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日本旅行業協会、植樹から8年かけた長瀞の「JATAの森」プロジェクトで最後の手入れ

旅行業界団体が観光と環境の両立に向けた活動

2016年7月2日実施

埼玉県長瀞町宝登山「JATAの森」で行なわれた下草刈り

 JATA(日本旅行業協会)は、旅行業界団体として観光と環境の両立に向けた活動の「JATAの森」プロジェクトの一環として、森の下草刈りを実施した。「JATAの森」は、埼玉県長瀞町(ながとろまち)宝登(ほど)山登山道の途中に広がる一帯にあり、2009年10月に植樹。その後、8年間にわたって定期的に森の下草刈りや間伐を行なうなどして手を入れ、宝登山麓の森を育んできた。

 なお、木々が根付き大きく育つめどがついたことから、今年の下草刈り作業でいったんの区切りをつけて、このプロジェクトは終了する。森はそのまま成長を続け、宝登山の木々の一部となる。今回はJATA会員企業の社員と家族の有志が参加して行なった最後のJATAの森の手入れをレポートする。

秩父の長瀞にある宝登山

 JATAの森がある宝登山は、秩父の長瀞にある標高497.1mの小高い山。中腹から山頂近くまでロープウェイが結んでいる(大人往復820円)。山頂付近にはウメやロウバイが植えられる園が広がり、開花シーズンの春は多くの人でにぎわう。東京都心からのアクセスもよいので、気軽にハイキング気分で楽しめるスポットだ。

JATAの森に近い西武秩父駅には、東京・池袋から西武鉄道の特急レッドアロー号を使うと1時間10分ほどで到着する
貸し切りバスに乗って宝登山ロープウェイ宝登山麓駅を目指す
宝登山ロープウェイの入口には有料駐車場があり、自家用車でも気軽に訪れることができる
宝登山ロープウェイの入口付近で自家用車で参加のメンバーと合流
入口から少し登ると宝登山ロープウェイの宝登山麓駅がある
宝登山麓駅には「鉄道むすめ」キャラクター 秩父鉄道 駅務係「桜沢みなの」との記念写真スポットがあった。撮影用の制帽も用意
ロープウェイに乗り込む
ロープウェイは5分ほどの乗車。眼下に長瀞の町が見える
宝登山頂駅に到着
長瀞のキャラクター「ながとろトロロ」のクレーンゲームがあった
山頂駅から山頂までの周辺案内図
いったん山頂方面に向かう
山頂駅から山頂までにはロウバイやウメ、ツツジ園などが広がり、散策できる
宝登山頂の標識、標高497.1.m
山頂からはJATAの森に向けて少し下山する
ほどなくJATAの森の看板が見えてくる。この看板の下方面に広がっている

植樹から8年、木々が成長したJATAの森に到着

JATAの森周辺に到着
作業に先立って、担当者から挨拶や説明があった

 山頂から散策しながら下山方向に歩くと、ほどなくJATAの森に到着した。

JATA社会貢献委員会副委員長、アルパインツアーサービス取締役会長 黒川惠氏

 JATA社会貢献委員会副委員長で、アルパインツアーサービス取締役会長の黒川惠氏より、「JATAの森は、2009年(平成21年)10月24日から植樹を開始しました。今年で8年目になります。この事業は本来2年前に終了という話があったのですが、なんとかあと2年続けようと、今日を迎えました。残念ながら今回で下草刈りは最後になります。とは言ってもこの宝登山は長瀞から近く、都心からのアクセスもよいので、また訪れていただければと思います。長瀞は宝登山だけではなく、たくさん観光スポットがありますので、旅行業界としてもよい場所じゃないかと思います」と開催の挨拶があった。

長瀞町長 大澤タキ江氏

 続けて一行を出迎えてくれた地元の長瀞町長 大澤タキ江氏から、「近年、長瀞にくる観光客も増え、年間250万人程度までになっています。この宝登山にしても、『四季の丘』と名付け、後年にわたって観光地となるように力を入れています。お子さまたちが大きくなったとき、きれいに整備したという思い出の場所として、また訪れてもらえればと思います。景色のよい場所ですので、景色を楽しみながら作業してください」と挨拶があった。

 下草刈り用の鎌は大型のものを使うため取り扱いの注意があり、班別に分かれて作業が行われた。天候は薄日が差す程度だったが気温は30度近くあり、山の上なので多少風があって涼しいが、熱中症に注意して、時間を区切って多めの休憩をとりながら作業が行なわれた。

下草払い用鎌の取り扱い方法をレクチャー
下草払い用のやや大型の鎌
刃の部分もかなり大きめ。休憩中など使わない時は常にカバーをしておく
子供たちは、一般的な小型の鎌を使った
あらかじめ決められた班に分かれて作業
作業前のJATAの森、草が成長している

 作業は1時間少々だったが、下草を刈ったあとは明らかにきれいになった。植樹から8年が経過し、草丈より大きくなったため、以後は草に覆われてしまうことはなく、大きな木々に成長するとのことだ。

8年前に植樹した木々は草丈に負けずに育っている
下草刈り作業中の様子

 樹木は、ヤマモミジやヤマカエデ、ヤマザクラなど、宝登山に合った木が10種類ほどが選定され植樹されている。開花や紅葉のシーズンには、登山客の目を楽しませてくれる。500mほどの標高なので、ロープウエイを使わずに歩いてみてもよいだろう。

植樹されている樹木、ヤマモミジ
植樹されている樹木、ヤマカエデ
植樹されている樹木、ヤマザクラ
下草刈り作業後のJATAの森。立て看板が、今後残るかどうかは未定
下草刈り作業後は、一見してすっきりしたのが分かる
秩父農林振興センター 森林技術・林業支援担当 担当部長 形山修一郎氏

 下草刈り作業後に、秩父農林振興センター森林技術・林業支援担当部長の形山修一郎氏が挨拶、「2009年(平成21年)5月に『森作り協定』を締結し、その後植樹をし、8年間手入れをしていただき、木々が下草に負けないくらい大きくなりました。もう、下草刈りをしなくても木はそのまま成長して森になります。8年間ありがとうございました。また長瀞を訪れた際には、この森がどうなっているか見守っていただければと思います」と締めくくった。

最後にJATAの森看板前にて参加者全員で記念撮影をして、そのまま下山し解散となった。
作業後は徒歩で下山

長瀞は人気の観光スポット、長瀞ラインくだりを体験

 JATAの森のある長瀞町は、首都圏からの気軽に訪れることができる観光スポットとして人気。秩父鉄道の長瀞駅へ向かう場合は、西武鉄道の西武秩父駅から秩父鉄道に乗り換えて行くことができる。都心からのアクセスもよいので、気軽に訪れてみてほしい。

長瀞の老舗旅館「長生館」看板。流しそうめんも楽しめる
長生館の外観
ランチの食事。豚の味噌漬けや「おっきりこみ(煮ぼうとう)」、刺身コンニャクなど、秩父の名物を季節に応じて提供される

 昼食は、長瀞の老舗旅館「長生館」でとった。1915年(大正4年)創業の歴史ある旅館。宿泊はもちろん、日帰りプランも4500円から用意されている。食事と露天風呂が楽しめ、長瀞観光の拠点に最適。長瀞駅、長瀞ラインくだりやラフティングの乗降ポイントにも歩いて行ける。

 昼食後には、荒川を船で下る長瀞ラインくだりも楽しんでみた。コースは2種あり、1コースは20分ほど。長瀞駅近くの「岩畳」を中心に、上流の親鼻橋から(Aコース)と下流の高砂橋へのコース(Bコース)がある。1コース大人1600円、全コースは3000円。各ポイントへは無料のバスが通っている。

 今回乗船したのはAコース。こちらは、秩父鉄道のSLパレオエクスプレスも通る荒川橋梁の下をくぐり、急流スポットの「小滝の瀬」や岩畳の岩と渓谷を間近に楽しめる。

長瀞ラインくだりの乗り場。もっとも上流の親鼻橋から
長瀞ラインくだり
秩父鉄道の荒川橋りょうの下をくぐる
段差のある急流はお楽しみのスポット
特徴ある岩肌の景色を楽しめる
岩畳周辺は歩いて散策できるようになっている
ラインくだりから長瀞駅までは、お土産物や食事処が並ぶ
懐かし目の射的遊びなども
レトロな外観の秩父鉄道 長瀞駅。ここから西武鉄道との乗換駅となる御花畑駅まで行き、西武秩父駅へ乗り換えられる
偶然に目の前をSLパレオエクスプレスが通った。土曜日、日曜日を中心に運行している
長瀞駅で販売されていたグッズなど
蒸し暑かったので途中でラムネを飲んだ。秩父に自生するカエデ茶葉からお茶を作ってラムネにした「かえでのラムネ(160円)」。ほのかにメープルシロップに似た味がする

 何気なく見る観光地の景色も、このようなさまざまな社会貢献事業によって守られている場所も実はとても多い。このJATAの森プロジェクトは今回で終了するが、JATAは今後も観光に関する何らかの社会貢献活動は続けていくとのこと。今後の活動にも注目していきたい。