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エア・カナダCEOインタビュー。フルサービスとLCCのよいとこ取りをしたハイブリッドのエア・カナダ ルージュで中部便就航

2016年9月30日 実施

 カナダの航空会社エア・カナダは、2017年6月よりカナダのバンクーバー国際空港とセントレア(中部国際空港)を結ぶ直行便を、最大週4便体制で運航することを9月28日に発表した。エア・カナダが開設するバンクーバー~名古屋線は、同社のレジャー向けブランド「エア・カナダ ルージュ」のボーイング 767-300ER型機で運航される予定で、中部地方からのカナダへのレジャー需要、その逆にカナダから中部地方へのインバウンド需要を見据えた定期便になる予定だ。

 9月30日には、東京都内においてエア・カナダ社長 兼 CEO(最高経営責任者)のカリン・ロビネスク氏のラウンドテーブルが行なわれ、バンクーバー~名古屋の定期便を開設した狙いなどが説明された。

エア・カナダ社長 兼 CEO(最高経営責任者)カリン・ロビネスク氏
開設される中部~バンクーバー線(2017年6月2日~)

AC1956便:中部(16時45分)発~バンクーバー(10時00分)着、火・水・金・日曜運航
AC1955便:バンクーバー(12時45分)発~中部(翌日15時15分)着、月・火・木・土曜運航
※AC1956便の火曜発便は2017年8月1日~9月26日の運航
※AC1955便の月曜発便は2017年7月31日~9月25日の運航

トロント、バンクーバーというハブ空港を活用して米国を含む北米の足となるエア・カナダ

 ロビネスク氏は「エア・カナダは2017年で80年を迎える老舗のエアライン。ここ5年間で国際線のキャパシティを50%増やすなど成長をしている。そのなかでも、アジアは非常に重要な部分を占めている。日本、中国、韓国、香港などとカナダの直行便を、1週間に117便提供している。

 日本は非常にいい例で成田~トロント/カルガリー(筆者注、水・金・日)/バンクーバー、羽田~トロントを毎日運航している。特に羽田に関しては現在唯一の北米向けに羽田から昼間に飛んでいる路線になる。このほか、エア・カナダ ルージュのフライトが大阪に飛んでおり、今回2017年の6月から名古屋に就航することを発表した」と日本路線について説明。

 その強みとして、「重要なことは、我々のハブ空港であるトロントやバンクーバーを経由して、米国の80都市にも飛べることだ。さらに、南米に飛ぶ路線としてもご利用いただいている。特にブラジルへのコネクションフライトは強い需要がある。カナダは人口は決して多くないが、それでもこれだけの国際線を飛ばすことができるのは、ハブ空港があるからだ」と北米大陸にハブ空港を持つ点を挙げた。

 同社ならびに同社の今後については、「引き続き国際線への投資を続けており、機材に関しては100億ドルの投資を行なっている。ボーイング 787、ボーイング 737 MAX、ボンバルディア Cシリーズなどの新機材の導入や、既存のボーイング 777の改装などを行なっている。そうした努力の結果として、(航空業界格付け会社の)スカイトラックスにおいて北米のエアラインとしては唯一の四つ星をいただいている。我々の目標は、さらに成長し、グローバルにTOP10のエアラインになることで、米国路線などをうまく活用して北米のエアラインとして成長していきたい。

 名古屋へのフライトを飛ばす、エア・カナダ ルージュに関しては、3~4年前にレジャーに特化した、異なる市場向けのブランドとして定義した。エア・カナダ ルージュはエア・カナダでは難しいところをカバーするエアラインとして運営している。具体的には1席あたりのコストを30%削減しているほか、労働組合とも異なる協定を結んでいる。ルージュを利用して、カリブ海や米国、欧州、日本など、これまではエア・カナダが就航していなかったレジャー都市などに就航していく計画だ。実際、大阪に飛ばしているルージュの路線は、日本のお客さまがカナダへ出かけるというアウトバンドだけでなく、カナダのお客さまが日本に観光に出かけるというインバウンドの需要も満たしている。

 過去5年間の変革の取り組みで、北米でのベストエアラインという地位を確立したと考えている。ビジネスクラスの評価も高く、ローエンドに関してもルージュでカバーできるようになっている。今後はWi-Fiをすべての機材に導入していくなど、引き続き投資を行ない、2015年は4200万人だった乗客を今年はさらに増やしていきたい」と語った。

エア・カナダ機のモデルプレーン

 続いて、質疑応答の内容を紹介していく。

Q:ルージュの取り組みについてもう少し詳しく教えてほしい。

ロビネスク氏:ルージュは約3年前から取り組みを行なっている。弊社の保有機材は約300機だが、そのうち50機がルージュ用となっている。レジャーなどいくつかの市場ではエア・カナダのコストモデルでは見合わない市場があり、そうした市場をルージュでカバーする。例えば、ホテルチェーンのMarriottであれば、メインの市場をJW Marriottがカバーし、もう少し安いレンジをコートヤードなどの別ブランドでカバーするなどしているが、それと同じような考え方になる。

Q:ルージュはLCCという理解でいいのか?

ロビネスク氏:LCCという位置付けではないとは考えている。LCCのコストモデルとフルサービスのエアラインのハイブリッドだ。お客さまは、エア・カナダのネットワークを利用することができるし、マイレージプログラムもフルに利用できる。北米で言えば、JetBlueに近いと思う。ルージュは新しいマーケットを獲得するという点において大きな成功を収めている。

Q:コストモデルや労働組合との協定の違いをもう少し具体的に聞きたい

ロビネスク氏:例えば、利用する機材を絞っているので、パイロットにかかるコストが違う。また、フライトアテンダントなどのクルーの労働時間も、エア・カナダとは違うことなっている。

Q:中部国際空港に進出を決めた理由は?

ロビネスク氏:これまでずっと名古屋へ進出する可能性を探ってきた。また、1980年代には名古屋に就航していたのだが、近年は就航できていなかったのでぜひとも戻りたいと思っていた。現在中部国際空港から直接米国に飛ぶ便はデトロイト便(注:デルタ航空が運航)しかないので、米国の都市にアクセスできる便としてビジネス需要も満たせるのではないかと考えていた。

Q:ルージュはLCCとのハイブリッドだとおっしゃったが、それでビジネス需要は満たせるのだろうか?

ロビネスク氏:ルージュにもビジネスクラスはあるが、北米の国内線クラスのビジネスクラスとなる。中部便にもビジネス需要があることは理解しているが、エア・カナダのフルサービスを飛ばすほどではないと現時点では判断している。

Q:ルージュは名古屋と大阪に飛ばしているが、成田や羽田にも就航する可能性はあるか?

ロビネスク氏:それはない。成田、羽田はフルサービスのエアラインが適当だと考えている。ロンドンのヒースロー空港と同じだ。ルージュもロンドン便を持っているが、それはヒースロー空港ではなくガトウィック空港だ。

Q:名古屋の旅行代理店などに要望はあるか?

ロビネスク氏:旅行代理店とは常によい関係を築きたいと思っている。我々の希望は、ぜひとも魅力的なカナダへのパッケージツアーを作ってほしいということだ。その準備期間を充分とれるように、2017年の予定をこのタイミングで発表した。ぜひとも魅力的なツアーを作ってもらって、プロモーションをしていただけるようにお願いしたい。