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JAL、2022年度は344億円の黒字で配当も復活。好評のセール「スマイルキャンペーン」は今後も続ける意向
2023年5月5日 17:00
- 2023年5月2日 発表
JALは5月2日、2022年度(2023年3月期)決算と2021~2025年度の中期経営計画をより確実なものとする「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2023」を発表した。
出席したのは、代表取締役社長 グループCEOの赤坂祐二氏、専務執行役員 経営企画本部長 グループCFOの斎藤祐二氏、執行役員 財務・経理本部長 経営管理本部長の弓﨑雅夫氏。
2022年度通期の連結決算は、売上収益が前期比101.5%増(6928億円増)の1兆3755億円、EBIT(利払前税引前利益。以前の指標でいう営業利益)が645億円(3040億円増)、純利益は344億円(2119億円増)となり、2020年3月期以来の黒字を計上した。各国の水際対策が緩和されるなかで航空需要は回復基調にあるが、燃油市況や急激な円安の影響もあって燃油費は前期比122.3%増(1778億円増)の3233億円となり、営業費用は前期比43%増(4044億円増)の1兆3446億円と増加。そのなかでもコスト管理の徹底により実質固定費を目標値である5000億円を下回る4925億円に抑え、収益改善に努めたと説明した。
事業別に見ると、フルサービスキャリア事業は国際線、国内線ともに大幅に改善を見せている。国際線についてはアジア~北米間の通過需要の取り込み、水際対策の緩和によるインバウンド需要の回復もあり、国際旅客収入は前期比507%増(3487億円増)の4175億円を計上。国内線は全国旅行支援による需要喚起や高需要期の回復もあり、国内旅客収入は前期比91.9%増(2160億円増)の4511億円となった。LCC事業は早期に黒字化したZIPAIRの貢献もあり、317億円を計上している。
コロナ禍においても活況であった貨物事業は22年夏以降は需要の減退も見られるが、アジア~北米間を中心に堅調に推移しており、貨物郵便収入は前期比2.9%増(64億円増)の2247億円を計上した。
財政状況は自己資本比率は前期の41%から39.3%へ若干ながら低下しているが、健全な水準を維持していると説明。現預金は6392億円、未使用のコミットメントライン2500億円も維持していることから十分な手元流動性は確保しているとのこと。航空旅客需要が回復基調にあることから、営業キャッシュフローは2929億円、フリーキャッシュフローも1801億円と大幅に改善している。
当期配当については、復配をアナウンスしている。20年度、21年度は無配であったが、当期は1株当たり25円の配当を行なう。
なお、2023年度(2024年度3月期)の通期業績予想については、売上収益が1兆6580億円、EBIT1000億円、純利益550億円を見込んでいる。旅客需要については、国内線でコロナ前の2019年度比で94%程度、国際線は65%程度の回復を予想している。配当の予想については、1株当たり40円、中間配当を20円としている。
赤坂氏は、2030年に向けたJALグループの指針を安全・安心とサステナビリティを2本柱とした「JAL Vision 2030」の達成をより確実なものとするための中期経営計画であるローリングプラン2023を発表した。昨年のローリングプラン2022では、2023年にはEBIT(利払前税引前利益)をコロナ前の水準である1700億円へ戻すとしていたが、昨今の世界情勢や物価高騰、人材不足を検討した結果、目標を1000億円に修正した。一方、2025年には1850億円以上とする点については変更しないと説明した。
今回策定したローリングプラン2023においてポイントとなるのは、ESG戦略を最上位に位置付けて運営することだとしている。ESG戦略は、人・モノの移動で社会的なつながりを創出し、その移動とつながりが地域経済の活性化、さまざまな社会課題の解決、社会的な価値の創出につなげるものだ。そのESG戦略を推進するために、事業構造改革、DX戦略、人財戦略(人的資本経営)、GX戦略を実行していく。
事業構造改革のポイントとしては、省燃費機材を積極的に導入して環境負荷を考慮しながらネットワークを拡大させ、ボーイング 767-300ER型機を改修した専用貨物機(フレイター)の導入やヤマトHDとの提携による貨物輸送の強化を図る。それらを実行するうえで欠かせない人材戦略については、多種多様な価値観を尊重できる人事制度の構築や評価、育成などを積極的に行ない、個々の生産性を向上させるとしている。
事業別の詳細については斎藤氏が説明した。省燃費機材としてはすでに発表しているとおり、大型のエアバス A350-1000型機を羽田~ニューヨーク線に今冬に導入する予定であり、25年度末までに9機の導入を計画している。更新による1機当たりの燃費は約20%向上するそうで、新型機であるエアバス A350型機やボーイング 787型機の比率を19年度の29%から25年度末には47%まで引き上げる。
貨物専用機の導入も大きなポイントで、現在は旅客用として運航しているボーイング 767-300ER型機を3機改修し、23年度末までに2機、24年度に1機を貨物専用機として運用する。また、ヤマトHDとの提携により、24年度から貨物専用のエアバス A321型機を運航させる。導入を決めた背景にはeコマースの伸長と宅配便の2024年問題があり、機材は昼間は国内を中心に運用し、夜間は東アジアのeコマース需要に活用していきたいとしている。それにより、取扱量の減少から23年度は1720億円と減収を予想している貨物郵便収入を再び2000億円台に戻したいと説明した。
質疑応答では今後の航空旅客需要の見通しを尋ねられ、赤坂氏は国内線は観光を中心にほぼほぼ回復してきているが、国際線は「まだ戻り切っていない」と返答した。燃油サーチャージの高騰もあって単価が上昇し、23年度予想の国際旅客収入自体はコロナ前を上回るが、まだまだ回復したとは言い切れない状況であるとしている。また、観光需要は力強く回復しているが、ビジネス需要についてはまだ少し弱いという見立てだ。
国内線が一律6600円になる「JALスマイルキャンペーン」について手応えを聞かれると、まずは当初のシステム問題について謝罪した。スタート時につまずきもあったが販売は非常に好調で、新規予約が7割、買い直しが3割で増収に寄与したことを報告。閑散期の需要喚起に対する方策としては有効であるとし、「今後もこういったキャンペーンは状況を見ながら実行していきたい」と答えた。