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4月16日開通の新東名 伊勢原大山IC~新秦野ICを見てきた! 区間の6割を占めるトンネルにも工夫アリ
2022年4月7日 06:00
- 2022年4月16日 開通
NEXCO中日本(中日本高速道路)は、4月16日15時に開通する新東名高速道路(E1A)伊勢原大山IC~新秦野IC間12.8kmを報道公開した。
この区間の開通により、新東名は海老名南JCT~豊田東JCT(約253km)のうち約9割にあたる約228kmが利用できるようになる。今回の開通区間の内訳としては12.8kmのうち、トンネル部が7.5km、橋梁高架部2.4kmに対し土木部はわずか2.9kmとトンネル部が約6割を占め、土木部は2割強という山岳部を貫通する高速道路らしいもので、実際に通行してみてもカーブが緩やかで勾配も緩い印象が残る。
なお、今回開通する区間は4車線での暫定施工のため、最高速度は100km/h。ちなみに、東名高速道路で東に向かって走行するクルマが、伊勢原JCTで折り返すように今回開通する区間の西行きに入ることはできない(逆も同様)。
開通区間の約6割の距離を占めるトンネルの内部の設備
最初に見学をしたのは羽根トンネル(2921m)だ。新秦野IC方面に向かう上り線では、羽根トンネル入り口の前にフルカラーLEDの大型図形表示板が見えてくる。おおむね60km先までの交通規制や混雑状況が分かるので、海老名JCTの手前で都心方向の道路状況を見通すことができるのはとても便利。
そのままトンネルに進入すると、中間付近の天井にプロジェクションマッピングの技術を利用したという宙に浮いたような文字が見えてくる。通常は出口までの距離を示しているが、非常時には停止などの行動を促すような表示も行なうとのこと。新東名のような大型車の交通量も多い道路のトンネルにおいて、このような高い位置での表示はとても見やすい。なお、この設備は高取山トンネル(3902m)にも設置されている。
同じく天井に目を向けると排煙設備(ジェットファン)が見える。長いトンネルにはおなじみの設備だが、こちらの設置場所は従来のような車線上ではなく非常駐車帯の上にあり、走行中のドライバーに圧迫感がない。また、点検のための車線規制や通行止めの必要がなくなるのは、利用者にとってとてもありがたいことだ。
この装置は設置場所が路肩側に寄った分、排煙装置の両端は10度ずつ本線側に曲げられているのが特徴で、さらに後方に並んで見えるのは火災時の水噴霧設備。こちらも天井付近ではないので、アーチ型の天井が非常にすっきりと見える。
非常駐車帯の対面には、大きな非常口が見える。こちらは外ではなく、逆車線側のトンネルにつながる避難連絡通路の扉だ。大きな開口部は利用者はもちろん、火災時の消防車など緊急車両が通行できるように設計している。
なお、今回見学した非常口内の通路は、2本のトンネルを最短距離ではなくS字の長い距離で結んでいたが、この区間の上下線には高低差があるため、通路の勾配がゆるやかになるように、あえて最短距離では結んでいない。この設計は、開口部のサイズなども合わせて、このエリアを管轄する秦野消防署と検討のうえ決められたという。また、非常駐車帯には、非常電話や消火栓などを設置している。
周辺環境を考慮した照明
今回の開通区間の多くはトンネルではあるが、外の区間は自然豊かな環境のなかを通過している。交差する河川に生息するホタルの生育、繁殖をはじめとするさまざまな自然環境への影響を考慮して、照明は道路外への光漏れを軽減する低位置照明方式を採用している。
人の腰ほどの高さしかないLED照明は通常は路面を照らしているが、濃霧時には路肩の白線を強調した配光特性になり、光の拡散による光幕の発生を抑制する。また、トンネル内の照明もコンパクトなLEDタイプで、トンネル出口付近では照明灯具の設置間隔を狭めて中央部より明るくして、外光との明るさのギャップを低減するなど、ドライバーの負担を減らすような工夫が随所に見られる。
着実に進化していく料金所
新秦野ICの料金所は道路情報板、ETC車線表示板、信号機を同一筐体に集約した新しいタイプを採用し、それに伴い全体的にコンパクトになり、柱や梁もスリム化を果たしている。あわせて景観に配慮した色を採用し、ドライバーへの圧迫感を軽減している。
また、新秦野IC料金所脇の事務所は内装材に秦野産木材を使用しているという。この事務所、トイレは一般利用者でも使用できるものの数が少ないので、あくまで緊急用にとどめておいた方がよいだろう。
現時点で新秦野IC以西は未開通なので、ここから乗る場合は都心方面のみとなり、都心方面からの利用者はここで自動的に降りて、国道246号線と合流する。ちなみに料金所通過後の分岐を左に行けば伊勢原方面、右に行けば松田方面で、東名高速でさらに西へ向かう場合は松田方面へ行き、大井松田ICを利用するのが最も近い。
今回の区間は、上下線それぞれに秦野丹沢SAを予定しているが、今回の開通時には秦野丹沢スマートICだけが利用可能になる。商業施設などは今後建設を進めていくという。
自然環境豊かな神奈川県西部を横断する今回の開通区間は、丹沢大山国定公園や丹沢表尾根、大倉、県立秦野戸川公園など自然豊かな観光地へのアクセスが容易になる。
一方で、近隣の工業団地から都心方面への所要時間が大幅に短縮され、例えば大秦野工業団地入口から海老名JCTへの所要時間は35分から20分へと大きな短縮が見込まれるなど、周辺地域への経済効果も大きい。
加えて交通の大動脈、東名 伊勢原JCT~大井松田ICや国道246号線と並行しているため、いずれかの道が事故などで通行止めになった場合は代替ルートとして機能することも期待され、今回の約13kmはさまざまな面で影響の大きい開通となる。