旅レポ
北海道エアシステムの鶴丸塗装初号機に乗って鹿児島から札幌へ飛んでみた
ジャルパック実施のチャーターフライトに体験搭乗
(2016/5/25 00:00)
ジャルパックが4月26日~27日に「HACチャーター 鶴丸ロゴ初号機で長距離フライト~SAAB340Bで鹿児島から丘珠へ飛ぶ!!~2日間」というツアーを実施することは当誌でも何度かお伝えしている。HAC(北海道エアシステム)初の鶴丸塗装初号機にいち早く乗れ、少しオーバーに表現すればHACが刻む歴史の1ページに間近で参加できるこのツアーに同行取材したのでレポートをお届けする。
窓側座席は発売当日に完売!
このツアーの最大の目的は「小さな飛行機に乗って鹿児島から札幌まで飛ぶこと」。たったこれだけのことと思う人もいれば、そうでないと思う人もいる。HACに初めて導入される鶴丸塗装機にいち早く乗れること、プロペラ機の低めの高度で長距離をのんびりフライトできること、前日にJAC(日本エアコミューター)の整備場やシミュレータを見学できること……いろいろな魅力を感じてのことだろうが、窓側座席はなんと発売当日に完売してしまったという。
ツアーの出発地は東京(羽田)で、新千歳から羽田までの航空券も含まれているので、参加者は北海道へ旅行に行くことが目的でないのは言うまでもない。このツアーは飛行機に乗ること自体が目的=本源的需要である。鉄道では観光列車や“乗り鉄”などが一定の認知を得ているが、飛行機ではまだまだ一般的ではないだろう。まして、今回の飛行機は豪華な機内を持つわけではなく、短距離路線用の小さなプロペラ機だ。例えるなら通勤列車で東京駅~博多駅を移動するようなものだろうか。
最終的にはキャンセルなどもあって18名が参加。北は北海道から南は兵庫県や奈良県からの参加者もおり、年代も20代~70代と幅広い。飛行機好きの道楽というのは簡単だが、本当に好きな人が集まっているのだと思う。聞くところでは、2015年に行なわれた、同じくHACのチャーター便で丘珠→利尻→釧路→奥尻→函館を1日で乗り継ぐツアーにも参加した人がいるとか。ここまでくると、好きを通り越して愛を感じる。
料金も10万円近い。申し込み内容によって変動するため。基本料金は9万3800円で、チャーター便の機内において窓側席を希望する場合はプラス5000円、窓側の翼上座席はプラス3000円、通路側席なら追加料金なしという設定だった。このほか、ホテルを1室1名で利用する場合はプラス1000円などの設定もあったが、飛行機の座席によって料金を変えたのが面白いところだ。
こうした飛行機に乗ることを楽しむツアーは過去にも組まれているが、高翼機でもない限り、どうしても座席からの景観に善し悪しがあるのは避けられない。例えば国内大手航空会社で恒例となっている初日の出フライト。“空から初日の出を見る”というやや派生的需要も含んだツアーではあるが、このツアーは窓側席と窓側を含まない席で明確に料金差を設けて対応している。
今回のツアーもこのような販売を行なったことになる。参加者の視点では、翼上窓側、通路側に乗ることに納得して対価を支払うことになるのでベターな販売方法に感じられると思うが、販売側の視点では苦慮するところだという。今回のツアーでは36席中、25席を販売。結局、通路側が全席空席となっていた。窓側、翼上窓側、通路側を区別しなければもっと売れたかも知れないが、担当者としては参加者の満足度が下がるのも本意ではないとのことで、今回は後者の思いが優先された結果の販売がなされたことになる。
前日の整備場見学でHACの鶴丸塗装機に早くも対面
では、実際にツアーの様子をお伝えしていこう。この取材は、一部ツアー参加者と異なる行程だったことをお断わりしておきたい。具体的には鹿児島へ行く行程だ。参加者は各々が羽田空港から福岡空港または松山空港で乗り継いで、鹿児島空港へ入る行程となっていた。ただ、取材のために参加した記者は、一足先に鹿児島空港へ到着し、参加者を鹿児島空港で待ち受ける行程になった。
ツアー参加者は、福岡経由者は14時20分鹿児島着のJN3653便、松山経由者は15時10分鹿児島着のJN3686便で鹿児島入り。いずれも機材はJACのSAAB340B型機で、翌日に搭乗するチャーターフライトに向けて気持ちを高めることができたのではないだろうか。
待ち合わせ場所は鹿児島空港から徒歩10~15分ほどのところにある鹿児島空港ホテル(クルマによる送迎もあり)。福岡経由の参加者は1時間ほどの待ち時間があったことになるが、鹿児島空港内にあるJACのSAAB340Bのモックアップ見学や、鹿児島空港ホテルの厚意で特別に立ち入れた、鹿児島空港を見渡せる屋上の屋外エリアでの撮影など、各々の時間を過ごせたようだ。
ちなみに鹿児島空港ホテルの屋上エリアへは記者も立ち入らせてもらったのだが、おそらく鹿児島空港のビュースポットとして最高の場所だと思う。晴れていれば霧島連山をバックに最高の風景が広がる鹿児島空港全景を見渡すことができるはずだ。あいにくの曇天で霧島山は霞んでしまっていたが、それでも貴重な風景であることに変わりはない。
全参加者が集合したあとは、鹿児島空港ホテルのロビーで簡単な注意事項の説明などが行なわれ、徒歩数分の場所にあるJACの整備場での格納庫とSAAB340Bシミュレータ見学へ。ここでは3班に分かれて行動。記者が参加したグループは、整備場からシミュレータへと進む見学スケジュールとなった。
この日の格納庫にはJACのボンバルディア Q400型機のほか、翌日に対面するはずだったHACのSAAB340Bが早くも目の前にいた。就航前日にフライトできるだけでなく、前々日に対面し、機内見学もできるという大盤振る舞いだ。
記者は、品質検査グループの戸高鉄雄氏と、整備管理部 技術グループの濱松多聞氏が案内するグループに同行したのだが、さすがにプロの話は面白く、参加者も興味深く聞き入っている様子がうかがえた。特に濱松氏は以前に部品の調達や管理を行なう業務に携わっていたとのことで、それぞれの部品の値段に非常に詳しかった。エンジンの値段はたまに耳にする話で、「いくらでしょう?」との参加者への問いかけにも大ハズレはなかったのだが、ピトー管1本の値段なども説明があり、“さすが本職!”と心のなかでうなりながら記者も聞き入ってしまった。
見学だけのはずだったシミュレータは操縦体験も
このあと、整備場内の会議室で、JACが導入予定のATR 42-600型機のビデオ視聴や飛行機の部品の紹介。そして、SAAB340Bのフライトシミュレータの見学へと移動する。
と、ここで大きなサプライズ。シミュレータに乗り込んだ参加者が操縦席に案内され、教官の指示のもと、実際に操縦をさせてもらえたのだ。6名のグループが2名ずつ3組に分かれて機長席、副操縦士席に着席し、実際に空港への着陸を体験した。操縦に合わせてシミュレータが動くモーション機能こそオフにされていたものの、案内では「見学」とされていた場所での突然の体験会に、見ているこちらにも参加者の興奮が伝わってきた。
心の準備がなかったはずの体験会となったが、さすがは飛行機に興味がある人たちと言ってよいだろう、教官も「初めてでこれだけできるのはすごいね」と感心するほど、滑走路へちゃんと着陸できていた。元パイロットが隣に座ってアドバイスを受けながら操縦したのに散々な着陸を見せたどこかの記者とは大違いである。
上記リンクにあるJTA(日本トランスオーシャン航空)の機体工場見学でも感じたことだが、ジャルパックが提供する地方のグループ航空会社と連携したこのような見学会は、参加者に楽しんでもらおうという現場の人たちの気持ちが伝わってくる。もちろん安全安心が第一なので超えてはいけない一線はあるはずだが、許されるラインにできるだけ近付こうと現場のプロが柔軟に対応してくれているのだろう。悪しき前例ができてしまうとそのラインが大幅に引き下げられるのは明白だが、参加者も注意事項を遵守しながら楽しんでいる様子。案内する側とされる側の間にとてもよい空気が流れているように思えて、後ろから見ていた記者も頬が緩んでしまった。
チャーターフライトの運航乗務員、客室乗務員にご対面
さて、整備場の見学を終えたあとは鹿児島空港ホテルへ戻り、バンケットルーム「フリージア」で夕食をとりながらのトークショーが開かれた。
トークショーには、翌日のチャーターフライトの機長の小川宏介氏、副操縦士の鍜治伏雄氏、CA(客室乗務員)の只野葉美氏が登壇。まずは翌日のチャーター便のルートとして、鹿児島を出発して大分、松山の上空をとおって出雲空港へテクニカルランディング。その後、出雲空港から小松、新潟、秋田、青森、函館、札幌というルートで進むことが示された。
続いては、各位の自己紹介。司会者からの案内で、パイロットになった経緯を中心に紹介した。機長の小川氏は、「皆さまいろんな知識をお持ちですので、機長というよりPICといった方がよいかもしれません。パイロット・イン・コマンドの略で、クルーを指揮・監督する最終責任者の役割をする運航乗務員です。それを明日、私が務めます」と挨拶。
同氏は北海道出身で、北海道の大学、大学院で修士となったあと米国でFAA(連邦航空局)のライセンスを取り、JALフライトアカデミーで国内のライセンスを取ったあとにHACに入社。HACに入社して10年で、うち約半分を機長として過ごしている。「HACには経験豊かな方が多く、当時はJAS(日本エアシステム)からの出向者も多くて、機長昇格のためには恵まれた環境にありました。それもあって無事に機長になって5年目になります。そのあとも経験豊富な副操縦士の方たちに助けられていまがあります。その一人が隣にいます、鍜治副操縦士です。それでは代わります」と絶妙なバトンパスで、鍜治氏へマイクを手渡した。
鍜治副操縦士は「新進気鋭の、輝かしい経歴の機長のコ・パイロットということで、さぞかしピチピチの若いF/O(ファースト・オフィサー)が乗るのではないかと期待された方もいらっしゃるかも知れませんが、すみません。私は昨年、定年退職いたしまして、今は嘱託パイロットとして副操縦士をやらせてもらっています」と、若干自虐も入ったユーモラスな自己紹介。
同氏は海上自衛隊で、対潜哨戒機の「P-2J」「S2F-1」や「U-36」など21年間の軍用機経験を経たあと、民間機の訓練を受け、HACで定年を迎えたという。「経歴を詐称するつもりはなく正直に言うと高卒です(笑)。そのぶん飛行機には長く乗っていて、間もなく1万5000時間に達しようとしています。事故もなく、この時間、地面を離れられたのは幸せだと思います。明日も安全運転で皆さまを札幌に届けたいと思います」と挨拶を締めた。
最後に挨拶した只野CAも北海道出身。客室乗務員に憧れがあったが、HACの募集開始が遅かったので他社(非航空会社)の内定をもらっていたうえでHACに応募したという。HACでは「他社と比べて違うのは、フライトだけでなく、地上業務としてパソコンを使ったり、スタンバイを兼ねての事務所勤務があります。そこでいろんな担当業務を行ないます」とのことで、只野CAは新人研修のためのテキスト作成や新人研修、マニュアルの改訂などに携わっているという。
ちなみに、CAは乗客50名につき保安要員として1名を乗務させるさせる必要があるとのことで、36名乗りのSAAB340Bは1名乗務となる。質疑応答では翌日のチャーターフライトについて「通常HACにはない長いフライトになるが?」という質問が出た。只野CAは「長距離のフライトや、このようなイベントに参加するのは初めて。鹿児島から飛ぶの初めてですし、出雲空港にも降りたことがないので、楽しみでもあり、緊張もしています。明日お乗りいただく飛行機は重整備でしばらくいなかった飛行機で、飲み物のサービスなどもできませんが、皆さんと長い時間ご一緒する機会もあまりないので、いろいろお話させていただいたり、一緒に窓の外を見たり、楽しんでフライトできたらと思っています」と、フライトの距離に反比例して乗客との距離は近くなりそう、そんな予感を抱かせる答えだった。
ここで、ゲストとしてJACの橘内CAも登壇。橘内CAはジョブチャレンジという職種公募制度で、ジャルパックからJACに出向してCAをしているというユニークな人だ。只野CAと橘内CAが並んだところで司会者が「実はJALグループは制服は同じなんですけど、スカーフが会社ごとに違うんですね」と豆知識を紹介。
そこで鍜治副操縦士も「JACとHACの違いといえば、飛行機も同じSAAB340Bで違いがあるのはご存じですか? エンジンも機体の外寸も同じなんですけど、ウィングスパン、翼幅が少し違います。HACの飛行機はJACのものより片翼60cm延ばしていて、正式名称を“SAAB340BWT”といいます。(鶴丸塗装のために)HAC機が整備に入っていたときにJACの機体をお借りしてましたが、やはり違いを意識ながら運航しています」「プロペラブレーキが装備されていて、右エンジンだけを回してプロペラを回さずに発電などをできます」と、飛行機に関する豆知識を披露。
さらに、「ちょっと小道具を持ってきたんですけど」と、「エアワールド」の1984年5月号を持ち出し、ウィングレットが付いたSAAB340Bという実際には運用されていない(と思われる)機体のテストフライトの写真が載っていることを紹介するなど、飛行機好きにはたまらない話が続いた。ちなみにウィングレット付きSAAB340Bについては「実際に売ってたのかボツになったのか、整備の部長に頼んで確認してもらっているところです」と、若干のモヤモヤを残すという“オチ”もあった。
このあとは参加者待望(?)のプレゼント抽選会。翌日に搭乗する「HACの鶴丸SAAB340B型機モデルプレーン」や、JACから提供のモデルプレーンや、2011年頃に配布していた機内誌全15冊セット、ジャルパックからのボーイング 787型機タオルなど、レア物を用意。HACの鶴丸SAAB340B型機のモデルプレーンは「まだ届いてないので今日は目録だけ」となり、搭乗のように一足早いゲットとはならなかった。
引き続いては座席抽選会。先にも触れたが、窓側席、窓側翼上席と別々に販売されている。ただし、翼上席は前後の端と、完全に翼の上の席とでは窓からの風景が異なる。そこで、今回は2区間のうち、どちらかは翼上でも端の席を得られるように配慮された。また、窓側席の人も右舷側、左舷側で景色が異なる。今回は日本海に沿って北上するルートということもあり、左右での風景が大きく異なることが予想された。全員が等しく同じ体験をするのは難しいのが現実ではあるが、2区間で座席を変えた搭乗券が裏向きに用意され、これを参加者が順次引いていく、くじ引きでの座席決めが行なわれた。
鹿児島空港からチャーターフライトへ出発!
さて、シミュレータ体験のサプライズなど、前日のイベントが想像以上に(?)盛り上がった当ツアーであるが、本番は2日目のチャーターフライトである。この日の鹿児島は小雨がパラつくあいにくの天気となったが、鹿児島空港の出発案内板に「HAC」や「丘珠」といった表示があるのを見た参加者のざわつきを見るに、雨なんてどこふく風の雰囲気。
このチャーターの便名はHAC989便。HACは臨時便に900番台の便名を付けることになっており、これに「HAC(ハック=89)」を足す凝ったもの。このような、さりげないこだわりの一つ一つが思い出を作ってくれる。
そして、鹿児島空港の8番搭乗口からバスで移動。前日に整備場で見ているとはいえ、今回は飛ぶ準備を整えての対面だ。重整備後にはありがちというマイナーなトラブルがあったそうで、30分ほど遅れての出発とはなったが、9時10分過ぎに鹿児島空港を出発した。
ただ、天候だけはいかんともしがたく、すぐに雲のなか、そして雲の上へ。機長のアナウンスでは高度1万7000フィート(約5200m)とのことでジェット機に比べるとかなり低い高度だが、地上の風景を楽しむという雰囲気にならなかったのは残念なところだ。
とはいえ、そこは飛行機好きな人が多く搭乗しているフライト。エンジンの回転数などの説明を加えた、普段の機長挨拶では滅多に聞けない詳細な情報や、翼に付着したアイスを取り除くための「デアイスブーツ」の動作デモを実施。デアイスブースは各翼の前縁に取り付けられたゴム状のパーツで、上空で氷が付着して揚力が低下しないよう、ゴムを膨らませて氷を除去するパーツだ。通常のフライトでも行なわれることだが、「いまからやります」と予告があって行なわれるのは、こういった特別なフライトらしさだ。
さて、最初は出雲空港へと向かうわけだが、出発が遅れたことで鹿児島から松山方面へ直行する、予定よりも東寄りのルートを航行。出雲空港に立ち寄るのは給油のためだ。SAAB340Bの航続距離は1810km。鹿児島から札幌まで2500kmほどの航続距離が必要となることから、途中で一度給油する必要がある。出雲空港が選ばれたのは、航続距離の条件に加え、SAAB340Bの整備士が滞在することから利用されているという。
出雲空港へは10時30分ごろに着陸。ILS(計器進入システム)を持たない空港なのが特徴で、この日は東風だったことから、北側から大きく回り込むように飛行し、07滑走路へ着陸した。
元々、長時間の滞在が予定されていたわけではないが、上述の遅延もあって30分ほどの滞在。一度外へ出たものの、すぐに飛行機へ戻る人の姿が目立った。実は記者も出雲空港へ来るのが初めてだったので、興味津々であちこち見たり、出雲発祥といわれるぜんざいを食べたりしていたらあっという間に時間が過ぎてしまった。
出雲空港出発後もしばらくは雲の上。ここで急きょ、ツアーの受付ボードなどのプレゼントを発表。希望者とのじゃんけん大会が行なわれた。また、ツアー参加者へのアンケートなどもこの区間を利用して実施。
機長も改めて挨拶があり、2万3000フィート(約7000m)の高度を飛行していることを紹介。また、与圧されている客室の気圧や、エンジンが停止したとき、緊急着陸をしたときの操縦の対応などを説明。飛行機が苦手な人も(純粋に移動手段として)乗っているかもしれない通常のフライトでは、こういった説明を機内で聞くことは、まずないだろう。
そんな変わった体験をしているうち、ちょうど能登半島を横切るあたりで雲が晴れ、地上の様子が見えるようになった。こうなると機内も一層盛り上がってくる。北アルプス、佐渡島、北上山地、岩木山など、日本海側に沿って北上していくだけでさまざまな地形を楽しめる。
そして、津軽海峡を越えて、いよいよ北海道に上陸……ではないけども、北海道上空にさしかかる。北海道に入ってからしばらくしてシートベルトサインが点灯。函館から札幌は“意外に遠い”というイメージがあるのだが、そんなイメージを持って飛行機で移動すると意外に近い。上空から見る洞爺湖や羊蹄山に見とれているうちに、あっという間に札幌の市街地が目に飛び込んできて、丘珠空港へ着陸した。
数時間前の九州や出雲の天気が信じられないほどの快晴に恵まれた札幌。美しい青空のもと、いち早く地上から鶴丸HAC機を見ることができた参加者はラッキーだった。序盤の悪天候は残念だったが、ツアーが終わりに近付くに連れてどんどんよくなり、旅の思い出としてはハッピーな気持ちで終わりを迎えられたのではないかと思う。
曇り空に包まれて飛んでいるときは時間も長く感じられたのだが、風景が見えるようになると急に短く感じるようになった。記事も最後は駆け足のようになってしまったが、事実、そのような気持ちだったのだ。
航続距離の長い航空機が増えた現在、空港間はノンストップで飛べる機材を選んで運航することが多い。国内線ならなおさらだ。給油のために途中に立ち寄りが必要なほど長い距離を、プロペラ機を使って移動する機会はまずない。そんな変な……もといユニークなプランを用意できるのも、ジャルパックが航空会社系の旅行会社であることの強みといえるのではないだろうか。
飛行機は長距離移動に要する時間を節約できる乗り物として利用する人が多いのではないかと思うが、今回のツアーはのんびりと飛行機で移動するという逆の体験でもある。“空を飛ぶ”ということの不思議さや特別さを改めて感じることもできた。HACでは今回の初号機を皮切りに、1号機と3号機も鶴丸塗装へリニューアルしていく。記者の希望的観測でまったく保証はないのだが、もしかしたらその際にも変わったツアーが組まれるかも知れない。「もう一回乗りますか?」と問われたら、「乗りたいです!」と即答することだけは間違いない。