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NTTドコモ、沖縄でICTセミナー開催。5Gを活用、自動翻訳やAIで観光・交通の課題を解決する
2019年5月28日 21:03
- 2019年5月22日 実施
NTTドコモは5月22日、3回目となる「ICTセミナー in 沖縄」を那覇市内のホテルで開催した。
新技術や新サービスを紹介する展示は、5G関連をはじめ自然保護関連、健康関連、働き方改革関連、観光関連、交通関連、一次産業関連、教育関連など多岐にわたり、多くの来場者の関心を集めた。
開会式では、NTTドコモ 取締役常務執行役員の古川浩司氏が開会あいさつ。「沖縄には今年1月、東京、大阪に続いて3番目の5Gオープンラボを開設した。これまで700名を超える方が見学・利用している。
昨年(2018年)、沖縄振興推進重点取り組み6分野を発表した。そのなかの1つが自然・文化保護推進。自然保護については行政のみならず企業からの働きかけも必要と考え、『世界自然遺産推進共同企業体』に参加している。本社の5G・IoTソリューション推進室のなかに世界自然遺産推進チームを置いている。本社、沖縄支店、九州支社一丸となって世界自然遺産登録推進に貢献していきたい」と沖縄での活動状況を紹介した。
続いて内閣府 沖縄総合事務局次長の仲程倫由氏が登壇。「沖縄経済は好調である一方、所得水準が低く、人手不足などの課題がある。それらに対応するためにも、生産性向上や働き方改革にICT関連企業の役割は大きいと考える。沖縄総合事務局としても、5G・IoTなどを積極的に利用しICT産業の振興を推進していきたい」と言葉を寄せた。
そして特別講演では、元なでしこジャパンの澤穂希氏が登壇。「夢はみるものではなくかなえるもの ~あきらめない気持ち~」をテーマに、対談形式で講演を行なった。話のなかでは、沖縄には修学旅行をはじめ選手時代のキャンプや遠征などでも数多く訪れたことも触れられた。また、沖縄で盛り上がっているFC琉球をはじめとしたプロスポーツについても期待を寄せ、子供たちがプロ選手と関われるチャンスが増えるとよいとアドバイスした。
NTTドコモの5G・通信関連技術と観光、交通
展示内容は前述のとおり多岐にわたっており、そのなかから観光関連、交通関連についてレポートする。
おしゃべり案内板
タブレットを使った対話型の案内板。日本語、英語、中国語、韓国語に対応している。沖縄では、那覇バスターミナルで乗り換え案内として導入中とのこと。バスターミナルのほか、空港や港、観光案内所などでの導入も有効だろう。
my daiz(マイデイズ)
専用アプリ「my daiz」をダウンロードし、現在地やプロフィールに基づいた情報を届けてくれるサービス。沖縄県では南城市が情報を提供しており、観光スポットやイベント情報などを配信しているとのこと。
はなして翻訳
英語、中国語、韓国語ほか12か国語に対応した翻訳アプリ。直接の会話や電話での会話を、互いに母国語で話してもアプリを介して翻訳してくれる。ホテルや飲食店、土産店、観光スポットなどでの活用が期待される。
有料のオプションサービスでは、店舗ごとにカスタマイズした定型文が作成できたり、毎月の利用状況を把握できるレポートが作成可能だったりなど、マーケティングに活かすことができる。
インバウンド向け母国語案内サービス
ビーコンを利用した母国語案内サービス。使用する言語を指定したビーコンを顧客に携帯してもらい、タブレットなどの案内端末がビーコンを受信し指定された言語で案内をするもの。
ホテルのルームキーとともに渡して、客室内の案内端末を顧客の母国語で表示させるなどのサービスが可能になる。
また、ビーコンの数から混雑状況をリアルタイムで通知する機能などへも応用可能。
ユーザーが端末操作などをする必要がないのが最大の利点。シニア世代の顧客などにも有用だろう。
モバイル空間統計
ドコモの携帯電話ネットワークを利用した人口統計情報である「モバイル空間統計」を利用したデータ提供サービス。どのような属性の人が、どこにどのくらいいるのかを把握できる。
国内のドコモユーザーはもちろん、訪日外国人でも約750万台のドコモユーザーがあり、訪日外国人の観光行動の分析にも役立つ。
来訪者管理アプリ
タブレットを使ったアンケート収集システム。システムとしてはとてもシンプルで、選択肢をタップしてもらい顧客データを収集するもの。
離島などでは来島者の属性データを収集したいというニーズが多いが、記入式アンケートではなかなか回答が集まらないという。4月から伊是名村役場で導入され、沖縄本島から伊是名島へ渡る今帰仁村運転港に設置している。操作が簡単なので、乗船券の発券を待つ間に手軽に回答してもらえているとのこと。
ICTブイ
ICTを利用し、海の水温や塩分濃度を計測、データ収集できるシステム。
漁場において重要データである水温や塩分濃度を、これまで手作業で実測していたものを自動化でき、作業者の労力軽減、燃料コスト節約などのメリットがある。現在、糸満市の漁場にて実証実験中。海ぶどうやアーサの収穫のためのデータ蓄積を行なっているとのこと。
AIタクシー
AIを利用してタクシー需要予測を行なうシステム。需要が高まりそうな場所が把握できるため効率的な運行ができる。
ユーザーにとっても、乗りたいときに乗りやすいというメリットがある。すでに東京では導入実績があり、沖縄においてもタクシーは日々の足として高い需要があるので導入メリットは大きいのでは。
AI運行バス
固定ダイヤやルートでの運行でなく、乗客のリクエストによってAIが最適なルートを算出して運行する乗り合いバス。
交通不便地での活用や、観光地などの周遊の足などで活用が見込まれ、すでに神戸市や九州大学、横浜市のみなとみらい・関内エリアなどで実証実験を行ない、九州大学では商用サービスが始まったとのこと。
沖縄に非常に適したシステムだと感じた。路線バスでカバーしきれない地域の新しい足として、また離島などでも導入を期待したい。
そのほか、アクティビティやレジャー関連のデモンストレーションとして、筋変位センサー搭載コントローラとVRを組み合わせた「東村カヌーバーチャル体験」、5GとAIを活用した「沖縄マリンレジャーパトロール」などが展示されていた。
実際に沖縄県内でもいくつかの技術が実証実験中であることを知り、日々の生活や観光業界に新風が吹きつつあることを感じた。観光関連分野では、多言語対応などインバウンドに対応する技術が多く見られた。沖縄県の課題として二次交通の弱さが挙げられるが、この辺りにも課題解決につながるような技術もあった。
実際、NTTドコモ 古川常務へのインタビューでも「交通渋滞など課題が多いと聞いている。この分野にもAI運用バスや、すでに導入していただいているバイクシェアなどで貢献していけると考えている」と語ってくれた。また、おもしろい案として、「祭りのリアルタイム配信で、遠隔地でもその場にいるような感覚で一緒に盛り上がれるようなこともできるのではないか」とのことだった。