トピック

トヨタ「C-HR」のルーツを訪ねて「トヨタ産業技術記念館」まで日帰りドライブ。「山本屋本店」で味噌煮込うどんも堪能

20年で大きく進化したトヨタ ハイブリッドシステムを走って見学して実感

東京から片道約350km走って、トヨタ「C-HR」の“全部盛り”の理由を体感してきた

 人にしてもモノにしても、興味を持ちだすとそのルーツを辿りたくなることはないだろうか? 今、目の前にある現実に至るまで、どのようにして育ち成長してきたのか。原点と経緯を知ることで現在をさらに好きになれる。だからこそ、ルーツを辿りに出かけたくなるのだ。

 そんな旅に出たいと思ったのは、トヨタ自動車「C-HR」のハイブリッドモデルに乗ったときだった。現在流行りのSUVボディを持ちながらも、スポーツカーのような振舞いもこなしつつ、ハイブリッドシステムによって燃費もいいという“全部盛りグルマ”だから恐れ入る。実はコレ、とても難しいことなのだ。背が高いクルマをスポーツカーのように走らせることは至難の業。レーシングカーのようにペッタンコなクルマで走りがいいのは当たり前だが、C-HRの場合はその逆を行きながら、華麗な身のこなしを実現している。そしてそもそもハイブリッドカーである。駆動用バッテリーをはじめとするハイブリッドシステムを搭載することにより、鈍重で走りはバツ。以前ならそれが当たり前の世界だった。初代「プリウス」が世に出たころは、こんなクルマが誕生するなんて夢にも思わなかったのだから……。

 そこで今回目指したのは、愛知県の名古屋市にある「トヨタ産業技術記念館」だ。そこにC-HRに至るまでのハイブリッドシステムが並べられていると聞き、東京からロングドライブをしてみようとなったわけだ。朝の8時に編集部に集合してC-HRで走り出せば、お昼過ぎには到着する計算である。見学して食事をとってトンボ帰りすれば、なんとか日帰り旅行を達成できそうだという計画だ。とはいえ、片道およそ350km。順調にいって4時間ちょっとという行程だ。ハイブリッドカーだからペースを抑えて燃費を出してみたい気もするが、今回はそこに気を遣ってはいられない。それにガマンするような旅は疲れるだけだし、というわけで、エアコンも25℃設定のまま走った。

朝の8時にトラベル Watch編集部のある「神保町三井ビルディング」を出発。「トヨタ産業技術記念館」まで片道およそ350kmのドライブのスタートだ
富士山などを横目に楽しみつつ、東名高速道路をひた走る

 都内の渋滞を抜けて東名高速道路に入ると、改めてC-HRは快適なクルーザーだと感じる。SUVで走れるクルマだと聞けば、足まわりは引き締められて乗り心地がわるいのではと思う人もいるだろう。だが、決してそんなことはない。路面の凹凸を見事に吸収しながらフラットライドを可能にしてくれる。ドイツ・ニュルブルクリンクのレースに出場してまで鍛え上げた強靭なボディとシャシー、空力性能にこだわったエクステリア。そして路面の凹凸に応じてハイブリッドシステムのトルクをリアルタイムに操ってクルマの姿勢を抑え込む制御もまた活きている。だからこそフラットに走り、目線もブレず疲れない。ほどよくホールドしてくれるシートもまた一役かっているのだろう。結果として名古屋往復を1人でドライブしたが、明日も元気でいられそうな余力を残していた。それはC-HRの快適性があったからこそではないだろうか。そんな走りを演じながらも、燃費は23.3km/Lを記録。フツーに使ってそれだけ走れば十分である。

ドイツ・ニュルブルクリンクで鍛え上げられたC-HRは“快適なクルーザー”で、ロングドライブでも疲労を感じさせない
トヨタ産業技術記念館はJR名古屋駅からクルマで10分ほどの場所にある
トータルでの燃費は23.3km/L。エコランもしない気楽なドライブの結果としては十分な数値だ
メーターパネル中央にある4.2インチTFTのカラーマルチインフォメーションディスプレイは燃費のほか、ハイブリッドシステムのエネルギーモニターやGモニターなど多彩な情報を表示可能
トヨタ産業技術記念館の所在地は愛知県名古屋市西区則武新町4丁目1番35号。開館時刻は9時30分~17時で、休館日は月曜日(祝日の場合は翌日)と年末年始。入場料は大人500円、中高生300円、小学生200円。65歳以上は無料

 さて、そんなこんなでトヨタ産業技術記念館に到着した。この地はトヨタグループ創始者である豊田佐吉氏が自動織機の研究開発をするために「豊田自働織布工場」を設立した場所だそうだ。この記念館は「研究と創造の精神」と「モノづくり」の素晴らしさに触れられるようにと、これまでのトヨタグループの歩みを紹介している。自動織機の技術で特許を得ていた自信をトヨタ自動車の創始者である豊田喜一郎氏が受け継ぎ、自動車の開発に乗り出していった流れがこと細かに展示されている。その歴史を元に制作され、最近第2弾が放映されていたTBSのTVドラマ「LEADERS II」で使われた「トヨダ トラック G1型」もそのまま置かれている。エンブレムは劇中車用に製作された「AICHI」を残しており、ドラマファンにはたまらない演出が行なわれている。

トヨタ産業技術記念館は「近代化産業遺産」に認定されており、ロビーには“基本理念のシンボル”として、豊田佐吉氏が1906年に発明した「環状織機」を動態展示
設定された見学コースに沿って、織物からスタートしたトヨタグループの歴史を見学
自動車生産につながっていく金属加工の作業実演も披露されている
展示スペースは「繊維機械館」と「自動車館」の2つに分かれている
TVドラマ「LEADERS II」にも登場した「トヨダ トラック G1型」は、ドラマ仕様の「AICHI」エンブレムを装着していた
「自動車館」は7900m2の敷地に13台のトヨタ車を展示

 そして最後は、C-HRのご先祖様となるプリウスの展示に駆け寄ってみる。そこには1997年に登場した初代プリウスと共に、これまでのハイブリッドシステムが4世代に渡って並べられていた。一見して理解できることは、バッテリーがみるみる小型化された経緯だ。初代のバッテリーはかなり大型であり、それをリアシートの背もたれの奥に搭載していたのだから、運動性能など見込めるわけがないことが理解できる。バッテリーが小型化され、搭載位置が次々に低重心化されることによってクルマが安定するようになったというわけだ。また、駆動系やモーターもまたコンパクトにまとめられるようになり、長さも抑えられるようになったこともまた運動性能に直結している。重たいバッテリーやエンジン、駆動系をクルマの低い位置、さらには中心にできるだけ配置することができるようになったことが、今日のC-HRに繋がっているのだと改めて理解することができる。ハイブリッドシステムの進化なくして“全部盛り”のC-HRはなかったというわけである。

1997年12月に世界初の量産ハイブリッド乗用車としてデビューした初代「プリウス」。トヨタのハイブリッドカー累計生産は2月に1000万台を突破している
初代プリウスから始まった、4世代のハイブリッドシステムをカットモデルで紹介
車両展示以外にも、エンジンやトランスミッション、ステアリング、ボディ、サスペンションなどの技術の変遷を分かりやすく展示している
環境技術のハイブリッドだけでなく、安全技術について追求するために開発された安全実験車「トヨタ ESV」の車両展示も行なわれている
トヨタ ESVと並んで、衝突実験などに使われるダミー人形も置かれていた
走行時にCO2や環境負荷物質を排出しない次世代のエコカーとして2014年12月に発売されたセダンタイプのFCV(燃料電池車)「MIRAI(ミライ)」も展示
館内にはお土産品を購入できる「ミュージアムショップ」や「ミュージアムカフェ」などが用意されている

 名古屋に来たシメには、やっぱり味噌煮込みうどん! というわけで駆け込んだのは「山本屋本店」さん。コシがある麺と甘すぎない味噌の味が絶妙なバランスで大ファンになりました。名古屋周辺にはいくつか店舗を出しているので、皆さまもぜひお試しあれ。

 こうして、たった数時間の見学ではあったが、トヨタの歴史とハイブリッドの流れを目の当たりにすることで、今ある現実は確実に先駆者の研究と創造の精神の賜物であることがよく理解できた。帰り道、すべてが当たり前のような快適性と走りを堪能していると、いつしかトヨタとC-HRがもっと好きになっていた。

前回記事はこちら「新型コンパクトSUV、トヨタ「C-HR」に乗って“へぎそば 中野屋 湯沢本店”へ」

C-HR G (ハイブリッド)まとめコメント

協力:トヨタ自動車株式会社

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、ジムニー(JB64W)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34・納車待ち)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学
Movie:石岡宣慶