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都内1号店「ナインアワーズ北新宿」が新大久保駅近くにオープン、さっそく体験してきた

1泊3900円ながら高い品質のカプセルホテル

2017年3月22日 開業

ナインアワーズ北新宿

 京都などでカプセルホテルを展開しているナインアワーズは、都内1号店となる「ナインアワーズ北新宿」を3月22日に開業した。

 ナインアワーズ北新宿は、カプセルホテルということもあり1泊3900円からと、普通のホテルに比較すると低価格設定となっているが、決して「安かろうわるかろう」ではなく、余計な機能を排し、機能性と合理性を追求したデザインで高い品質を維持しているという、ユニークなコンセプトを持っている。

 オープン前日にプレス関係者向けに内覧会が開催され、設備やフロアを体験することができたので、その模様をお届けする。

シンプルながら機能的で合理的で清潔なフロアと設備

ナインアワーズ北新宿の周辺。飲食には困らないエリアだ

 ナインアワーズ北新宿は、最寄り駅で言うとJR新宿駅から山手線で1駅、JR新大久保駅から徒歩2分ほどの、大久保通りに面した位置、コリアンタウンのど真ん中にある。この立地のよさもナインアワーズのコンセプトの一つだ。ただ、大久保通りは人通りも多く、JR新大久保駅は2017年3月時点でエレベータどころかエスカレーターもないので、大きなキャリーバッグなどが一緒だと、やや移動が大変かも知れない。

通りから少し奥まったところにあるシンプルなエントランス
受付カウンター。仕切りの壁は天井まで達しておらず、開放感がある

 ナインアワーズ北新宿の受付は最上階となる8階にある。受付でチェックインをすると、二次元コードが印字されたカードを渡される。この二次元コードがロッカーの鍵になる仕組みだ。

 公式Webサイトから予約した場合、予約時に二次元コードが発行され、受付のiPadでセルフチェックインもできる。この場合、カードは渡されず、その二次元コードでロッカーを解錠できるという仕組みだ。このセルフチェックインはどちらかというと慣れている人向けのシステムで、不慣れならば受付スタッフにチェックインしてもらうこともできる。

 ちなみにチェックインは昼の12時から、チェックアウトは朝の10時までで、最長22時間滞在できる。長居するようなホテルではないが、東京に着いたらすぐにチェックインして、大きな荷物をロッカーに入れて仕事や観光に行く、といった使い方もしやすい。

通常のカードキー。ロッカー・カプセルの番号、二次元コードなどが印字されている
iPhoneで予約をすれば、Walletに予約カードが追加される
セルフチェックインにはiPadのインカメラを使っている
署名をしたあと、カプセルの上段か下段かを選べる
ロッカーエリア

 チェックイン後は、まずは宿泊フロアに移動し、ロッカーに大きな荷物を収納するとよいだろう。3階と4階が男性用フロア、5階と6階が女性用フロアになっていて、男女別のエレベータで行くことができる。

 宿泊フロアは半分がロッカー、半分が宿泊カプセルとなっている。各ロッカーには光学センサーが付いていて、二次元コードをかざすと解錠される仕組みだが、非接触ICなどに比べるとやや反応が鈍い印象だ。カードは二次元コードなどが印刷されているだけなので、磁気や湿気で壊れる心配はない。扉を閉めると自動で施錠される。

ロッカーの中段と下段。中段棚板は切り欠きがあり、ハンガーにジャケットなどを吊るせる

 ロッカーは床面から高さ2mほどの高さを1人で占有できる。下段には底板がないので、キャスターのあるスーツケースなどはそのまま転がして入れられる。ロッカーの幅は35cmほど、奥行きは53cmほどだが、ちょうつがいがせり出しているので幅30cm以上の荷物は入らない可能性もある。

 中段の棚板にはバスタオル、フェイスタオル、スリッパ、歯ブラシ、館内着が用意されている。館内着は男性がLサイズ、女性がMサイズだが、サイズが合わない場合は受付に言って交換してもらうこともできる。館内着は7分袖シャツと8分丈パンツで、グンゼによるナインアワーズオリジナルデザインとのことだ。

跳ね上げ可能な中段

 下段の高さは約90cmだが、中段の棚板は跳ね上げることができ、ギターケースのようなやや長い荷物も収納できる構造だ。しかし、そうするとほかの荷物が入るかどうかわからない。入りきらない荷物は受付で預かってもらうこともできる。

 靴入れとなっている上段は扉が独立しているが、中下段の扉を開けないと開かない構造になっている。

シャワーのフロア

 このままホテルから出ずに宿泊するならば、荷物をすべて預け入れ、ここで館内着とスリッパに着替えてしまうとよいだろう。シャワーを浴びるならば、タオルと替えの下着などを持って、シャワーのフロアに移動する。

 シャワーフロアは男女ともに7階となっている。フロアが半分に分割されていて、男性エレベータは男性エリア、女性エレベータは女性エリアにだけ通じている構造だ。

シャワー個室

 シャワールームは完全な個室になっていて、着替えができるスペースもある。作り付けの棚にタオルや着替えを置けて、シンプルながら使いやすい。こちらで使われているシャンプー、コンディショナー、ボディソープは玉の肌石鹸の005フィグというものとのこと。

 シャワーフロアには人造大理石のカウンターがあり、流し台とドライヤーが備え付けられている。人造大理石の天板は継ぎ目がなく、清掃しやすそうな作りだ。このフロアには基本的にスタッフが常駐し、シャワーが使われるたびに清掃をするといった対応をするとのこと。ちなみにここのシャワーは宿泊していなくても、800円(1時間まで)で利用できる。

宿泊カプセルユニットのエリア

 宿泊カプセルユニットは、ロッカーと同じフロアにあり、ロッカー番号と同じユニットを使う仕組みだ。上下2段になっていて、上段はハシゴで昇降する。ハシゴは昇降しやすい構造だが、歌舞伎町やコリアンタウンで飲み食いしまくる予定があるなら、下段を選んでおいた方がよいかも知れない。

カプセルユニット

 カプセルユニットは、幅高さともに約1.1m、長さは2.1mほどで、身長175cmの筆者が寝っ転がっても狭いと感じることはなかった。枕はまくらのキタムラの「ジムナスト」をカプセルユニットに合わせたカスタム形状モデルで、マットレスはニッケ商事のオリジナルモデル。どちらも柔らかすぎず硬すぎずで寝心地がよい。

奥側。写真だと見えにくいが、黒い部分にあるコンセントは1基のみ

 奥が枕側になっていて、少し絞られている。奥側にはACコンセントと照明スイッチがあり、その左右にメガネ置きなどに最適な小物スペースがある。コンセントがあるので、スマホなどの充電器を持ち込むとよいだろう。

スクリーンを閉じた状態

 カプセルユニットの入り口は、ブラインドスクリーンで閉鎖する。音などは完全には遮断できないので、ほかのカプセルホテル同様、ほかの人の歩行音などが気になって寝られない人は、耳栓などが必要になるかも知れない。内覧会ではしっかりと確認できなかったが、上段の方が歩いている音などは届きにくそうである。

 ロッカー・カプセルのフロアにはトイレと流し台があるが、それ以外の設備はない。このフロアは飲食禁止で、飲食したり何か作業をしたいときは、受付のある8階のラウンジが利用できる。

ラウンジ。左側が12席のカウンター、中央が24席のテーブルで、その周囲にはベンチもある

 8階の受付の裏がラウンジになっていて、テーブルやカウンター、デスク、ベンチがある。自販機などはないが、外で買ってきたものを飲食することもできる。といっても、焼き肉屋が連なるコリアンタウンのど真ん中で、日本有数の繁華街である歌舞伎町も徒歩圏内なので、外食の選択肢は豊富だ。

北側の窓からの眺望。8階の高さでこれだけ眺めがよいのが意外である

 このフロアは打ちっ放しコンクリートの床面に木のテーブルと、シンプルかつ清潔感のあるデザインに統一されている。窓は床面から天井まであり、周囲に高い建物がないこともあって眺めがよい。フロア全体も壁が少なく開放感のある設計で、居心地のよい空間だ。

 ナインアワーズのコンセプトとしては、長居をするようなホテルではないが、予定までの時間を調整するときは、わざわざ近くの喫茶店やファストフードに行って時間を潰さないでもよいかな、という印象だ。

予約制のデスクブース

 12席のカウンター席にはコンセントがあるので、スマートフォンの充電に使うのもよいだろう。5席の予約制デスクブースは仕切りがあり、コンセントもあるので、ちょっとした仕事にも使えそうだ。このデスクブース、通常は1時間300円だが、宿泊者は無料で利用できる。受付の脇にはプリンタ・コピー複合機もあり、1枚10円で利用できる。

 基本的な設備は以上で、寝ることとシャワーというホテルにとって必要な最低限の要素にフォーカスし、余計な設備はない。ただしナインアワーズ北新宿は、場所柄ビジネス利用も想定し、デスク機能をやや充実させている。

 ナインアワーズは「ホテルでゆっくり過ごす」といった使い方には向いていないが、出張や東京観光など、ホテル滞在以外を目的とした旅行には必要十分な設備がある。実際に内覧会で設備を体験したところ、設備はどれも清潔かつ機能的で、無理に低価格なホテルに泊まるよりもある意味、ストレスが少なく快適に過ごせそうで、コスト以上の価値は確実にあると感じられた。

シャワーと宿泊にだけフォーカスするというコンセプト

左から株式会社ナインアワーズ 代表取締役 ファウンダー 油井啓祐氏、ナカムラデザイン事務所代表 中村隆秋氏、廣村デザイン事務所代表 廣村正彰氏、Design Studio S代表 柴田文江氏、ナインアワーズ 代表取締役CEO 松井隆浩氏。背景はラウンジの南側の窓で、新宿副都心が眺望できる

 内覧会ではナインアワーズ北新宿に関わったプロジェクトメンバーとして、ナインアワーズの代表取締役ファウンダーの油井啓祐氏、同代表取締役CEOの松井隆浩氏、クリエイティブディレクション・プロダクトデザインを担当したDesign Studio S代表の柴田文江氏、サイン&グラフィックデザインを担当した廣村デザイン事務所代表の廣村正彰氏、インテリアデザインを担当したナカムラデザイン事務所代表の中村隆秋氏が登壇し、同ホテルの概要を説明した。

 ナインアワーズは京都、成田空港、仙台の3店舗が営業していて、北新宿は4店舗目となる。コンセプトの詳細や設備は店舗ごとに違う部分もあるが、基本は汗を洗い流す1時間+寝る7時間+身支度する1時間のみにフォーカスするというコンセプトで、そこから「ナインアワーズ」という名前が付けられている。

 カプセルホテルの「ベッド以外のパブリック部分は共有する」という考えを合理的であると捉え、その考えをベースに新しい宿泊形式を作る、というのがナインアワーズの発想ともなっている。

 宿泊とシャワー、身支度に徹底的にフォーカスし、それ以外の余計な機能を極力省き、合理的なデザインを徹底している。設備やデザインはコストを節約するのではなく、かといって高級に見せることを目的ともせず、合理性や機能性を重視してデザインされている。

 かつてはカプセルホテルというと、「終電を逃したオッサンの避難先」のようなイメージもあったが、ナインアワーズが京都に1号店をオープンして以降、ナインアワーズのような高品質なカプセルホテルは増加傾向にあるという。

 ナインアワーズでは今回オープンした北新宿に続き、2017年7月には神田、2018年春以降には浅草、竹橋、蒲田、赤坂に出店し、2020年までに都内を中心に全50店舗の展開を計画しているという。

 今後も基本コンセプトは維持しつつ、簡易ジムなど店舗ごとに異なる設備を導入したり、設備のバージョンアップを続けていくという。また、月極契約など、普通のホテルでは導入されにくい価格体系の導入も検討しているという。

 ナインアワーズ北新宿は、通常の宿泊料金は1人1泊3900円からで、祝日などはやや高くなる。現在はオープン記念で200円の宿泊プランも提供中で、先着順の早割サービスも用意している。このほか、1時間1000円からの仮眠利用も可能となっている。