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ハワイ カネオヘエアショーに展示されたハワイアン航空初の旅客機“ベランカ”
現在も実動し、社員向けのフライトを実施
(2015/10/26 10:09)
- 2015年10月17日~18日 展示
ハワイ オアフ島の北部に位置するカネオヘ。湾内には観光名所として知られる“天国の島”があり、オアフ島北部の主要な街でもある。そのカネオヘにはアメリカ海兵隊のカネオヘ基地があり、そこでは3年に1度大規模な航空祭「カネオヘエアショー」が開催されている。
カネオヘエアショーでは、様々な航空機の飛行展示や地上展示が行なわれているが、必ずと言ってよいほど実施されているのがアメリカ海軍のアクロバット飛行チーム「ブルーエンジェルス」による飛行展示。アメリカ空軍の「サンダーバーズ」と並ぶ世界的に有名なアクロバットチームで、最も長い歴史を持つアクロバットチームになる。
このブルーエンジェルスによるアクロバット飛行が行なわれることから、カネオヘエアショーは地元でも大きなお祭りとなっており、基地がハイウェイと直結していることもあって、オアフ島中から多くの人が訪れる。
10月17日~18日開催のカネオヘエアショーに展示されたのがハワイアン航空初の旅客機となる「Bellanca Pacemaker CH-300」。Bellanca Aircraft製造の航空機で、愛称も“Bellanca”となっていることから、本記事ではこの機体を“ベランカ”と表記していく。
ハワイはハワイ諸島と呼ばれるようにいくつかの島から構成されている。その最大のものは“ビッグアイランド”と呼ばれるハワイ島、空の玄関口となるホノルル空港やワイキキのあるオアフ島などなど。ハワイアン航空はそれらの島を結ぶ「Inter-Island Airways」として設立され、このベランカは1929年9月に購入されたとのことだ。
ハワイアン航空スタッフの説明によると、ハワイアン航空で初の旅客搭乗飛行を行なったのはベランカになるが、予定では島嶼間を結ぶシコルスキー S-38が初となるはずだった。ところがこのベランカによって10分間の遊覧飛行を1929年10月6日に行なったことから、ベランカが“初”の栄誉を担うことになった。
ベランカの仕様は、乗員1名、乗客最大5名。全長27フィート9インチ、全幅46フィート4インチ、全高8フィート4インチで、写真を見て分かるように高翼式の翼を持つ。搭載エンジンは、プラット&ホイットニー製の空冷式星型9気筒OHVの「R-985」で最高出力 450HPで、最高速は165マイル/時、航続距離は675マイルの性能を持つ。プラット&ホイットニーの傑作空冷エンジンとして「R-1340」のワスプ系列があるが、R-985はその縮小版となるものでワスプジュニアと呼ばれている。
ハワイアン航空はこのベランカのほか、現在の島嶼間接続に利用しているボーイング 717も展示。こちらの機内公開にも多くの人が並んでいた。
カネオヘエアショーのメイン展示となるブルーエンジェルスのショーは15時に開始。ショーは、ブルーエンジェルスのサポート機であるC-130H(愛称:ファットアルバート)のデモから始まり、6機のF/A-18Aによるタイトでスピード感あふれるショーが観客を魅了した。
アメリカのエアショーでは、有料の観覧席が用意されることが多い。カネオヘエアショーでも毎回有料観覧席が用意され、チケットの価格によって食事や飲み物が異なる(一番高価なTop Brass Chaletはハワイ産ビールやワインといったアルコール飲料も飲み放題)。ハワイアン航空はこのカネオヘエアショーをサポートしており、ハワイアン航空のマイレージプログラム上級会員向けの招待観覧席を用意していた(ほかにボーイングなどの招待観覧席もあった)。
日本の航空祭は自衛隊主催によるものがほとんどのため、基本は無料で(税金で)運用され、有料の観覧席などはない(アメリカ海兵隊による岩国基地航空祭などは有料観覧席を用意するときもある)。スポンサーを募って、より豪華なショーを観客に提供するという考え方は、ショーについての文化の違いを強烈に感じる部分だ。
このベランカは、現在も実動し、実際にハワイの空を飛んでいる。ハワイアン航空の社員であれば、週末に社員向けの遊覧飛行を申し込むことができるとのことだが、人気が高くスケジュールが空いていることが少ないそうだ。この時代の飛行機が実際に飛ぶようにメンテナンスされ続けているのも、人類初フライトを成し遂げて以来、航空先進国であり続けるアメリカの意気込みだろう。