【イベントレポート】

【APEX2016】AIX Asia 2016で展示されたオリジナリティあふれる飛行機用シート

2016年10月24日~27日(現地時間)開催

 シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ・エキスポ&コンベンションセンターで開催された「APEX EXPO 2016」では、併設イベントとして「AIX Asia 2016(Aircraft Interiors Expo Asia 2016)」が開催された。その名のとおり飛行機の内装品の展示会だ。この会場で目立つのは飛行機用シートの展示。それらのなかからピックアップして紹介する。

 イタリアに本拠を置くAVIO Interiorsは、ワイドボディ(双通路機)で2-4-2の7アブレストの構成が可能というビジネスクラスシート「ADAGIO」のモックアップを展示した。7アブレストといっても単なるシートではなくパーティション付き。前後にずらして配置することでスペース効率を高めた、昨今のトレンドに即したデザインになっている。現在は航空会社に売り込み中で、2018年に運航を開始する機材への搭載を見込んでいる。

 同社のブースでは、このほかにもエコノミークラスやプレミアムエコノミー、ビジネスクラスの各種シートを展示。オーストリアのWollsdorf製の革を使ったシートの座り心地を強調した。

2-3-2の7アブレストの利用を想定したビジネスクラスシート「ADAGIO」のモックアップ
左右に2座席、中央に1座席をずらして配置することでスペース効率を高めている
利用シーンを示したイメージビデオをブースで上映した
エコノミークラスシート。リクライニング機能やシートモニター装着スペース、レッグレストの有無でバリエーションを設けている
レッグレスト付きのエコノミークラスシート
上部にポケットを設けてシートモニターを装着できないタイプ
シートモニターを装着可能なデザインのエコノミークラスシート
革張りシートにはWollsdorf製の革を採用
プレミアムエコノミーまたはビジネスクラスで利用するシート。写真下2枚はレッグレストが電動でせり出す。展示では背面に2カ所のシートポケットを備えているが、モジュールの入れ替えでシートモニターの装着が可能
ビジネスクラスまたはファーストクラス向けの個室型シート

 シンガポールのAirGo Designが展示した「ORION」は、エコノミークラス向けの3列シート。長距離路線での導入を狙ったもので、3次元的にフィットして体を支えられるよう独特の形状のクッションにしている。また、フレームの素材はカーボンを使用することで軽量化している。製品化は2017年末を目指す。

AirGo Designの「ORION」
革張りシートで、その独特な形状で長時間のフライトでも疲れにくいフィット感を得られるという
フレームのほか、シートモニターやテーブルなどにもカーボン素材を採用
横から見たところ。シートピッチは34~36インチ(約86.5~91.5cm)を想定しているとのこと

 アメリカのMolon Labe Designsは、主にLCCなどでの利用を想定したエコノミークラス向けの3列シートを展示した。特徴は通路側の1座席が、窓方向に座席半分ほどスライドするところ。これにより、降機の際に通路を広げることができる。航空機部品としての証明も取得済みとのこと。

Molan Labe Designsが展示したエコノミークラス向けシートは、3列シートの通路側の1席がスライドする構造
スライドすることで通路が広がってスムーズに降機できる
側面のロック解除ボタン

 イギリスのMirus Aircraft Seatingは、創業から2年という新興のシートメーカー。エコノミークラス向けの3列シートを展示している。革張りの背中部分に独自のスティッチを入れることで、よりリラックスできるようにしたデザインを特徴に挙げている。同社の製品はAir Asiaがエアバス A320/A321型機、400機ほどに導入しているという。

 ヘッドレストやスティッチの糸など、さまざまなカスタマイズに対応しており、そのデザインシミュレータも導入。AR(拡張現実)機能で、360度自由な角度からデザインを確認できる。

 同社は、F1の開発技術を航空機のシートに適用するというコンセプトを掲げている。カーボンファイバーなどの素材や、開発プロセスの最適化による製品開発の高速化などが、F1の開発技術を応用することのメリットとしている。

Mirus Aircraft Seatingが展示したエコノミークラス向けシート
F1の開発技術を応用して製品開発速度の高速化などを実現したという
ヘッドレスト付き製品の例。背中部分のスティッチも特徴
アームレスト先端のUSBポート
現在は革張り製品が中心とのことだが、ファブリック素材の製品化(中央のシート)が可能なこと紹介
iPadを使ってシートデザインをシミュレートできる
ARにより、カスタマイズしたデザインを自由な角度で確認できる