SIMフリースマホで海外SIMを使おう!

イスラエル「Orange」

データ3GBで約5000円で利用可能、通話無制限のプランも

嘆きの壁の前で「MADOSMA」+Orange SIMを組み合わせて使用

 今回はイスラエルの通信キャリアである「Orange」(Partner Communications)のプリペイドSIMを紹介する。Orangeは、かつてはフランステレコムという名前の国営通信会社だったが、1988年に民営化されたあと、ブランドをOrangeに変更してグローバルに展開している通信会社だ。イスラエルでは古くから携帯電話サービスを提供しており、イスラエルの3大キャリアの1つとなっている(ほかの2社はCellcom、Pelephone Communications)。

 Orangeはイスラエル全土で3Gおよび4G LTEのサービスを提供しており、ポストペイド(月極契約)だけでなくプリペイドSIMカードがイスラエル全土で販売されている。今回筆者は夏休みとしてイスラエルを訪れたので、OrangeのプリペイドSIMについての使い勝手などについてお伝えしていきたい。

 日本人にとっては、イスラエルと言えば“紛争地帯”というイメージで、なんとなく危なそうというイメージがあるだろう。もちろん、現在でもパレスチナ問題は解決しておらず、紛争地帯であるということには変わりはない。しかし、現実的な目で見てみれば、国連がイスラエルの領土と認めている地域はもちろんのこと、いわゆる占領地区(ヨルダン川西岸地区など)であってもイスラエルが実効支配している地域(つまりはパレスチナ自治政府の管理下ではない地域)では、治安はわるくない。街中そこら中にイスラエル軍の兵士が配置されており、依然としてこの国が戦時下にあるということは実感させられるが、逆に、それ故に危ないと感じたことは一度もなかった。

 外務省の渡航情報でも、パレスチナ自治政府の管理下にある地域(こちらは渡航延期勧告となっている)を除いて“十分注意”の扱いになっていることを付け加えておく(8月中旬時点)。

 観光地としては、キリスト教、イスラム教という世界三大宗教のうちの2つ、そしてユダヤ教の聖地でもあるエルサレムを訪れるというのが定番の観光だと思うが、死海を訪れて浮いてみたり、マサダ要塞などの歴史的遺産を訪ねてまわるのも中々できない経験だ。

ユダヤ教の聖地となる「嘆きの壁」(The Western Wall)。敬けんなユダヤ教徒が祈りを捧げている。なお、異教徒でも祈りを捧げることが可能だが、男性の場合にはキッパと呼ばれる帽子をかぶる必要があり、入り口で貸してもらえる
エルサレムの旧市街を「ダビデの塔」から眺めたところ、金色に光っているドームが、イスラム教の聖地の1つである通称“岩のドーム”
テルアビブの海水浴場。イスラエルは地中海に面しているので、海はコバルトブルーで非常に美しい
ヨルダンとの国境地域にある「死海」。内海だが、塩湖となっている。近年では全体的に縮小傾向にある
死海の海水(?)浴場。みな浮くことを楽しそうに体験している。また、死海の泥はミネラル分が多いとされており、女性はその泥を塗りたくってお肌をすべすべにするのが定番
砂漠に突如として現れる台形の丘の上にある「マサダ要塞」へ行くロープウェイ。帝政ローマ時代に、ローマの支配に反発したユダヤ教徒とローマ軍が戦い、ユダヤ教徒が玉砕した要塞として知られている。このように、スターウォーズの撮影にでも使われそうな風景だ
イスラエルの名産はフルーツ。写真の緑のジュースは、ライムレモネードスムージー。さっぱりとした味で、非常に美味しい

SIMカードは街中のショップで買った方が安かった

 日本からイスラエルを訪れるには、直行便が飛んでいないので欧州やアジアの都市を経由する必要がある。今回は、日本を7時30便に出発する便に乗り、パリを経由して、テルアビブのベン・グリオン空港に到着したのは現地時間の深夜0時過ぎだった。

 今回はスケジュールの都合でフライトが金曜日になったのだが、金曜日にイスラエル入りするときには注意が必要だ。というのも、金曜日の夕方から土曜日の夕方はユダヤ教の安息日になっており、レストランなどのお店だけでなく公共交通機関はタクシーや乗り合いバスなどを除き、すべてストップしてしまうのだ。厳しい宗教的戒律のない日本人にはなかなか理解しにくいのだが、敬けんなユダヤ教徒はしっかりこうした戒律を守っているので、見事に公共交通機関(電車、バス)はお休みになってしまうので初めての人は本当にびっくりするだろう。

 このため、今回の旅行でも、到着後にSIMカードを買えるか大変危惧していたのだが、結論から言うとそれは杞憂に終わった。到着後、入国審査と税関を抜けて入国すると、右手に深夜もやっている売店があり、そこでOrangeのSIMカードを販売していたからだ。販売価格はSIMカードが90NIS(NISは新イスラエルシュケルの略称で、現地通貨。1シュケル=約32円、2015年8月中旬時点)で、それに選ぶプランを付加するという形になっていた。

OrangeのプリペイドSIMカードで提供されているプラン
125NIS
通話無制限(国内)
データ4GB
7日間
140NIS
通話無制限(国内)
データ8GB
30日間
160NIS
通話無制限(国内)
データ10GB
30日間
150NIS
通話無制限(Orange内)+250NIS分(国内)+100NIS分(国際通話)
データ6GB
30日間
200NIS
無制限(Orange内)+60NIS分イスラエル国内/国際コール
データ8GB
14日間
70NIS
通話なし
データ3GB
30日間
99NIS
通話なし
データ8GB
14日間
149NIS
通話なし
データ20GB
30日間

 ちょっと分かりにくいのが通話無制限で、イスラエル全土(国内)で無制限のプランと、Orangeのカバーエリアで無制限というのが別の扱いになっていることだ。これはヨルダン川西岸地区などパレスチナ自治政府が管理するエリアでは別のキャリアが運営している場合があり、そこにローミングすることがあるということのようだ。ようだ、と書いたのは、この空港の売店ではなく、別の携帯電話ショップで確認したらそう言われたからだ(現実には違っている可能性もある、念のため)。

 ただ、すでに述べたとおり、パレスチナ自治政府が管理しているヨルダン川西岸地区は、外務省の渡航延期勧告になっており、よほどの理由がない限り行くことはないと思われるので、あまり気にする必要はないだろう。

 今回は特に通話は必要ないと考えたので、家族用にデータ通信3GB/30日間と、自分用にデータ通信8GB/14日間を購入した。家族用のプランがSIMカード代90NIS+70NISで160NIS(日本円で約5200円)、自分用が90NIS+99NISで189NIS(日本円で約6000円)という初期購入費用だった。なお、パスポートなどの身分証明書なども提示する必要がなく、お金を払うだけでその場でアクティベーションしてもらえ、あとは自分で必要に応じてAPNを設定するだけだった。

 また、仮に空港で買えなかったとしても心配する必要はない。というのも、街に出ると、Orangeの看板を出している携帯ショップが多数あり、同じようにプリペイドSIMを購入することができるからだ。

 実際エルサレムに移動した後、その中の1店で3GBデータのみというプリペイドSIMを追加で買ってみたが、130NISと空港の売店で買うよりも若干安かった。デバイスを複数台持っている人は、空港で購入するのは必要最低限にしておき、街中に着いたら追加分を購入するという買い方が正しいのかもしれない。

税関を抜けて入国した後、右手にあった売店。書店のようだが、ここでOrangeのSIMカードが販売されていた。
売店で示されていたプラン
街中での携帯ショップでも、このようにOrangeの看板がでており、どこでも購入することができた。本当にそこら中に携帯ショップがあるので、どこでもすぐ購入することができる

Winodws Phoneデバイス「MADOSMA」で利用、APN設定などは自動で入った

 今回は、マウスコンピューターが販売しているWindows Phone 8.1を搭載するスマホ「MADOSMA」を利用した。MADOSMAはiOSやAndroidではなく、MicrosoftのWindows Phone 8.1を採用したスマートフォン。Windows Phoneの特徴は、PCのOSであるWindowsと親和性が高いことで、次期バージョン(Windows 10 Mobile)では、PC用に先月リリースされて話題を呼んでいる「Windows 10」と操作体系なども統一されることから注目を集めている。マウスコンピューターではこのMADOSMAも、Winodws 10 Mobileにアップグレードできるようにすると説明しており、来たるべきWindows 10 Mobile時代を見据えて選択するユーザーも増えている製品だ。

 MADOSMAはLTE、3G、GSMに対応している製品になるが、今回筆者が購入したOrangeのSIMでは、3Gでのみ利用できた。通信速度は速い時で下り9.63Mbps、遅い時でも下り1Mbps以上は出ており、スマートフォンを利用するうえで不満はないし、テザリング機能を利用してPCを接続しても不満なく利用できた。

 なお、MADOSMAはSIMロックフリースマホとして販売されていることもあり、日本の通信キャリアだけでなく外国の通信キャリアの情報もあらかじめ情報として持っている。SIMカードを端末に挿しただけで、イスラエルのOrangeでも自動でAPNが設定され、簡単に利用できた。

 今回のイスラエル旅行で便利だったのはGoogle Mapsを利用した公共交通機関の情報だった。今回の旅行では、テルアビブからエルサレムまでバスと電車を利用して移動したのだが、エルサレムの駅というのは、かなり郊外にあって、そこから中心地にあるホテルまではバスに乗って30分~40分かかる位置にある。

 エルサレムの駅から移動するにはタクシーかバスを利用するのだが、着いた途端、かなり激しい客引きにあって、正直本当に乗って大丈夫だろうかと思ってしまった。というのも、今までの海外旅行の経験だと、客引きしているタクシーには何かしらの落とし穴(例えば遠まわりする、メーター回さないなど…)があったからだ。

 実際、タクシーの客引きは、バスに乗ると言ってるのに「バスはないよ」と平然と嘘をついていたので、正直乗らない方がよいと感じた(もちろん、乗った方がいい場合もあるのでケースバイケースなのだが……)。

 こういう時にGoogle Mapsの登場だ。Google Mapsで、ホテルまでのバスを調べたところ、駅から大通りに出たところでバスに乗り、ホテルのすぐ近くまで行けることが分かった。プリペイドSIMによる通信環境がなければそういうことも調べられなかったので、客引きの言うままタクシーに乗るしかなかったかもしれないと考えると、心の底からよかった思えた瞬間だった。

MADOSMAで速度計測をしたところ、エルサレムの旧市街でテストした
MADOSMAではOrangeのAPN情報は標準で入っており、SIMカードを挿しただけで利用できた
エルサレムの駅、かなり郊外にあり、市街地までの交通手段はバスかタクシーしかない
今回はbooking.comでホテルを予約したので、booking.comのアプリからホテルの地図を呼び出し、現在地からの行き方を検索したら、バスで行けることが分かった。SIMが入ってるMADOSMAにWi-Fiテザリングで接続して利用している
キャリア名Orange(Partner Communications)
初期購入価格180NIS(8GB/14日間データのみ)
カードの種類miniSIM、microSIM、nanoSIM
対応周波数帯LTE:1800/2600MHz、3G:2100MHz、GSM:900/1800MHz
APNuinternet
滞在時期2015年7月中旬~下旬
使用デバイスマウスコンピューター「MADOSMA」
(笠原一輝)