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【インタビュー】羽田~オークランド線を就航したニュージーランド航空 日本支社長 クロヴィス・ペリエ氏に聞く

2017年7月22日 実施

ニュージーランド航空 日本支社長 クロヴィス・ペリエ氏(中央)

 7月21日(日本初の初便は22日)に羽田~オークランド線を就航したニュージーランド航空。初便が出発する羽田空港の搭乗ゲートで開かれた就航セレモニーは既報のとおりだが、その際、同社日本支社長のクロヴィス・ペリエ氏にインタビューする機会を得られた。羽田からの直行便における戦略について話を聞いた。

――羽田~オークランド線の夏期スケジュール(7月21日~10月29日)の平均搭乗率はどのぐらいになると考えているか?

ペリエ氏:搭乗率については往路、復路ともに80%を見込んでいます。しかし、指向性の違いというのがあります。つまり、搭乗率と利益率のバランスです。搭乗率も大事ですが、利益率も大事です。

 我々としては常に満席というのは望んでいることではありません。なぜなら1席の料金が安く設定されてしまう可能性があるからです。搭乗率と利益率、これはどのエアラインにもいえることでしょう。

――羽田~オークランド線のビジネス客、レジャー客のおおよその割合は?

ペリエ氏:ニュージーランドというのはレジャーに最適なデスティネーションです。今ここ(搭乗ゲート)にいるお客さまたちを見ても分かるように、大多数がレジャー目的です。

 ニュージーランドと日本の間には大きなビジネス関係もあります。我々としてはニュージーランドが経済やビジネス面においても日本とともに成長してほしいと願っていますが、ニュージーランドは小さな島に過ぎません。経済規模は決して大きくはありません。

 そういうこともあり、ビジネス目的は10%以下、レジャー目的は70%程度でしょう。残りは留学、親類・友人への訪問といったところです。

――羽田~オークランド線の冬期スケジュール(10月30日~2018年3月24日)では、日本の国内線との乗り継ぎの利便性が高まる。ただ、冬期は関西国際空港~オークランド線も運航される。この2つの路線の差別化は?

ペリエ氏:今回の羽田~オークランド線の役割は、日本の地方への乗り継ぎです。(同じスターアライアンスであり、羽田でニュージーランド航空の実質的なオペレーションを担っている)ANAの膨大な地方路線ネットワークの利便性を底上げし、東京からそれ以外の日本の都市へ将来的に広げていくチャンスだと考えています。

――旅行会社のパッケージツアーでは今のところ成田便を利用するものが多い。羽田便を利用するパッケージツアーは今後増えるか?

ペリエ氏:旅行会社のパッケージツアーは、商品としてできあがるまでにどうしても時間がかかります。我々としては、今年度も旅行会社の皆さまには引き続き成田からのパッケージツアーに力を入れてほしいと願っていますが、いずれは羽田からのパッケージツアーが数多く生まれることも期待しています。今年はまだ多くはないと思いますが、これから来年にかけて増えていってほしいですね。

――2019年度までに売上を2014年度比で2倍にする「ダブル・ジャパン戦略」を掲げているが、進捗は?

ペリエ氏:ダブル・ジャパン戦略は、我々の成長ビジョンに向けた取り組みです。現在予定どおり進んでいるところですが、いろいろな要素がありますし、目指すべきものはもっと先にあります。

 ダブル・ジャパン戦略が終わったらトリプル・ジャパン戦略になるかもしれませんが(笑)、これは成長に向けたマインドセットであって、投資でもあるのです。

 ご存じのように関西への投資となる関空線と、関東への投資となる羽田線と、旅客機を飛ばすというのは膨大なお金がかかる大変な投資です。しかし、これはマーケットを信じているからこその投資です。日本はニュージーランドにとって大事な市場で、近い将来、我々がこの市場を成長させられることを信じています。

――現在、冬の関空線を含めてボーイング 787-9型機での運航ですが、現在の搭乗率などから、これをボーイング 777-300ER型機に切り替える(一度の旅客キャパシティを増やす)可能性は?

ペリエ氏:正月シーズンのような、いわゆる“スーパーピーク”の時期には、787から777に切り替えることも考えたいと思っています。とはいえ、我々日本のチームとほかの地域のチームは、ニュージーランド線において航空機を巡って争っているわけです。したがって、もしそのエアラインが、ありていにいえば儲かる、というのであれば(笑)、需要に応じて777-300ER型機に切り替えることもあり得るでしょう。

 ただし、我々の777-300ER型機は、今のレジャー目的がメインの日本のエアラインに対して、プレミアムキャビン(ビジネスクラス、プレミアムエコノミーのエリア)が大きすぎます。やはり787-9型機の座席構成が、日本には最も適しているのではないかと思います。

――反対にもっとビジネス客を増やしたい、というような考えは?

ペリエ氏:ニュージーランド航空は、とてもユニークな航空会社だと思います。我々はレジャーのお客さまにかなりフォーカスしているんです。これはまったく一般的ではありません。というのも、LCCを除くほかの航空会社は、ビジネス客が彼らにとって絶対的なキーであるとしているからです。

 レジャー市場にフォーカスしているから、我々ニュージーランド航空がこの市場でアドバンテージを保っていられます。GFC(Global Financial Crisis:リーマンショックのこと)のあとも、ニュージーランドはリゾート地として利益を出し続けてきました。GFCによってビジネス利用は減少しましたが、レジャー目的の旅客は減ることはありませんでした。それが我々がレジャーにフォーカスする理由の1つでもあります。

――ニュージーランドへの中国人旅行客も非常に増えている。中国人旅行客にも、ニュージーランドへのアクセスとして日本を経由した路線を案内しているのか? それとも、日本人には日本路線、中国人には中国路線と、あくまで直行便を重視した戦略なのか?

ペリエ氏:我々のもう1つのキーとなるアドバンテージは、ニュージーランドへの直行便を運航しているということです。日本路線は直接ニュージーランドに行きたいという日本の旅行客にフォーカスしています。一方で、中国人旅行客には上海からの直行便を用意しています。韓国については中国か日本を経由する形になりますが、我々が重視しているのは直行便です。