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JALとNRI、空港業務にロボットを活用する実証実験を開始
人とロボットが連携して空港利用客のサービス向上を
(2016/2/10 00:00)
- 2016年2月9日 開催
JAL(日本航空)とNRI(野村総合研究所)は2月9日、サービスロボットを活用した、旅客サービス向上の実証実験を羽田空港で開始した。
近年さまざまな分野でロボットの活用が注目されており、空港業務にロボット活用することでどのような効果があるのかを検証するのが目的。今回の実証実験ではフランスのアルデバランロボティクス製の小型人型ロボット「NAO」が使用される。今まで銀行や百貨店での実証実験は行なわれていたが、空港では初めての試み。
実証実験は2月9日~11日、16日~18日の計6日間、羽田空港第1旅客ターミナルビル2階南ウイングのJALインフォメーションカウンターと保安検査場Cの2カ所で行なう。実証実験は、10時~12時の午前の部、14時~16時の午後の部の2回に分けられ、9日午後の部のインフォメーションカウンターから実証実験がスタートした。実施スケジュールは10日、11日は午前の部が保安検査場、午後の部がインフォメーションカウンター、16日から18日は午前の部がインフォメーションカウンター、午後の部が保安検査場で行なわれる。
インフォメーションカウンターでは、利用客との対話により、デジタルサイネージ(電子看板)と連携し、音声と文字、画像を通じて情報提供を行なう。NAOは内蔵のWi-Fi(IEE802.11b/g/n)でインターネットに接続し、利用客の搭乗便に応じて行き先の天候や口コミ情報など最新の情報を提供することが可能だ。
利用客が近づくと「私は日本航空のNAOです。今日はご出発ですか?」と会話が始まる。NAOとの会話では「はい」「いいえ」などの機械的なやりとりではなく、「そうだよ」「違うよ」といった、より自然な会話でも反応するほか、関西弁の「ええで」「ちゃう」など方言にも対応。より人間らしい反応をするように工夫されている。
保安検査場前ではグランドスタッフが装着しているスマートウォッチと連携して、保安検査場通過締め切り時刻をNAOがアナウンスする。保安検査場が混雑しているときは、空港スタッフは多くの利用客からの問い合わせに対応するために、定期的に、適切なタイミングでアナウンスができない場合がある。その場合でも、NAOであれば、正確に時刻を管理して適切なタイミングでアナウンスをすることが可能となる。また、人間味あふれるNAOがアナウンスすることで利用客からの注目を集めるとともに、近年増加する訪日外国人にも対応し、日本語以外に英語、中国語によるアナウンスも行なう。
実際にスマートウォッチを装着したJALSKYのグランドスタッフの花渕さんは「混雑している時、必要なタイミングにアナウンスできないこともある。スマートウォッチが震えてアナウンスのタイミングを教えてくれるので、お客様への対応に集中することができる」と実際に使用した感想を話した。
今回の実証実験について、日本航空 IT運営企画部の下川さんは「空港の現場において、デジタルサイネージなどの純粋な表示機器とは一線を画する人型ロボットの活用の意義について検証していきたい。人が行なう業務を支援する一助になることは間違いないが、人の業務すべてがロボットに置き換わるものではない」と目的を説明。
また、空港企画部の福島さんは「今回の実証実験を通じて、人とロボットがそれぞれの強みを発揮する事で日本航空の強みである、空港ヒューマンサービスのさらなる強化につなげたいと」話し、検証結果のフィードバックを行ない、今後のサービス向上へつなげたいとした。
野村総合研究所 デジタルビジネス推進部 IT基盤イノベーション本部 上級研究員の城田グループマネージャーは「10年くらい前からロボット活用の期待が高まってきたが、今まではメーカー主導で、現場のニーズが十分に反映されていなかった。メーカーとユーザーが歩み寄って、ロボットの開発を進めていかなくてはいけない」と従来の状況を説明するとともに、「今回の実証実験で画期的なのは、空港スタッフが身に着けているスマートウオッチとの連携。政府が推進する“ロボット革命”実現のための3本柱“IoT時代のロボットで世界をリード”という方針にも合致する」と実証実験の意義を強調した。