旅レポ
米、酒から金属加工まで……“なんでもうまいどころ”新潟を旅した(その3)
日本酒、味噌、ワイン。新潟は「醸しどころ」!? 味噌の仕込み体験や人気ワイナリーを訪ねた
2016年10月17日 00:00
米どころの新潟は、その米を原料に用いる酒や味噌の生産が昔から盛んな地域でもある。そして、近年は土地の特性を活かしたブドウ栽培も始まり、創業間もない若いワイナリーから人気の高品質ワインが続々と生まれている。ここでは、プレスツアーで訪問した酒蔵、醸造所、ワイナリーを紹介したい。
純米作りにこだわる「今代司酒造」と味噌仕込み体験もできる「峰村醸造」
新潟駅のほど近く、沼垂(ぬったり)と呼ばれる地区に寄り集まるように建っているのが、酒蔵の「今代司(いまよつかさ)酒造」と、味噌造りを営む「峰村醸造」(峰村醸造の隣には糀製品を販売する「古町糀製造所」もある)。それぞれ会社としては異なるが、協力体制を築きながら新潟のモダンな発酵食の発信地として無料酒蔵見学や試飲・試食などを積極的に行なっている。
今代司酒造は1767年、江戸時代中期の創業で、江戸時代に建てられたものを移築した蔵や、明治時代の蔵が今なお残る歴史ある酒蔵だ。とはいっても規模は決して大きくなく、毎年10月から翌年4月にかけて仕込む寒造り専門で、仕込みに使われるタンクは約60本、生産する日本酒は16、17種類、年間約5万本となっている。すべて米と米こうじのみを使う純米作りにこだわっているのも特徴だ。
峰村醸造は1905年(明治38年)の創業。目の前を走る国道7号、栗の木バイパスという道路は、もともとは栗ノ木川が流れていた場所にできたもので、米などの水上輸送に好都合だったその川の近辺で醸造業が栄えていたという。味噌はもちろん、野菜の味噌漬けをいち早く作り始めたことでも知られている地域だ。
峰村醸造の売店では味噌の量り売りのほか、多彩な味噌漬けに加え、味噌汁作りに便利な出汁パックなど、お土産にも喜ばれる豊富な商品が揃っている。また、自分で仕込んで1年以上かけて発酵させ、できあがった味噌を持ち帰れる味噌の仕込み体験も可能だ。値段は1樽4kgで3000円。
今代司酒造
所在地:新潟市中央区鏡が岡1-1
峰村醸造
所在地:新潟市中央区明石2-3-44
砂地を活かしてブドウ栽培する「カーブドッチワイナリー」と4つのワイナリー
1992年から海沿いの角田浜という丘陵地帯で始まったのが、ワイン製造用のブドウ栽培。以前は砂丘が広がっていたというそのエリアで、年に約20種類の欧州産のブドウ品種が育っているという。
ほとんど養分のない砂地ながらも、水のやり過ぎによって品質を落としやすいブドウにとっては、その水はけの良さが1つのメリットとなる。堆肥を追加しつつ、草生栽培(雑草と一緒に栽培することで、その雑草から養分や水分を吸収させる栽培方法)にも取り組み、適正品種の選別、開発を進めている。
この地で初めに立ち上がったのが「カーブドッチワイナリー」。角田浜の土地の特性に最適な品種を開発し、日本人の味覚にも合う“本物のワイン”作りを目指し続けているワイナリーだ。
現在はスペインのアルバリーニョという白ワイン用ブドウ品種の生育に力を注いでいる。このアルバリーニョ品種を砂地で栽培することにより、白桃のような、官能的な芳香を醸し出すとのことで、2016年は苗木1000本、2017年には2000本とし、いずれは1万本規模にまで拡大させる計画だという。
カーブドッチワイナリーの周辺、というよりはほとんど同じ敷地に、4つの異なるワイナリーが集まっているのもこの地域の面白い特徴だ。カーブドッチワイナリーのワイン造りに共感し、カーブドッチワイナリーが運営する「ワイナリー経営塾」で学んだあと、独立したワイナリーとして近くの場所で事業展開しており、なかには農業経験がほとんどないにもかかわらず、脱サラして自分のワイナリーを立ち上げたという人もいる。その1つが「セトワイナリー」だ。
セトワイナリーが経営するワイナリー「カンティーナ・ジーオセット」は、2013年に独自のワインを販売し始めた、同地域で創業3番目のワイナリー。自前の45アールの畑で栽培するツヴァイゲルト種を中心に計1ヘクタールの畑を持ち、近隣農家から購入したブドウ種なども含め、年間の生産本数は約1万本。畑はまだ小さく、生産量も限られているとはいえ、ツヴァイゲルト種から作られたオリジナルワインは、同社が募集しているブドウの苗木オーナークラブ「ラ・ミーア・ウヴァ」会員向けの販売分だけで売り切れになるほどの人気だ。
カーブドッチワイナリー
所在地:新潟市西蒲区角田浜1661