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オリエンタルエアブリッジ、軍艦島や大浦天主堂などの上空を遊覧飛行。空の上での生演奏も

「空の日フェスタ in NAGASAKI」に合わせて実施

2018年9月29日 実施

オリエンタルエアブリッジが軍艦島などの上空を飛ぶ遊覧飛行を、「空の日フェスタ in NAGASAKI」に合わせて実施した

 ORC(オリエンタルエアブリッジ)は9月29日、長崎空港で行なわれた「2018 空の日フェスタ in NAGASAKI」に合わせて、軍艦島など長崎県上空を飛ぶ遊覧飛行を実施した。9月7日まで参加者を募集していたもので、約240通の応募から抽選で選ばれたペア14組28名が参加した。

 長崎県といえば、2018年6月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」がユネスコの世界文化遺産に登録されたばかり。2015年に「明治日本の産業革命遺産」が登録されたことも記憶に新しく、数々の世界遺産を楽しめる県だ。

 その長崎県を拠点とする地域航空会社であるORCによる遊覧飛行は、長崎空港を発着し、軍艦島や世界遺産が集まる長崎市内上空を周回するというコース。イベントフライトならでの数々の演出が機内を盛り上げた。

長崎空港 国際線チェックインカウンター前に特設カウンターを設置して受け付け。参加者が続々と集まった
搭乗券
搭乗口に表示された行き先は「長崎」。「空の日遊覧フライト」の案内も表示された

 遊覧飛行は長崎空港の1番搭乗口から出発。搭乗口前には記念撮影用のパネルのほか、長崎県五島市出身のヨシノサツキ氏のマンガ「ばらかもん」とコラボレーションしたポスターなどを掲示。

 搭乗前には、ORC 代表取締役社長 日野昭氏があいさつし、「こんな天気でフライトできるか心配だったが、皆さまの願いがかなったようで、無事に遊覧飛行できる。非常に多くの方からご応募いただき、実は240通から選ばれた、すごい運をお持ちの方々」と話し、空の上での生演奏があるなどイベントの内容を紹介。「ちょっと雲があるが、楽しんでいただければ」と言葉を送った。

 日野氏の言葉にもあるとおり、この日の長崎空港は台風の影響で厚い雲に覆われ、時折雨も降るあいにくの天候。オープンスポットでの搭乗のため、参加者は傘をさして飛行機へ。

 同社が運航しているボンバルディア Dash 8-200型機は、1列目と2例目のCDは向かい合わせの席になっている。その向かい合わせの席を使い、長崎OMURA室内合奏団に所属するヴァイオリンの齊藤享さん、クラリネットの樋口芳美さんが、ORCのボーディングミュージックである「夢飛行」を生演奏して出迎えた。

搭乗口では記念写真を取れるフォトスペースを用意
CA(客室乗務員)も一緒に記念撮影に応じた
出発を前にオリエンタルエアブリッジ株式会社 代表取締役社長 日野昭氏があいさつ
参加者の搭乗を待つORCのボンバルディア Dash 8-200型機
搭乗時は雨模様。傘をさして飛行機へ
長崎OMURA室内合奏団に所属する齊藤さん、樋口さんが、「夢飛行」を演奏してお出迎え
CAによる歓迎のあいさつ

 出発の準備が完了し、いよいよ出発時刻に。離陸の前には機長の西山氏が飛行経路を説明したのち、参加者1組1組の名前を呼び上げて搭乗を歓迎。「今日は揺れが見込まれるが、どんなに揺れても、私たちが皆さまの安全をお守りする。今日は皆さんで楽しんで、よい思い出を作りましょう」とあいさつ。この1組1組の名前を呼び上げたことについて西山機長は、フライト後のインタビューで「いつもと違うフライトなので、お客さまの名前を呼びたいと思って。私の個人的な希望」と理由を話した。

 そして、離陸。まずは北へ向かい、ハウステンボスの上空を通過していく飛行ルート。ここから最初の目的地である軍艦島へ向かうまでの間に、長崎OMURA室内合奏団の齊藤さんと樋口さんがAKB48の「365日の紙飛行機」と、天空の城ラピュタのエンディング曲である「君をのせて」の2曲を演奏。機内にいるのは乗務員を含めても30名ちょっと。その少人数のためだけの特別な演奏が、目的地へ向かうまでの室内を盛り上げた。

遊覧飛行に出発。まずは北へ向かい、ハウステンボスの上空を飛行
機内サービスではORCの尾翼をデザインしたものなど3種類の雨が入ったキャンディーセットを配布。通常便のCAは1名のみだが、遊覧飛行では2名が乗務した
長崎OMURA室内合奏団に所属するクラリネットの樋口芳美さんと、ヴァイオリンの齊藤享さんがあいさつ。軍艦島上空へ向かうまでの機内に生演奏の音色が響いた
今回のルートマップ。ORCではCAが手書きした観光パンフレットを配布しているが、今回の遊覧飛行のためにも手書きのルートマップを作成した
こちらが通常のフライトでもシートポケットに入れている手書きマップ「ORC CA Handmade Map」。これまでに4種類が作られたそうで、今回のシートポケットには日本遺産編が入っていた

 そんな時間を過ごすうちに、副操縦士の林氏から「軍艦島まであと約3分」とのアナウンス。「300m上空を旋回する予定。はじめに左側のお客さまにご覧いただけるように左側に旋回。そののち、右側の席のお客さまにお楽しみいただけるように右に旋回する」と説明した。

 軍艦島上空では雲の影響もなく、まず左旋回しながら軍艦島を周遊。軍艦島のまわりを1周したのち、今度は右旋回で同じように360度。乗客みんなが窓に顔を近付け、空からしか見られない軍艦島の顔を楽しんでいた。

 ちなみに、このときにランディングギアを出して飛行していたのだが、これは最小半径で軍艦島のまわりを旋回するためにフラップもギアを降ろすことで、速度を抑えるためのものだという。Dash 8-200型機は胴体の上側に主翼が付く高翼機なので、席に関わらず飛行機下方の景色を見やすいのもうれしい。

軍艦島が近づく。手前が長崎市。天気がよければ奥に雲仙岳を望める位置
軍艦島の北側にある高島
いよいよ軍艦島が見えてきた
軍艦島の近くを周回。写真右のようにランディングギアを出したまま速度を落として飛行し、小さい半径で軍艦島のまわりを1周した
窓に顔を近付けて軍艦島を楽しむ参加者
手前が軍艦島、奥に見えるのが長崎市内

 その後は長崎市内上空へ。こちらも世界遺産の多い場所だ。軍艦島と同様、右側席、左側席の両方の人が楽しめるようなルートで上空を2度飛行。

 地元からの参加者にとっては慣れ親しんだ場所を空から見ることでもあり、機内では「あそこが……」と親子で語り合いながら楽しむ姿も見られた。

続いては長崎市内上空へ。長崎市も世界遺産が多く集まっている場所。写真左は「「明治日本の産業革命遺産」の構成要素の一つである長崎造船所
最初の飛行は左側の窓から長崎市内がよく見えるように通過。その後、右側座席の参加者がよく見えるように再び長崎市内上空を飛行
長崎市

 軍艦島、長崎市内それぞれの上空を楽しんだあとは長崎空港へ。ここで西山機長からのアナウンス。「ここで、私たちからのサプライズ。が、皆さまのご声援または拍手の量でやる内容が変わってくる」と呼びかけ、一同拍手や「ありがとー」の声が機内に響く。

 そのサプライズとは、滑走路のローパス。滑走路上を低空で通過して再び上空へ向かった。そして、左旋回して長崎空港へ進入し、あらためて着陸した。

 駐機場へ向かうまでの地上走行中にも、長崎OMURA室内合奏団がアンパンマンマーチを演奏。参加者も手拍子で盛り上がりながらフライトを終えた。

「声援と拍手の量でサプライズの内容を変える」との機長からのアナウンスに客室では拍手の嵐
サプライズで滑走路をローパス
再度上昇したのち左旋回して長崎空港の西側を飛行。再び滑走路へ向かい、今度こそ着陸した
地上走行中はアンパンマンマーチの演奏
フライトを終えた機長

 到着口では、遊覧飛行を終えた参加者を代表取締役社長の日野氏らがお出迎え。最後に、出発前に撮影した参加者全員の集合写真を添えた搭乗証明書などの記念品がプレゼントされた。

到着口で代表取締役社長の日野氏らが集まってお出迎え。記念品をプレゼントした
贈られた記念品。「ばらかもん」とのコラボグッズや、ご当地ヒーロー「イキツシマン」のお菓子、フライトタグやボールペン、ステッカーなどのORCグッズ、長崎バージョンの「ORC CA Handmade Map」など。搭乗証明書の内側には出発前に撮影した参加者の集合写真も貼られている

 最後に、遊覧飛行を担当した機長の西山氏と副操縦士の林氏に話を聞いた。

 西山機長は「全パイロットが遊覧飛行をできる技量を持っているが、なぜが自分に当たる率が高い(笑)」と、遊覧飛行もベテランのパイロット。「飛ぶ経路などの組み立ては機長によって異なると思うが、安全を担保しながら最高の楽しさをお客さまに届けられるようなフライトを心がけている」と、西山機長ならではの創意を含めているという。

 あいにくの天候だったが、軍艦島や長崎市内がきれいに見えるのは予測していたとおりのこと。軍艦島上空でギアを出したまま旋回するなど、遊覧飛行では普段とは違う飛び方を見せるが、「普段の集大成で、各空港の進入や着陸の方法をミックスさせたもの」と説明。

 最後のサプライズについては、「機内でも飛行機のなかから手を振ってとアナウンスしたが、今日の飛行機に乗れなかった人や、空港にお越しいただいている方にも楽しんでいただきたかった」と、飛行機のなかにいる人はもちろんのこと、飛行機の外にいる人にも楽しんでもらいたいとの思いからのサプライズだったことを明かした。

 こうしたイベントとして行なわれるフライトの難しさについて尋ねると、「普段のフライトはマラソンのようなものだが、今日のようなフライトは100m走を全力で10本走る感覚。同じことをすぐにやってくれと言われても、ちょっと勘弁してほしい(笑)。それだけ、集中して頭と腕を使いまくる」と独特の苦労があるとのこと。

「天気の移り変わりや、自分が飛びたい経路の雲や気流の状況などのデータを調べ上げて頭のなかでプランニングする。必ず安全を保てるよう、いろいろなことを想像する。飛ぶときは涼しい顔だが、99%は準備で、そこで汗をかくぐらい」と、この日の遊覧飛行も、すべて事前に準備したシナリオどおりに進んだという。

 一方、遊覧飛行の操縦桿を握るのは初めてという林副操縦士も、やはり準備の重要さに触れたうえで、「機長と違って私はまだチキンでしまう部分があったが大成功だったと思う」とコメント。

「台風が近づくなかで実施できて楽しんでいただけたのは私の力にもなったし、よいモチベーションにもなった」「もし機会をいただいて、1年後の空の日にもう1回と言われたら、喜んでお受けしたい。またお客さまの笑顔を見たい」と感想を話した。

遊覧飛行を担当した西山機長(左)と林副操縦士(右)