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訪日中国人受入旅行会社の団体・中連協が総会。中国からの団体旅行復活に向け準備を

2023年6月27日 実施

中連協が総会を行なった

 訪日中国人を取り扱う旅行会社からなる中華人民共和国訪日観光客受入旅行会社連絡協議会(中連協)は6月27日、24回目の通常総会とセミナーを開催した。通常総会では会長の黒澤信也氏(JTBGMT:JTBグローバルマーケティング&トラベル 取締役)が退任し、新会長にJTBGMT 代表取締役社長兼執行役員の石田恒夫氏が就任した。

中連協 前会長 黒澤信也氏

 会の冒頭で前会長の黒澤信也氏は、2020年の就任から今までを振り返り、「コロナの脅威は過去のものとなり、水際対策もすべて解除された。あとはツーリズムにおける健全な国際交流再開を待つのみ。(中国からの訪日団体旅行が)再開されれば中国需要の急拡大は間違いないと確信している」と語るとともに、旺盛なショッピングなどの旅行消費の復活にも期待がかかるとした。

 今後については「中連協として中国・日本双方の業界関係者との連携を密にし、質と量のバランスが取れた新しい訪日インバウンドの成長の一翼を担うよう具体的に活動していきたい」と話した。

中連協 新会長 石田恒夫氏

 一方、新会長の石田恒夫氏は、2023年が日中平和友好条約締結45周年であり、インバウンドが回復しつつあることに喜びを示すとともに「これから始まる中国市場の動きに備えるために(会長職は)重責と思っている。皆とともに中国市場の幕開けを願って準備していきたい」と話した。

 加えて、石田氏は訪日市場が急速に回復するなか「対応している日本の旅行会社がパンクしている」と現状を指摘。中国人の訪日旅行が本格的に回復し、大量の中国人が日本を訪れたときを想定して準備を進めることが「我々に課せられた使命」と強調するとともに、「1人でも多くの中国人が日本に来て文化や歴史、自然を楽しみ日本人と交流し、中国に持ち帰り、日中友好の一つの大きなきっかけになるよう、力を合わせていきたい」と意気込みを語った。

観光庁 国際観光課 アジア市場推進室室長 寺井陽子氏

 来賓の観光庁 国際観光課 アジア市場推進室室長の寺井陽子氏は、訪日中国人市場の現状として、中国当局による日本への団体旅行販売の禁止により、1月から5月までの訪日中国人は19年比10%程度であることを説明した。

 そのうえで氏は「今はなにもできないわけではない。日本の地方ならではの食文化やアクティビティ、特産物といった魅力を活かし、訪日中国人のツアーが再開したら地方を訪れてほしい」と語り、そのために観光庁として、地方の訪日向けイベントを紹介する「観光再始動事業」などに取り組んでいることを紹介。「観光再始動事業を訪問先に組み込んだ商品を用意するなど準備してほしい」と旅行会社に呼びかけた。

外務省 領事局 外国人課首席事務官 小林龍一郎氏

 また、外務省 領事局 外国人課首席事務官の小林龍一郎氏は、「外務省としていかに日中友好関係を築くかという観点から、中国からの観光は大いに期待している」と述べ、6月19日から中国で電子ビザを開始していることを説明した。

 30日以内の観光目的の短期滞在ビザを対象に試験的に実施しているが、すでに1000程度の利用があったとし、「どの程度メリットあるかはこれからだが、受け皿としてはどんと来いと思っている。団体旅行が解禁されていくらでも査証が対応できる用意はできており、その日を待っている」と話した。

中国駐東京観光代表処 首席代表 欧陽安氏

 中国側からは中国駐東京観光代表処 首席代表の欧陽安氏が出席。中国人の旅行はリベンジ需要の高まりもあり急激に回復しつつあるとし、新型コロナ関連の行動制限が緩和されたあとの最初の大型連休である労働節の連休(4月29日~5月3日)では国内旅行者数は延べ2億7400万人で前年比70.9%増、コロナ前比で19%増になったことを説明した。海外旅行についても堅調に回復しており、6月の3連休では前年比39%増、19年比の64.6%にあたる396万3000人が出国したという。

 氏は日中間の国際線が徐々に回復し、航空運賃も下がるなか「コロナで3年間抑制されていたリベンジ需要により、中国人の海外旅行者数が本格的に回復すれば世界の観光業にとって大きな追い風になる」と強調。団体旅行の早期解禁に期待するとともに「観光は双方向なので、日本人にもぜひ中国に来て観光してほしい」と呼びかけた。

観光庁 国際観光課 アジア市場推進室係長 瀧口賀子氏

 総会後には2つのセミナーが開催された。このうち観光庁国際観光課アジア市場推進室係長の瀧口賀子氏は「アフターコロナにおける中国市場の動向」として、中国人の旅行形態の変化などを解説。2012年から2019年までの中国人の旅行形態を比較すると団体観光と個人旅行の比率が2012年は7対3だったところ2019年は3対7となり、個人旅行が急増。ディープな体験を求める旅行者が増加傾向にあるほか、モノ消費からコト消費に移行し、体験を重視する層が増えた。また、中国人は雪に対する興味関心が高いという。

 今後はゴールデンルート以外の地方への送客が課題との考えのもと、リピーター層の地方分散促進とファーストタイマーの獲得のため、自然・伝統文化・食を中心としたコンテンツを訴求。20代から40代をターゲット層に設定し、このうち訪日経験者の夫婦・パートナー・子連れ家族と未経験者の夫婦・パートナーを「一般観光」、世帯可処分所得が月額215万円以上の層を「高付加価値旅行」とし、それぞれプロモーションを展開していく考えだ。このほか同氏は観光庁が3月に設定した、高付加価値なインバウンド観光地づくりの「モデル観光地」についても解説。11の地方で中国人を含む訪日客の誘客に取り組む。

2025年日本国際博覧会協会 機運醸成局 地域・観光部審議役 川村泰正氏

 もう1つのセミナーでは2025年日本国際博覧会協会 機運醸成局 地域・観光部審議役の川村泰正氏が2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)について解説。4月13日に起工式を開催したばかりの万博会場について、イメージ図や動画を使って紹介した。見どころは一周約2kmにおよぶ「大屋根(リング)」で、世界最大級の木造建築物だという。

 大阪・関西万博については現在153か国・地域と8つの国際機関が参加を公式表明しており、4月27日には中国も公式参加契約を締結しているところ。川村氏は大阪・関西万博を組み合わせたツアーの造成を提案し、「ぜひ皆さまには中国からのお客さまを西日本に運んでもらいたい」とアピールした。

 大阪・関西万博は海外から350万人、全体で2820万人の来場を予定しており「万博+全国観光」を推進し、地域への訪日客の送客をはかり、ツアーや体験コンテンツの開発をめざしポータルサイトで情報を発信。観光庁やJNTOと協力したプロモーションも実施する。