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第17回「ジャパンエキスポ・パリ」現地レポート(その3)

これが日本の「ZEN」。伝統文化・芸能、工芸品と観光地、そして和食

2016年7月7日~10日(現地時間)開催

 ジャパンエキスポ・パリの会場内は大変な熱気と喧騒に包まれていたのだが、そんななかにあって日本の伝統文化や芸能、工芸品、観光地を紹介するエリアは少し静かだ。

伝統文化・芸能

 ジャパンエキスポというと、どうしてもアニメやコスプレが中心に語られがちだ。多くの来場者の目的も実際にそうなのだが、約7%の来場者は日本の伝統文化に興味があるとしており、ジャパンエキスポには毎年必ず、日本の伝統文化や芸能、工芸品についてのブースやステージがある。これは主催者の「日本の伝統的な部分を含めてすべてを紹介したい」という意向によるものである。

べんてんや

 名古屋ちんどん・べんてんやは、ステージでのショーのほかに、展示会場を定期的に陽気な音楽とともに練り歩いていた。カラフルなウィッグと着物は来場者の目を引き、あちらこちらで来場者に囲まれては、写真やビデオを撮られていた。

WABI・SABIブース

 伝統工芸のブースのみを集めたエリア。約40のブースで構成されており、品質の高さに来場者は作品を熱心に見たり、写真を取ったりしていた。

 WABI・SABIブース内にあるステージと、その近くにあるSakuraステージでは、琴の演奏や書・切り絵の実演、広島の平和をテーマに日本の伝統楽器を使った演奏と踊り、太鼓の演奏、阿波踊りや歌舞伎などが披露されていた。

高橋雅芳さんによる琴の演奏。紙に書かれたフランス語を読みながら、琴についての説明をしていた。琴について知ってもらいたいという、その一生懸命な姿がとても印象的だった

 祇園甲部・つる居の芸妓・紗月(さつき)さん、舞妓・茉利佳(まりか)さんも京都から来仏。京都を紹介するブースが会場内にあり、今回は京都ブースのために来仏したそう。京都、芸者、舞妓さんとくれば、それはもう外国人は大喜びだった。

 2人のジャパンエキスポの感想は「コスプレをしている人が多いこと、パリなのにこれだけ和食のブースが揃っていることに驚いた」とのこと。そのほか、芸者と舞妓の違いなどについて説明をし、それぞれが踊りを踊って観客を魅了していた。

 WABI・SABIブースとSakuraステージを取り仕切っている一般社団法人ジャパンプロモーションによると、海外でのリアクションを直接聞くことができるので、出展者にとって大変励みになるし、喜んでいるとのことだった。

ツーリズム

 会場内には日本各地から、観光招致のためのブースが立っていた。

新潟県燕三条(三条市)

 記者の目を一番引いたブースがこちら。ブースの作りが凝っていて美しかったので、担当者に話を聞いたところ、日本から大工さんに来てもらい、日本の伝統的な工法で建ててもらったとのこと。

 燕三条はものづくりの盛んな地域だそうで、展示されていた商品も素晴らしいものばかりだった。盆栽づくりの実演コーナーは人だかりができていた。

 燕三条では2016年10月に企業スタンプラリーを開催するそうで、スタンプを集めるとプレゼントをもらえるとか。このスタンプラリーにジャパンエキスポ来場者が来てくれるとうれしいと話していた。

京都市

 京都のブースも大きく目立っていた。単に観光名所をアピールという形ではなく、ジャパンエキスポに来ている若者たちがもう少し大きくなったときに来てもらえたら、というコンセプトでブースを構成。琳派とアニメのコラボや、墨絵体験や着物の着付けのアトリエコーナーもあった。

 担当者によると「京都にはマンガミュージアムがあり、国際漫画フェアもあるのでこちらにも来てほしい」「京都は大学の街であることもアピールしている」とのことだった。また、京都のブースは3年連続でジャパンエキスポに出展しており、京都ブースへのリピーターも多いとのことだった。

香川県高松市

 2015年に続いて2回目の出展。ブースのテーマは「アート」。瀬戸内国際芸術祭、アートの島として知られる直島をアピールしていた。市内で生産が盛んな盆栽も展示。香川から来たという盆栽の妖精「盆人」が大人気で、一緒に写真を撮りたいという人が列を作っていた。

鳥取県

 今年で3回目の出展。「まんがの国鳥取」というテーマでブース全体を構成していた。フランスで有名な谷口ジロー氏の作品を中心に、県出身3人のマンガ家に関係のある県内の観光名所を紹介。「まんが王国とっとり国際マンガコンテスト」のジャパンエキスポ大会も開催していた。

そのほかの出展ブース

ゆるキャラ、マスコットキャラクター

 特設ステージで、「ゆるキャラ」とは何かを、その歴史的経緯から現在に至るまでを真面目に解説していた。

 会場内には自治体のキャラクターたちがしばしば出没。熊本のくまモンや富山県滑川市のキラリンのダンスは会期中何度かステージで披露されていた。

 七夕の時期ということで、くまモンの絵の付いた短冊に熊本の被災地に向けた応援メッセージを書いている人が多くいた。また、会場内で売られていたくまモンバッチの収益は被災地に送られるとのことであった。

武道・スポーツ

 今年は主催者側の都合により、2015年より面積が少し狭くなったスポーツエリアだが、各武道系スポーツが時間別に登場してデモンストレーションを見せたり、来場者が参加できる体験教室を行なったりしていた。参加していたのは合気道、少林寺拳法、日本武道、忍術、剣道、居合、なぎなた、チャンバラと、多岐に渡っていた。

 ほかにプロレスエリアもあり、1日に3回の体験教室と、日仏プロレスラーによるマッチそしてサイン会が行なわれていた。

 朝一番に来ていた20代前半の男性に話を聞いたところ、「プロレスはフランスでそれほど人気があるわけじゃないけど、自分は大好き! 今日は体験できると聞いて入場してすぐにここに来た。ほかの友達とはあとで合流するんだ」とのことだった。

ミニバッティングセンターもあった

和食

「WASHOKU」と銘打ったエリアに多数の和食ブースが立ち並び、それ以外の場所にもさまざまな和食を中心とする屋台が出ていた。

 たこ焼きは例年大人気で常に長蛇の列。今年はおにぎりの屋台が多く出ていたが、1個4ユーロ(約470円、1ユーロ=約117円換算)というなかなかよい値段にも関わらず飛ぶように売れていた。そのほかには九州パンケーキ、どら焼き、牛丼のほか、定番の寿司、日本の懐かしい駄菓子、和食調味料、日本茶なども売られていた。

 着物姿の女性が抹茶を立てているブースでは、その姿を見ようと多くの外国人が詰めかけていたほか、特設ステージでは和食の作り方講座なども行なわれていた。

これは日本酒について説明しているところ

4日間の祭典が終わり……

 来場者は10代後半から20代が中心という印象。孫を連れてきた老夫婦や、家族全員で来ている姿もちらほらと見られた。中心はフランス人だが、フランス語以外の言語も多く聞こえてきた。

 取材中、何人かのフランス人来場者に話を聞いたので、そこからいくつかの声を紹介したい。

来場者のコメント

高校1年生の女の子

「ジャパンエキスポには毎年来ている人が多いと思う。チケット代も上がってきているし、買いたいものもたくさんあって金銭的には厳しいけれど、1年に1度ここに来るのが幸せなので、なんとか工面している。できることなら毎日来たいけれど、1日しか来られないのが残念!」

20代後半の男性

「プロヴァンスから来たよ。10代の頃と違い、今は疲れるから来るのは1日で十分。でも毎年来るのを楽しみにしているよ。プロヴァンスではマンガやグッズを買えるところがないし、友達にも会えるしね!」

高校3年生5人組

「一緒に来てくれる女の子がいないから(笑)、男5人で来た。楽しんでるよ! ジャパンエキスポに来るのは今年で3年目。アニメやマンガ、コスプレなどももちろんよいけれど、コンサートやさまざまな実演など、ライブでみられるものが一番好きだな」

20代前半の男性

「毎年1人で来るよ。ここに来れば話す人はできるし。今年はあるアイドルのサインをもらうのが一番の目的。抽選に当たったからすごくうれしいよ!」

10代後半のカップルで来た女性

「私たちはとにかく日本のアイドルが大好き! ジャパンエキスポではたくさんのアイドルが来るから、毎日アイドルを見ている。アイドルと話したくて、ファンレターを書きたくて日本語も覚えたわ」

 今年はテロなどの影響で日本からの出展を控えたところもあったと聞くが、そんなネガティブな面などまったく気にならないほど、会場全体が「日本文化が大好きでたまらない!」という来場者、そしてスタッフの熱い気持ちに満ちていた。

 気温が30℃を超える日もあり、暑さと人混みに肉体的には大変疲れた4日間だったが、そのよい雰囲気、フランスのみならず、欧州からの熊本の被災地への思いを感じ、気持ち的には元気をもらった4日間だった。