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観光庁、令和元年度版「観光白書」公表。2019年度内にほぼすべての新幹線へのWi-Fi整備や「大本営地下壕跡」公開準備実施
10月からはキャッシュレス決済端末の導入補助などの支援開始
2019年6月24日 20:40
- 2019年6月21日 発表
観光庁は6月21日、同日閣議決定された観光白書(「平成30年度観光の状況」「令和元年度観光施策」)をWebサイトで公表した。2018年度の観光動向や、観光による経済効果、2018年度に講じた施策、2019年度に講じようとする施策の4部で構成される。
2018年度の観光動向としては、2018年の国際観光客が前年比5.6%増の14億3000万人となり、アジア太平洋地域のシェアが伸びているとのUNTWO(国連世界観光機関)資料に基づくデータを紹介。日本へのインバウンドは既報のとおり過去最高の3119万人となり、2017年の外国人旅行者受入数ランキング(UNWTO資料)に当てはめると世界で11位に相当する数となったほか、国際観光収入は411億ドルで同様に2017年ランキングに当てはめると世界で8位に相当することを提示。訪日外国人による旅行消費額は過去最高の4兆5179億円となった。
外国人の延べ宿泊者数は全国平均で11.2%増。地域別に見ると、東北地方が34.7%増、中国地方が21.6%増と高い伸びを示したほか、北陸信越、中部、近畿、四国、沖縄で全国平均を上まわった。一方、2018年に大きな自然災害に見舞われた北海道や九州ではそれぞれ6.2%増、2.1%増と伸びが弱い。白書では、特に地震被災地で外国人の宿泊者数の落ち込みが顕著であるとする一方、自然災害後の落ち込みは「ふっこう割」などの効果などで短期間で回復が見られたとしている。
日本人の旅行動向については、出国日本人数は3年連続の増加となる前年比6%増の1895万人。一方、国内宿泊旅行者、国内日帰り旅行者はいずれも前年を大きく下まわり3億人未満となった。国内旅行消費額も前年比3%減の20.5兆円となっており、訪日外国人旅行者と合わせて26.1兆円、訪日外国人旅行者による消費額シェアは17.3%まで伸びた。
2019年度に講じる予定の施策としては、「外国人が真の意味で楽しめる仕様に変えるための環境整備」「地域の新しい観光コンテンツの開発」「日本政府観光局と地域(地方公共団体・観光地域づくり法人)の適切な役割分担と連携強化」「地方誘客・消費拡大に資するその他主要施策」を提示。
観光地の環境整備では、観光地の多言語対応やキャッシュレス対応、無料Wi-Fi整備をモデル的にただちに整備することを挙げ、2019年度中に少なくとも50程度、2021年までに100の主要観光地を抜本的に改善。
キャシュレス環境の改善については、2019年3月末時点で2020年目標を達成した海外発行カード対応ATM設置の取り組みを引き続きフォローアップ。また、2019年10月から実施する「キャッシュレス・消費者還元事業」で端末導入補助や手数料引き下げ措置などの支援や、中小・小規模事業者の店舗でキャッシュレス決済を行なった諸費者へのポイント還元に対する支援により、消費者に利便性を実感するきっかけ創出。また、本事業を活用することで、商店街や地域といった面でキャッシュレス決済を導入する取り組みを支援するなど、地域全体でのキャッシュレス決済を推進する。
通信環境については、防災時の情報伝達手段としての観点でも導入を進めるとし、2019年度までに約3万か所の防災拠点などにおける整備を加速。
交通機関においても、2019年度中にほぼすべての新幹線車両で無料Wi-Fiを整備するとともに、利用者の多い在来線特急でのサービスを拡充。2020年までに新幹線トンネルの全区間において携帯電話を利用できるようにするとともに、在来線トンネルについても対策を実施する方策について検討し、2019年夏ごろまでに結論を得るとしている。
このほか、観光地開発においては、公的施設やインフラツーリズムをさらに促進。2020年4月下旬を目処に迎賓館赤坂離宮前の公園にカフェ施設を開業するほか、新宿御苑や皇居東御苑などで開園時間を延長。
また、2020年度から防衛省が実施している市ヶ谷台ツアー(市ヶ谷地区見学)に「大本営地下壕跡」(東京都新宿区)を組み込むために、2019年度内に地下壕跡の整備・改修に必要な工事や、展示物・パンフレットの作成などの準備を行なうとしている。