京駅を眼下に望むアンティークな部屋で撮影した写真を絵はがきにできる。
ポストカーそののち、8月2日~3日に新潟県で行なわれる長岡花火大会に運行(長岡郵便局が運営を担当)し、9月1日に、富山市で行なわれる「おわら風の盆」へ運行する。その後の具体的な運行地情報は、順次「&Post公式Webサイト」で発表していく。