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サントリー、北海道 定山渓と豊平峡で緑茶飲料「伊右衛門」の「秋の味」を披露
一番茶のかぶせ茶を熟成し、強火で火入れをして香ばしくし仕上げる
(2015/10/9 15:22)
- 2015年10月6日開催
サントリーは10月6日、定山渓及び豊平峡(北海道札幌市)において、「秋の伊右衛門 “香り、贅沢ガーデン”」を実施した。
これは同社のペットボトルの緑茶飲料「伊右衛門」を「秋の味」に切り替えることに合わせ、報道関係者を招いて行われたもの。イベントは2部構成となっており、第1部では定山渓のホテルにおいてセミナーが、第2部では豊平峡に用意された特設ガーデンで「味わおう体験」が実施された。前者は報道関係者限定となっていたものの、後者は豊平峡を訪れていた観光客も一部参加することが可能だった。
なお「伊右衛門」は10月9日現在、コールド飲料の「秋の味」とホット飲料の「冬の味」がそれぞれ発売中となっている。
香りがポイントの新伊右衛門
豊平峡での「味わおう体験」を前に、定山渓のホテルにおいて報道関係者を対象としたセミナーが開催された。
セミナーではまず、サントリー食品インターナショナル 食品事業本部 ブランド開発第一事業部 課長 五十嵐享子氏が登壇、伊右衛門のブランド戦略を説明した。
伊右衛門は2004年に京都・福寿園との共同開発により発売され、「京都祇園でのお茶会をはじめ、2008年には烏丸三条に伊右衛門サロン京都をオープン、年間20万人のお客様にご来店いただいている」と説明。その間にお茶は「急須で入れて飲む」ものから、「ペットボトルで飲む」ものへと環境が変わりつつあり、今後その傾向はさらに強くなっていくと分析する。その一方で、「緑茶は日本人のソウルドリンク、一番身近な飲み物」であり、「お茶と日本人の本質的な関係性は外部環境が変わっても維持されている」とも。そこで、「もっとも日本らしさを感じる飲料」として新伊右衛門を開発をスタート。コンセプトは「四季よって人の感性がかわるようにお茶の味も変えていく」ことで、「季節に応じて最もおいしいお茶を提供していく」ことを目指しているという。こういった試みは季節限定品では存在したものの、スタンダートタイプでは初めて、だと語る。
こうした取り組みの成果は5月に発売した「新茶入り」で実を結んだ。その後、夏には抹茶の甘さとさわやかな香りが楽しめる伊右衛門を、この秋にはじっくり熟成させ香りを引き出した寝かし茶葉を使った香り贅沢な伊右衛門を発売。「お客様からは高い評価をいただいている」と胸を張る。そしてこの冬にはあぶり茶葉を使った甘香ばしい香りがふわっと香るホットの伊右衛門がデビューを待つ。「伊右衛門は今後も季節季節の味わいを提供していく」と締めくくった。
次いでサントリー食品インターナショナル 食品事業本部 商品開発部 小林真一氏が登壇。新伊右衛門のコンセプトを説明した。
着目したのは「日本には豊かな四季、四季折々の食材、きめ細やかな心遣いとおもてなしがある」こと。「そういった素晴らしい価値を伊右衛門で提供していきたい」ことから、四季で味わいを変えていくというアイデアに至ったという。ただ、その一方で、「基幹ブランドである伊右衛門で味を変えていっていいのか」と悩んだと胸の内を明かす。
その悩みを払しょくできたのは、3つのヒントだったという。
ひとつは開発チームの体感。開発初期段階のお茶を夏に飲んだ時は「さっぱりして美味しい」と自信作だったが、まったく同じ中身を秋に試飲すると「何か少し物足りない、水っぽい」という声が上がった。「同じお茶なのに夏と秋で味わいが違う」と感じたことが、季節ごとに美味しい味を突き詰めていくきっかけになったと語る。
ふたつ目は季節ごとに味の感じ方が違うことに気づいたことで、「ウェザーマーチャンダイジング」という考え方にたどり着いた。「嗜好は気温による人体活動の変化を受ける」ことを商品戦略に取り込むことで、味を変えることに対するハードルが下がったというわけだ。実際、春夏はざるそば、ビール、かき氷といったさっぱりとした味わい好まれるが、秋冬にはおでんやなべ、シチューといったしっかりとした味が求められるなど、味の感じ方と好みは季節によって変わる。これが新伊右衛門における季節設計のベースとなったという。
三つ目は開発パートナーとなる福寿園の谷口茶匠の言葉。「春には新茶、夏には水出ししたさっぱりしたお茶、秋には深い味わいの被せ茶を提供する」。そんな老舗ならではの心遣いを伊右衛門でも提供したい、という想いも味を変える決心を後押しした。
味を変えていく上で注目したのは「人間はエネルギー消費量に応じて求める濃さが違う」こと。春夏は体温と気温の差が少なく基礎代謝量が下がるため、カロリーが少なくさっぱりした味が好まれる点を踏まえ、一気に飲めるように標準の濃さを100とすると95になるように設計。反面、秋冬になると体温と気温の差が大きくなるため基礎代謝量が上がりエネルギーをたくさん必要とする。しっかりとした味わいが求められる一方で、水分摂取量が減るのでゆっくりちびちびと味わいつつ飲むことが多くなる。それを踏まえて秋は100、さらに寒い冬は110となるように設計したという。
味とともに重要なポイントとなる香りについては、「香りの好みは過去に嗅いだことのある香りの記憶、経験の積み重ねによって形成される」点に注目。例えば「ほうじ茶」「納豆」「鰹節」は日本人にとっては好ましいが、日本人以外の香りの記憶を持たない人々にとっては警戒すべき香りと捉えられる。こうした点を踏まえて、春夏はリフレッシュできるように「さわやかな香り」が多く含まれるように、秋冬はお茶を飲んでほっと一息つけるように「焼き芋の甘い香り、焼いたお餅のこんがり香ばしい香り」が多く含まれるように設計した、と説明した。
こうして得られた味と香りの設計図を実現するために谷口茶匠とともに茶葉を吟味。春は新茶入り、夏は水出し抹茶入り、秋は寝かせ茶葉入り、冬はあぶり茶葉入りと変えることで新伊右衛門が完成した、と語った。
セミナーの最後に福寿園の茶匠、谷口氏がマイクを握り、季節ごとのお茶の違いを紹介した。
まず春は「新茶入りをお客様に楽しんでいただきたい」ため、新芽を摘みとったら蒸して揉みながら乾燥。青々しくさわやかな香りを逃がさないように少しだけ火入れをする。こうしてできたお茶は「艶やかできめ細かく濃緑」になるという。
夏は「さわやかという味わいを召し上がっていただきたい」。そこで1番茶で作った碾茶を揉まずに乾燥して抹茶に仕上げ、それを冷水で溶かしてじっくりと抽出。冷水を使うことで「余分な不渋味が出ず、青々しくうま味の強い味わいが出る」そうだ。
茶道では茶壺に碾茶を入れ熟成、ひと夏越して11月に茶壺から取り出し、抹茶にして楽しむ「口切の茶事」がある。採れたばかりのお茶は「青々しくカドのあるような、非常に不渋味が強い」が、熟成させることでそれが取れて「京都で言う“まったり”、一般的には“まろやか”な味に変わってくる」と、味わい深いお茶を作るためのポイントを説明。そこで「秋の伊右衛門」では「一番茶のかぶせ茶を一定期間、一定の温度で熟成させまして、かなり強火で火入れをして香ばしくしております。熟成のまろやかな香味、そして香り贅沢、そして香ばしい贅沢さをつけて仕上げております」と、ひと手間かけたこだわりをアピールした。
冬は「雪の中でふわっと香るようなお茶を召し上がっていただきたいな」との思いがあったものの、どういうお茶を選んだらいいのか、どういう火入れを選んだらいいのか、と四苦八苦したという。いろいろ試行錯誤を重ねて行きついたのが「少し甘い香味のする、そういうお茶を選択しております。これに渋みが加わってきますと、非常にカドがあってふわっとならないんですね。甘い香味を持っているものを選ばせていただいた」と語る。これを実現するために選んだ製法が、赤外線の火入れ機であぶるというもの。「この赤外線の火入れ機は非常に火力が強くて、お茶の葉に照射をしていきますと表面から中まで浸透することができます。すると水分が滲み出るのと一緒にお茶が葉っぱが膨らんできます。その膨らんだところと香ばしさが加わって、ふわっと香ると、そういう味わいに作ることができます」と工程を説明。ただ「結構火力が強いですので、長時間で火入れをやるのではなくほんの短時間でできる、そういうやり方をしています。ですから、短時間で照射をして香味に合わすというのは非常に難しいんですね。長時間かけてやるのは比較的簡単なんですけれど、短時間でやるのは非常に難しくて、これはうちの、福寿園の技術というのがここに詰まっているかな、と思っております」と、福寿園ならではの製法が「冬の伊右衛門」を完成させたと語った。
色づき始めた木々をバックに秋を味わう
第2部は場所を豊平峡へと移し、特設ガーデンで「味わおう体験」が実施された。プレゼンターにはお茶と食の匠として、伊右衛門のマスターブレンダーを務める福寿園の茶匠、谷口良三氏が第1部に引き続いて、さらに東京・赤坂「TAKAZAWA」のオーナーシェフ、高澤義明氏も招かれスペシャルメニューを提供した。
まず、行われたのは茶匠、谷口氏による火入れの実演。伊右衛門「秋の味」は「香り贅沢をお客様に味わっていただく」のがテーマということで、「火入れ」による香ばしい香りの茶葉を作るところからスタート。一定期間、一定の温度で寝かせてまろやかな風味に整えた一番茶の被せ茶を、焙じ器をゆすりながら炭火で焙っていく。しばらくすると水分が飛び「焙じ器の中でお茶が滑り出す」。さらにあぶり続けることでお茶が膨らんでキツネ色になり、あたりにはこんがりと焼けた香ばしさが漂ってくる。「いいお茶ほどアミノ酸が多く、糖とアミノ酸が結合して甘香ばしい香りになる」そうだ。焙じたお茶を茶平に入れ、70℃ほどのお湯を注ぎ1分ほど抽出。回し注ぎで静かにお茶を注いだら出来上がりとなる。出来立てのお茶を振る舞われた高澤シェフは「贅沢な感じ。焙じた時の香りの香ばしさが味わいにも出ている。煎茶のさわやかな青い感じから、今日の景色のような茶色のトーンをうっすらと感じる緑茶になっている」とコメント。秋らしい一杯に満足した様子だった。
次いで谷口茶匠から高澤シェフにバトンタッチ。「秋になってくると厚みのある、ボリューム感のある、贅沢なものを求めるようになる」ということで、一品目はガッツリなイメージのあるコロッケが提供された。もちろん、タダのコロッケであるはずはなく、香りのトリュフ、味わいのフォワグラを北海道の食材でつないだ、その名も「じゃがいも、秋の収穫、香りは国境を越えて」。新伊右衛門のテーマでもある「香りの贅沢」を意識したメニューで、香りの良いトリュフをしょうゆベースのタレにつけることで、独特のアロマを強調しているという一品。
コロッケに舌鼓を打っていると北海道出身の津軽三味線奏者、吉田兄弟が登場。「今回は紅葉バックということで三味線も力強い音色だけでなくいろんな彩があるということを皆さんに感じていただけるように」と、3曲を披露した。演奏後、吉田良一郎氏は「大自然の中で演奏ができて気持ちよかった。セッションしている相手がもうひとり増えたような、とても楽しい演奏だった」、吉田健一氏は「地元北海道での演奏ということもあり、大自然にエネルギーをもらって演奏できた感じがします」と感想を述べた。また、良一郎氏は「北海道をベースとした曲作りが多く、風景だったり雪だったり、嵐だったり、波だったり、を曲に入れて作曲することが多い。地元なんですが、ここ(豊平峡)には初めて来たので、この風景を見ながら一曲もらえそうな気がしました」と、インスピレーションを受けた様子だった。
高澤シェフが2品目「香る秋の炭火焼き、炭まで食べて」を提供。「香りということで炭火焼をご用意しています。今日、炭火焼にするのは福寿園さんの本拠、京都で大切に育てられた鴨を取り寄せまして、また、北海道は十勝のほうから取り寄せたマッシュルームを炭で串焼きにしてご用意しております。あと少しユーモアも入れて、秋は焼き芋をよく落ち葉で昔やった記憶がありますので、焼き芋を実は串の先端に炭に見立てたお芋を刺してあります。これは一見食べられないものが添えてあるよ、と思うんですが、これはサツマイモに細工をして竹墨で煮てありますので、ぜひ怖がらずに召し上がってみてください」と、説明。また、「炭火で焼き油が垂れることで、谷口茶匠がやられたように香ばしいスモークのような香りがつく。それがお茶と相乗するポイント」「オーブンで焼くともう少しあっさりした香りになる」「屋外で炭で焼くとより一層、皆様美味しく感じられると思います」「シンプルに塩で素材の味を楽しんで欲しい」と、コメントした。
その後、豊平峡のガーデンを一般にも開放。材料やスペースの関係で限られた人数ではあったものの、その場に居合わせた観光客にも炭火焼が振る舞われ、豊平峡の景色とともに、美味しい“香り”を楽しんでいた。