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コンカーとJTBビジネストラベルソリューションズ、日本市場における法人出張管理業務のIT化で協業

2018年度にはTripItを日本語化

2017年3月10日 発表

株式会社コンカー 代表取締役社長 三村真宗氏(左)と株式会社JTBビジネストラベルソリューションズ 取締役 営業担当 中村一郎氏(右)

 出張・経費管理のクラウドサービスを提供するConcur Technologiesの日本法人となるコンカーは、3月10日に東京都内で記者会見を開催し、JTB-CWT(JTBビジネストラベルソリューションズ)と業務提携し、日本市場における法人の出張管理業務のIT化を共同して進めていくと発表した

 コンカーはドイツのSAPのグループ会社で、法人会計や出張管理のクラウドソリューションを提供するソフトウェアベンダー。海外では「TripIt(トリップイット)」と呼ばれる旅行者向けのモバイルアプリを提供しており、旅行関連に強みがある。

 今回の提携を通じて両社はコンカーの持つ出張管理のクラウドサービスを、大企業などに売り込み、海外などに比べて遅れているとされている日本企業の出張管理のIT化を推進する。また、コンカーは海外などで展開してきたTripItの日本市場への進出計画も明らかにし、2018年度には表示言語の日本語化などに取り組んでいくと説明した。

欧米に比べて遅れている出張管理のIT化、クラウドサービスを利用することで適正化の余地がある

株式会社コンカー 代表取締役社長 三村真宗氏

 コンカーの代表取締役社長である三村真宗氏は「コンカーは、経費精算のクラウドサービスを提供するベンダー。ここ数年は通常の経費精算に加えて、出張業務の経費精算のサービスも提供しており、日本企業の出張業務の改革を目指していきたい」と述べ、同社が法人向けに提供しているクラウドサービスをより活用することで、企業の出張業務に関わる無駄を削減し、より効率のよい出張管理が可能になるとした。

コンカーの国内での事業

 三村氏によれば「日本の企業では国内出張では63%、海外出張では73%の適正化の余地があり、約半数の企業で架空出張を含む出張の不正が発生しているという調査結果もでている。欧米の企業では、ルールの厳守、コストの削減、生産性向上、危機管理、可視化などを実現できていることが多いが、日本企業では半ば放置されており、出張者に対する福利厚生的な位置付けが多く、コストの適正化などもされておらず、欧米の企業に立ち遅れている」と、特に日本企業では出張管理の最適化に多くの課題があるとした。

多くの企業で出張業務の適正化の余地がある
出張では多くの不正が発生しているというレポート
あるべき出張の姿と実情
日本の企業の出張管理が遅れている理由

 そこで三村氏は「この状況を改善するには、まずはそうした出張管理の業務基盤を整備することが大事。その結果として出張者の意識改革も進むと考えている。そこで、弊社のソリューションであるコンカートラベル、TripLinkなどと、パートナーのサービスを接続する基盤を整備することで、より簡単に出張管理を行なえるようにしたい。

 従来は従業員が各々のリテラシーで接続して利用していたが、コンカーがハブになって接続することで、より簡単に利用することができるようになる」と述べ、コンカーがほかの旅行サービスと連携する仕組みを提供することで、より利便性の高い出張管理が可能になるとアピールした。

コンカーが目指す理想の出張管理の仕組み
コンカーがハブになって実現

TripLink、TripItの導入などによりより出張管理の利便性を高める

 三村氏によれば、今回コンカーはそうした出張管理のIT化を進めるソリューションとして、「Concur Travel」「Concur Mobile」などのソリューションをすでに提供しているという。Concur Travelは、旅行管理のクラウドサービスで、クラウド上で出張の手配から、現地での危険情報の閲覧、緊急時のアラート送信、経費精算まで一連の出張管理が可能になるサービス。

 Concur Mobileは旅程管理のモバイルアプリケーションで、Concur Travelと連携してスマートフォンにフライト情報の変更などを通知したり、旅程変更などを行なうことが可能になる。

コンカーが提供する旅行関連のクラウドサービス群

 三村氏によれば、今回コンカーは2つの新しいサービスを導入するという、それがTripLinkとTripItだ。TripLinkはいってみれば旅行代理店のサービスに直接接続するためのコネクターサービスで、Concur MobileからOTA(Online Travel Agency)や航空会社などが運営する旅行サイトにダイレクトに接続して、予約するといったことが可能になる。

TripLink

 しかし、それだと対応しているOTAや航空会社でしか予約できないので、そうしたときにはコンカーが欧米などでリリースしてきたモバイルアプリのTripItを活用する。TripItには、OTAや航空会社から送られてきたメールを、決められたメールアドレスに転送すると、TripItのクラウドサーバーがそれを自動で解析し、旅程を自動生成してモバイルアプリに表示してくれるというサービス。すでにこのTripItは欧米でサービスが行なわれており、ITを活用している旅行者にはよく知られているサービスだ。

TripItの概要
TripItとConcur Mobileの比較

 三村氏はこのTripItを日本でも本格的に展開していく計画があることを明らかにした。すでに英語のアプリは利用可能であり、2018年中にプッシュ通知などに対応した有償版を日本でも展開する。さらに、2018年以降にはアプリ自体を日本語化したバージョンの計画もあるこのこと。

「すでに英語版でも旅程の表示は日本語表示が可能になっており、アプリ側のメニューなどが英語でかまわないというユーザーであれば十分使える」としており、今後はそれに加えて有償版の導入や、日本語版の導入でより充実をさせていきたいとした。

TripItのロードマップ

 そうしたメール連携を利用、日本国内のOTAや航空会社、鉄道会社などのサイト対応を増やしていく予定で、2016年6月末までにJAL(日本航空)やANA(全日本空輸)などの航空会社、JR東海の新幹線など約50のサイトへの対応を強化していくと説明した。

2017年6月末までに約50のサイトからの予約メールに対応予定
三村氏のプレゼン資料
三村氏のプレゼン資料
三村氏のプレゼン資料
三村氏のプレゼン資料
三村氏のプレゼン資料
三村氏のプレゼン資料
三村氏のプレゼン資料
三村氏のプレゼン資料

簡単に旅行の予約から精算までを行なうことができ、会社側も出張者の管理が容易に

 また、Concur Travel、Concur Mobile、TripLinkなどを利用した出張管理機能のデモも行なわれた。Concur Travelのデモでは、航空会社やホテルの検索から予約までがすべてConcur Travel上で完結し、かつ航空券やホテルなどが会社の規定に合っているかどうかなどを確認しながら予約できる様子が示された。

 例えば、ホテル場合などでは会社の近くで、会社が奨励するホテルチェーンなどが地図上で分かるようになっている様子が示された。また、その結果はPC上で見ることも可能で、Concur Mobileを利用して旅程を確認したり、ホテルなどに向かう場合には地図を表示して確認しながら向かったりといったことができる様子がデモされた。

Concur Travelを利用して航空券を予約している画面
Concur Travelを利用してホテルを予約している画面
Concur Mobile

 そして、旅程を管理する会社側の機能としては、現在従業員が出張している地域の危険情報を確認したり、現在その地域に何人の従業員がいるのかをグラフィックを利用して確認したり、その地域にいる従業員に対してまとめてアラートを送ったりする様子などがデモされた。

会社側では従業員がどこにいるのか、危険情報を確認したり、アラートを送ったりできる

 また、出張後の経費の精算に関してはConcur Travelに経費の精算ボタンがあり、それを押すだけで経費の精算がすぐにできる様子などが示された。経費の精算がすぐにできるようにクレジットカードの利用明細が読み込んできて、そこから必要な経費だけを選んで読み込んだりできるそうだ。

経費精算の画面

コンカーとコミュニティが協力して法人顧客の出張業務のIT化を推進

株式会社JTBビジネストラベルソリューションズ 取締役 営業担当 中村一郎氏

 会見の最後には、JTBビジネストラベルソリューションズの取締役営業担当である中村一郎氏が、コンカーの提携について説明した。

 JTBビジネスソリューションズはJTBと日本国外で出張手配に強いCTWの合弁として、出張管理業務のコンサルタントなどを目的に設立された企業。中村氏によれば、そうした出張管理業務や出張手配に強いJTBビジネスソリューションズが、今後コンカーと協力してコンカーのITソリューションの導入を同社の顧客にコンサルティングしたり提案したりしていくという。

 中村氏によれば同社はBTM(Business Travel Management)という考え方で出張管理の最適化に取り組んでおり「日本企業でもグローバル化が進んでおり、出張管理に関しても新しい考え方で取り組んでいるところが多い。国際航空券やビザの手配、出張プログラムの最適化などのこれまでのノウハウを活かし、より優れた予約コンテンツの提供、より優れたBTMの提供、出張経費の最適などに取り組んでいきたい」と、日本企業にもBTMへの理解と取り組みが進んでいくことを期待したいと述べた。

JTB-CWTが提供する価値