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日本旅行業協会、総理官邸と観光庁主導で進む極東ロシアへのアウトバウンド施策を説明

視察団を派遣して日露の官民が協議

2016年11月10日 実施

 JATA(日本旅行業協会)は11月10日、定例会見を実施し、11月1日~5日に派遣したロシア極東地域への視察団の報告や、12月に予定されている韓国復活研修旅行などについて説明した。

 11月1日~5日に実施された「極東ロシア視察団」については、JATA海外旅行推進部 副部長 飯田祐二氏が報告。

日本旅行業協会 理事長 志村格氏
日本旅行業協会 海外旅行推進部 副部長 飯田祐二氏

 この視察団派遣の実施は、2016年5月の日露首脳会談で、安倍晋三内閣総理大臣がロシアのプーチン大統領へ提案した、日露の経済交流拡大に向けた8項目の協力プランの8項目目に掲げられている「人的交流の抜本的拡大」に関連するもの。その人的交流の大きな拡大に観光が重要であることから、JATAとして観光庁と情報交換をしているなかで、9月に安倍首相も参加した東方経済フォーラムがウラジオストクで開催され、ロシア極東地域が注目された。観光庁もそのロシア極東地域に力を入れるとし、「人的交流拡大に資するロシア極東地域への日本人旅行者拡大支援調査事業」を公示。その業務内容に、現地視察ならびに情報交換や日本からの送客やロシアからのインバウンドの増加施策を話し合うミーティングを現地官民と行なうことが掲げられた。それが実施されたものとなる。

 ちなみにこの観光庁の事業は2016年3月までのもので、1000万円の予算が付いた。総理官邸が強力なリーダーシップを執っており、「観光庁としてアウトバウンドに予算が付くのは珍しいケース」(飯田氏)としている。

 視察団は、JATA会長の田川博己氏ほか、観光庁の国際関係参事官、国交省の総合政策局国際政策課企画官、旅行会社の代表ら14名。ハバロフスク、ウラジオストク両都市内の観光地などを視察したほか、現地の日本領事館関係者も交えて、現地の官民とのミーティング、懇談会などが行なわれた。

 沿海州政府顧問や観光局長らとの会談では、JATA会長の田川氏から「距離が近いヨーロッパ。でも(観光交流の距離感が)遠いのは現地側からのPRが不足していて、日本側もロシア極東地域のイメージをつかみにくい。そういった課題を明確にして、官民それぞれでやるべきことを進めましょう」と提言したという。

 今回の視察でも、往路は成田空港からハバロフスクまで2時間50分、復路はウラジオストクから成田まで2時間。現地側資料では、現在の日本からの渡航者数は年間8000~1万人。初めてウラジオストクを訪れたという飯田氏は「ロシア極東地域のサンフランシスコというイメージ。ちょっと褒めすぎだが(笑)」と、その魅力を話す。そのほか、「最終日は横殴りの雪で氷点下10℃という寒さだったが、この寒さを体感するのに2時間で行けるというのも商品化に結びつけられないか」「女性の参加者が小物やレストランでかわいいものを見つけていた。Webサイトでもウラジオストクの小物にスポットライトを当てたものがあり、要所要所にネタになるものはある」といった視察の感想を述べた。

 このほか会見においては、JATA事務局からはPR活動の重要性とその予算化の申し入れや、アウトソースのPR会社を使ったPR、旅行会社を対象にした視察ツアーの実施などを要望。また、視察団からは、主立った観光地や公共交通機関での英語表記が少ないことの指摘があり、ロシア側もWebサイトや資料、地図について早急に検討、対応をしていきたいとの答えを得たそうだ。

 また、「極東ロシア」という言葉から、あまりよくない、怖いイメージがあるのではないかという意見もあり、ネーミングを変えてのブランディングも提案があったという。

 ロシアの日本におけるPR活動は、「World Without Border」というモスクワに本部を置く観光PR組織が幹事役となって、地域のサプライヤーや観光局がアンブレラ形式でツーリズムEXPOジャパンへ参加しているが、ロシア側がPRにお金をかけているのは基本的にはこれだけだという。古くから、ロシアの観光大臣が来日した際など日ロ観光協議会が行なわれてきたが、これはロシア側がアピールだけして、日本側の要望にはなかなか応えてもらえなかったとのことで、「旅行業界に対してのほかの国でやっているような観光局、航空会社などが一体となったPR活動を行なえていないのが実態。理想的にはPR会社へのアウトソースも含め、日本に拠点を置いた形でのPR活動をしてもらうよう日本側から要望した」(飯田氏)と説明があった。

 なお、今後の活動についてのワーキンググループを視察団参加者を中心に発足。年内に2~3回集まり、視察の報告や感想、今後の課題、官民それぞれでやるべきことを話し合う。また、ロシア側への申し入れのパイプ作りを目的にロシア大使館の文化担当者へワーキンググループメンバー参入の申し入れを行なっているという。

 また、今回報告のあった視察団に先だって10月20日~23日には、JATA関東支部の海外旅行委員会でモスクワと近郊都市の視察が、アエロフロート航空の協力で実施されたとのことで、ワーキンググループでは、モスクワやサンクトペテルブルクといった西方地域も含め、ロシア全体の取り組みにしていく予定としている。

 このほかには、デスティネーションの紹介や、ロシア極東地域へのチャーターツアーを実施しているJATM(ジャパン・エア・トラベル・マーケティング)による企画紹介が行なわれるセミナーを11月22日に実施する。

韓国復活で海外旅行復活へ

日本旅行業協会 海外旅行推進部 重田俊明氏

 定例会見では、韓国復活研修旅行の実施について説明が行なわれた。JATAでは2016年を海外旅行復活の年と位置付けており、説明を行なったJATA海外旅行推進部 重田俊明氏は「韓国、中国を伸ばすことが海外旅行復活につながる」と、今回の研修旅行実施目的を説明した。

 韓国に関する施策としては、2014年に1000名規模の視察ツアーを実施したほか、2015年は日韓国交正常化50周年にあたって関係各所と協力したPRを進めたが、2015年5月のMERS(中東呼吸器症候群)発生で打撃を受けた。2016年については、現時点の予測では2014年のレベルへ回復する見込みで、順調であるという。

 今回の研修旅行では、JATA会長の田川博己氏、副会長の菊間潤吾氏、理事長の志村格氏を筆頭に、日韓関係者各100名が参加する「日韓観光共同発展宣言式」が慶州市内のホテルで行なわれる。慶州が選ばれたのは、「9月12日に韓国史上最大と言われる地震が発生して風評被害があったとのことで、観光公社から慶州でのイベントを要望された」と選定の理由を説明した。

 研修旅行は12月13日~15日の3日間にわたって、釜山、蔚山、慶州を巡るコース、オリンピック施設見学などを含む平昌冬季オリンピックコース、公州の扶余などを百済の歴史を巡るコースの3コースに、各50名規模で視察ツアーを実施する。

 このほか定例会見では、10月28日~29日に行なわれた、第3回「JATAの道」プロジェクトの報告も行なわれた。東北支援として行なわれているもので、環境省が設定する東北地方太平洋沿岸地域の「みちのく潮風トレイル」のトレイル整備の復興支援活動を行なうもの。

 2016年は岩手県大船渡市と釜石市の区間で、みちのく潮風トレイルの散策や観光素材視察、復興状況視察などを実施、62名が参加。トラベル Watchでも同行取材を行なっており、追ってレポート記事を掲載する予定だ。