旅レポ
夏期増便のフィンエアーで行く! ヘルシンキとタンペレを巡るアート&グルメ旅(その2)
ヘルシンキのアートとムーミンシリーズの産みの親トーベ・ヤンソンゆかりの地を訪ねる
2017年8月19日 00:00
フィンエアーとフィンランド政府観光局は、文化や産業の発信地タンペレと首都ヘルシンキをまわるプレスツアーを6月15日から19日にかけて共同で開催。6月17日にタンペレにオープンした「ムーミン美術館」をはじめ、作者のトーベ・ヤンソンに関するエリアなど2つの都市の見どころを紹介するツアーに参加することができたので、その様子をレポートする。
フィンランド到着日も美術館でアートを堪能。ヘルシンキ街歩きでトーベ・ヤンソンゆかりの地へ
フィンエアーの成田発~ヘルシンキ着のAY072便のビジネスクラスを利用して、13時50分にヘルシンキ・ヴァンター国際空港に到着し、首都ヘルシンキに向けて15時近くに空港を出発したツアー初日。まずは、バスで30分ほどかけて約9000点のコレクションを所蔵するヘルシンキ市立美術館(HAM)へ向かった。1937年に室内テニスコートとして完成した建物を利用し、カフェや映画館も併設する市民の憩いの場だ。
ヘルシンキ市立美術館には、ムーミンシリーズの作者である芸術家トーベ・ヤンソンが1947年に発表したフレスコ画「田舎のパーティ」と「都会のパーティ」を常設展示。小さなムーミントロールや作者本人が描かれているなど、細かく見れば見るほど発見のある2作品となっている。また、元々はヘルシンキ市庁舎の職員・接待用レストラン「カウプンギンケッラリ」に飾られており、当時を象徴するパーヴォ・ティネルの照明が展示室を照らしているのも興味深いところだ。
2つめの部屋に向かうとストロンベリ社のピタヤンマキ工場の食堂の壁画、1955~1956年にアウロラ小児科病院の壁に作画した作品の紹介が。中央にはお絵描き用の小さな机と道具がちょこんと置いてあり、子供と一緒に美術館での時間を楽しめる工夫がされている。
続いては7月30日まで開催の企画展「MODERN LIFE!」へ。アルヴァ・アアルトのチェアがズラリと並び、マリメッコのワンピースとその時代のアートの比較展示がされるなど、フィンランドデザインの素晴らしさを丁寧に解説。また、資材が不足している時代に考案された建築方法を学び、実際に組み立てることができるブースをはじめ体験エリアも。
ヘルシンキ市立美術館
所在地:Tennispalatsi 2F Etelainen Rautatiekatu 8, Helsinki
Webサイト:ヘルシンキ市立美術館
続いては、トーベ・ヤンソンゆかりの地へ。1914年から1933年まで家族が住んでいたカタヤノッカへ向かい、幼少時代の家を見学。1番上の階に住んでいたとのことで外壁にはメモリアルプレートも。生家のあるカタヤノッカ周辺は、アールヌーボー様式の建築とともにフィンランドのモダニズム建築も見ることができるエリア。十字路には、ムーミンハウスをイメージさせる塔のような建物もあり、物語と現実が交差するような感覚になれる場所だ。
そのまま、歩いて30秒ほどの場所には2014年に改名されたトーベ・ヤンソン公園、そして海岸側へ足を向けると冬になると水が凍結し、トーベ・ヤンソンもスケートを楽しんでいたハルコライトゥリ埠頭が見えてくる。暖かな日差しを浴びながらの散策は、まるで自分がこの場所に住んでいるかのような気分になれた。
タカヤノッカの幼少時代の家
所在地:Luotsikatu 4, Helsinki
トーベ・ヤンソン公園
所在地:Kanavakatu 1, Helsinki
ハルコライトゥリ埠頭
所在地:Halkolaituri, Pohjoisranta
そのまま、トーベ・ヤンソンが1944年から亡くなる2001年までアトリエとして使用していた場所へ。建物のエントランスには父親のヴィクトル・ヤンソンによるレリーフを使ったメモリアルプレートが飾られているので、記念撮影にぴったり。なお、ヴィクトル・ヤンソンによる彫刻もヘルシンキ市内に多数設置されており、娘のトーベ・ヤンソンをモデルにした「marmeid(人魚の彫刻)」は商業施設の中庭、エスプラナーディ公園では「Aallottaria(水の精・ナーイアス)」や「Aallottaria(やぁ)」を鑑賞できる。ヘルシンキが発行するガイドマップ内にトーベ・ヤンソンのヘルシンキルートが紹介されているのでマップ片手に訪れてみてはいかがだろう。
トーベ・ヤンソンのアトリエ
所在地:Ullanlinnankatu 1, Helsinki
ヴィクトル・ヤンソンによる「Mermaid(人魚の彫刻)」
所在地:Etelaesplanadi 22, Helsinki
エスプラナディ公園
所在地:Pohjoisesplanadi, 00101 Helsinki
街歩きに疲れたらトラムやシティバイクの活用がお勧め。トラムは各停留所などでチケットを手に入れられる。1回の乗車の場合は2.9ユーロ(約380円)となっておりクレジットまたは現金での購入が可能。乗車するときは、運転手にチケットを提示して席へ。停留所名が表示されたら、降車を知らせるボタンを押すだけだ。ヘルシンキは石畳の歩道のため足が疲れたら躊躇せずに利用しよう。
シティバイクは24時間5ユーロ(約650円)、1週間10ユーロ(約1300円)、2017年10月31日までの1シーズンなら25ユーロ(約3250円)。専用Webサイトにて申し込みとクレジットカード番号を入力し支払い。送られてくる利用者IDと暗証番号を入力すればOK。2016年より運用が開始され、現在は約1400台のバイクが300mおきに設置され、ステーションも約140カ所。Webサイトでステーションの使用可能なバイク数も検索できる。30分以内の短時間利用の場合にお勧め。
シティバイク
Webサイト:シティバイク
良質デザインが集まるデザイン・ディストリクトで旅の思い出の詰まった自分だけのとっておきを探そう
フィンランドといえば、良質デザインの宝庫。ヘルシンキを訪れたのならば必ず足を運びたいエリアがデザイン・ディストリクト。2005年に地域の人々により発案され、クリエイティブなショップを集結させようと生まれたエリアなのだ。現在約25の通りと約200のスポットで構成されており、ファッションやアート、ジュエリー、レストランにショールームと幅広いジャンルで成り立っている。エリア内をふらりと散歩するだけでも現在進行形のヘルシンキ、そしてフィンランドデザインの素晴らしさを堪能できるはず。
旅の間に訪れたのはスホネン姉妹による「Ivana Helsinki」。子供のころに見た光景からインスピレーションを受けてデザインされた洋服たちは、愛や記憶をモットーとしたメッセージが込められている。今年のテーマは動物に関する権利で、女性のファッションに限らず紳士服や子供服、生活雑貨まで幅広く展開。
ショップの1階にはシーズンコレクション、地下の宝箱をイメージした部屋にはムーミンコレクションが並べられている。3年目になる同コレクションは、アートとのコラボとしてキャラクターやイラストが大きくフィーチャーされたものから、ムーミンレースと呼ばれるレースの中にキャラクターたちが隠れている繊細なものまでさまざま。トーベ・ヤンソンの残した作品群をすべて使用できるため、豊かな発想でファッションに取り入れられている様子が見て取れる。
Ivana Helsinki
所在地:Uudenmaankatu 15, Helsinki
Webサイト:Ivana Helsinki
2店舗目に訪れたのは「EERO AARNIO DESIGN」。一見、ベッドや寝具を扱うショップのようだが、地下にはショールームが併設されている。ここでは、EERO AARNIOが手がける有名チェアに座り、その心地よさが体験できるスペースとなっている。
EERO AARNIO DESIGN
所在地:Erottajankatu 19, Helsinki
Webサイト:EERO AARNIO DESIGN
ヘルシンキ中央駅から徒歩5分ほどの場所にショップを構えるライフスタイルコンセプトストア「TRE」も必ず訪れておきたいショップの一つ。ショップ内の90%以上のアイテムがフィンランド製となっており、その質とデザインのよさはお墨付き。時間がない場合でもさくっとお気に入りのアイテムが見つかるため、自分へのご褒美はもちろん大切な人へのお土産探しにも重宝する。
TRE
所在地:Mikonkatu 6, Helsinki
Webサイト:TRE
街歩きで疲れたら、2016年にオープンし25万人が訪れたアーバンサウナとして人気の「Loyly」を訪れ本格サウナを体験してみては。サスティナブルな素材として、建物にフィンランド産の無垢の松の建材を使用。ヘルシンキ周辺で伝統的なスモークサウナが味わえる貴重な場所なのだ。薪木のウッドサウナもあり、現地のサウナ奉行にも好評とのこと。もちろん併設するカフェ&レストランで疲れがとれたあとまったりしてもOKだ。また、海岸沿いにあるためそのままサウナで温まったらば海に飛び込んでクールダウンすることもできる。
Loyly
所在地:Hernesaarenranta 4 00150 Helsinki
Webサイト:Loyly
ムーミンカフェとフィンランド料理レストランでちょっとブレイク&至福のディナーを味わう
小腹が空いたら、ベイサイドエリアのマーケットスクエアへ。ちょうどマーケットが開催されていたため寄り道をしてみることに。オレンジ色の屋根が食品関連、白の屋根が雑貨などと色分けされているのでお目当てのオレンジ屋根へと進んだところ、店先にはフレッシュベリーがたっぷり! 価格もかご一杯で5~6ユーロ(約650~780円)と日本では考えられないほどリーズナブル。味見をしたところ、酸味が少なく甘みが口に入れた途端に押し寄せてきた。
シナモンロールとコーヒーで地元の方々に混じってブレイク。セットで6ユーロ(約780円)。シナモンロールはほんのり甘く、しっとり柔らかな味わい。濃いめのコーヒーが甘さと絡むとなんともいえない美味しさに。マリメッコのUnikko柄の紙コップが愛らしい。
カウパットリマーケットスクエアから徒歩で1分程のキャンディショップ「Sweet Story Helsinki」もお土産選びに最適。毎日ショップ内で手づくりされるキャンディはムーミンモチーフやリコリスを使ったフレーバーなどが揃っている。シロップと水、砂糖と最低限の材料から生まれるキャンディは、10パック作るために2~3時間ほどかかるそう。手間ひまかけて生まれた1粒は優しくとろけ、1粒だけで幸せ気分に。店を出てそのまま右に直進するとヘルシンキ大聖堂と元老院広場がすぐに見えてくる。広場には、フィンランド独立100周年を祝うバナーなどが掲げられ、お祝いムードたっぷりの様子を感じてみてはいかがだろう。
Sweet Story Helsinki
所在地:Katariinankatu 3, Helsinki
Webサイト:Sweet Story Helsinki
ムーミンカフェの1号店もマーケット周辺を散策するのならば足を運んでおきたい場所だ。自然光が柔らかく入る店内は、スカンジナビアデザインを取り入れ、ヴィンテージのチェアやアアルトを始めとするフィンランドデザイナーのテーブルなどを採用し、ムーミンシリーズの魅力とフィンランドデザインのよさをたっぷり感じられる空間となっている。フロアも1950年代の食料品店そのままを活かした造りで、味のある内装となっている。
ファミリー層にも配慮した店内は、キッズ向けのプレイスペースも併設。さまざまな言語で訳されたムーミンシリーズの書籍や絵本もたっぷり。なお、再就職支援の場所ともなっており、50代以上の就職希望者を率先して採用し、技術を学んだあとにカフェが経営できるように訓練する場としての機能も併せ持っている。
取り扱うフードはカフェメニューで、ブレッドやケーキなどが中心。フィンランドらしい、リコリス&レモンのケーキ(7.4ユーロ、約960円)やストロベリーホワイトチョコレートムースケーキ(7.4ユーロ)など見た目は大きいがシュワッととろけるムースが美味しいスイーツなどショーケースにぎっしり。メレンゲ(3.5ユーロ、約460円)はニョロニョロシェイプとケースを眺めているだけでもワクワクするほど。
ブレッド類もフィンランドの伝統的な味が楽しめるカレリアパイ(2.5ユーロ、約330円)や、手の平以上のたっぷりサイズのシナモンロール(3.5ユーロ、約460円)などおやつや小腹を満たすためにぴったりのメニューが揃う。なお、持ち帰りも可能でお願いするとシックなロゴ入りの紙袋に入れてもらえる。もちろんスーベニア類も手に入れられる。ムーミンカフェでのみ手に入れることができるオリジナルトート(17ユーロ、約2200円)、エプロン(大人用18ユーロ、約2350円)などが人気だ。
Mumin Kaffe
所在地:Liisankatu 21, Helsinki
Webサイト:Mumin Kaffe
本格ディナーでフィンランド料理を堪能したいのならば、駅近の「Restaurant Lasipalatsi」へ。1930年代に完成した歴史的価値が高く機能的な「The Glass Palace」と呼ばれる建物内の同レストランは、地元民をはじめ観光客にも人気。ヘルシンキを訪れたのならば一度は味わいたい名店だ。ガラス張りのウィンドウに、趣たっぷりのエントランスや内装が魅力的で、改装はされているが1930年代にタイムスリップしたような雰囲気。
ディナーで味わったのは「Slightly salted salmon, vendace roe and summer potato salad」(14.50ユーロ、約1890円)と「Fillet of lamb from Åland, garlic paste and asparagus」(28ユーロ、約3650円)、そしてデザートとして「Fresh strawberries, milk ice cream and chocolate biscuit」(10ユーロ、約1300円)をオーダー。「Slightly salted salmon, vendace roe and summer potato salad」は、新鮮なサーモンをはじめとするシーフードと季節の野菜がたっぷりな前菜。さっぱりした味わいで、一気に食べきれるほどの美味しさだ。添えられたポテトサラダも味わいを引き立てる。
メインの「Fillet of lamb from aland, galic paste and asparagus」は、ラムのフィレ肉が中心で特有の臭みがまったく感じられないほどのフレッシュさ。食べやすくカットされたお肉は柔らかくジューシーで噛むごとに旨味があふれ出る。添えられたアスパラガスとガーリックペーストと一緒に召し上がれ。
そしてデザートは「Fresh strawberries, milk ice cream and chocolate biscuit」。カットされたフレッシュなストロベリーの甘さと濃いバニラ味のアイスクリームにチョコレートたっぷりの厚切りビスケットがベストマッチ。
Restaurant Lasipalatsi
所在地:Mannerheimintie 22–24, Helsinki
Webサイト:Restaurant Lasipalatsi
ヘルシンキの最新ホテルで市内を一望。クルーズ船も入港するベイエリアに宿泊
ヘルシンキ1日目に宿泊したホテルは2016年10月に開業したばかりのウォーターフロントに位置する「クラリオンホテル ヘルシンキ」。ヘルシンキ中央駅からはトラムで約10分ほど。停留所が目の前にありアクセスも抜群だ。クルーズ船も停泊する港沿いにあり、目の前に広がる水辺が思う存分楽しめる。キラキラと光を反射する外装が特長的な16階建てのホテルは客室数全425室。最上階には、ヘルシンキを一望できる「スカイバー」やサウナ、プールを完備しており日没前にはその絶景を見ようと多くのゲストが集まっている。
宿泊した部屋は「スタンダードダブルルーム」。白樺を彷彿させるドアを開けると16.5~20.5m2のベッドルームが現われる。シックな雰囲気に客室全体がデザインされており、90cm×2のツインベッドの正面には壁掛けのテレビが。サイドにはワークエリアがあり、マリメッコのOIVA/RASYMATTO MAGが2つ静かに使われるのを待っている。無料の紅茶やコーヒーとともにポットがあるが、ミネラルウォーターは有料。
入口横にはバスルームがある。キラキラ光る白いタイルが全面に貼られており、明るいバスルーム。エコを意識したソープディズペンサーが洗面台に1つ。トイレは壁のボタンを押して流すタイプ。バスタブもあり、こちらにはシャンプー兼ボディーソープが入ったディスペンサーを設置。お湯のでも申し分なく、ゆったりとくつろげる湯船の広さだった。アメニティはないので、歯ブラシセットなどはフィンエアーのポーチに入っていたものを利用。ヘアドライヤーも置いてあり、風量も十分だった。
バスルームを出た横の棚には、セキュリティボックスやミニバーなどをコンパクトにまとめたスペースがある。アイロンやアイロン台、ハンガーなどを一式収納している。なお、コンセントはSEタイプで、枕元やデスク付近をはじめ欲しい場所にきちんとあるという印象。角部屋だったため、天井まで続く大きな窓が3カ所あり採光も申し分ない。港側をはじめさまざまなヘルシンキの風景が楽しめたのもよかった。
同ホテルは朝食の美味しさも二重丸。2つある棟のカンファレンスなどを行なう側のレストランが朝食会場となっており、「RAVINTOLA」のサインが目印。水辺に反射した光で照らされた爽やかな店内で気持ちよく食事をとることができる。
ブュッフェ形式で、パンケーキやライ麦パン、新鮮な野菜やチーズ、自家製ヨーグルトにベリージャムなどを提供。シンプルなヨーグルトは、ジャムを載せるだけでごちそうに早変わりする。もちろんカリカリベーコンやエッグ系の定番も。なお、ジュース類はタブレットで操作するハイテクさ。グラスをセットし、好みのフレーバーを押せば注がれる仕組みだ。
クラリオンホテル ヘルシンキ
所在地:Tyynenmerenkatu 2, Helsinki
Webサイト:クラリオンホテル ヘルシンキ
なお、ホテルの近くには「Kスーパーマーケット」が歩いて1分ほどの所にある。また、トロリーなどで少し移動して「Sマーケット」へ足を運ぶのも楽しい。スーパーでは、フィンランド産のチューブ入りのハチミツやソーセージに合う旨味たっぷりのマスタード。そしてフィンエアーの機内食のスナックでも提供された「Fazer」の各種チョコレートなども手に入る。もちろんフィンランドならではのキシリトール関連商品も忘れずに手に入れたいところ。
ヘルシンキでの街歩きでは、トーベ・ヤンソン関連のエリアをはじめデザイン関連のミュージアムやエリアなど見どころが満載だった。さらにカフェやレストラン、そしてマーケットをはじめ食事の美味しさを思う存分堪能できた部分も大収穫。次回はヘルシンキ中央駅からVRを使ったタンペレ移動をはじめ、6月17日にオープンしたタンペレホールの「ムーミン美術館」を中心にレポートする。