旅レポ

サンセットと天の川は見られるのか? マウナケアの観測ツアーに参加してきた

マウナケア山頂で日没と星空を見てみたい! ハワイ高山の祭壇や珍しい植物も

標高約2800mにある中継地点、オニヅカ・ビジター・インフォメーション・センター

 ハワイアン航空の成田~ホノルル便初便に乗ったところからスタートしたハワイ取材旅行。初日のホノルルに続き、次の日はさっそくハワイ島へ移動とアクティブ。ハワイ島のコナに着いたら、観測ツアーに加わってマウナケア山に行き、サンセットと星空を見る予定になっていた。星オタクの筆者としては、ハワイでの取材において最も気になっていたツアーだ。

 しかしである。前日からハワイ島は運わるく熱帯低気圧に覆われ、ホノルル発コナ行きの便も大幅に遅れが生じた。そのため、コナ国際空港に到着後、空港の到着ロビーを出たら即、観測ツアーのクルマへ乗り込んでスタートという弾丸ぶり。コナ空港到着時は青空ものぞく好天だったのが救いだ。

オープンすぎるコナ空港ターミナル。詳しくは別記事で紹介する予定だ
コナが前日、熱帯低気圧で悪天候。ホノルルも微妙な天気ということで飛行機に遅れが
コナ空港前でピックアップしてくれるクルマへ向かってダッシュ

マウナケア山頂へサンセットと星空を見にいく

 今回、参加するマウナケア山頂サンセット&星空観測ツアーは、ハワイ島のアクティビティ提供会社である太公望ハワイが用意するプログラム。標高4205mのマウナケア山を登って、山頂から夕陽と星空を見ようというものだ。

 移動の途中でマウナケアに登れるよう、待ち合わせしていた4WD車に乗り換え。太公望ハワイの星空ガイドのタカさんによると、マウナケア山への入山が許可されたアクティビティ会社は、英語ガイドの3社と日本語ガイドの5社のみだという。しかも、その8社が毎日案内できるわけではなく、入山できる車数は1日5台。16時までが3台、16時からは2台しか入れない。今回乗ったのが、その16時からの2台のうち1台。それだけサンセット&星空観測ツアーは人数が限られるツアーというわけだ。

 また、今回のツアーは酸素量が少ない2800m以上を行くため、脳が発達段階にある12歳未満の子供は参加できないとのこと。太公望ハワイでは子供とその家族を対象に高度が低い場所での見られるツアーも開催しているそうだ。

 クルマはマウナケア山とマウナロア山の間を抜ける「ダニエル・イノウエ・ハイウェイ(旧サドルロード)」を走る。道路の脇を見ると溶岩の黒い大地がむき出しになっており、筆者の座った席からさらに向こうを見るとマウナケア山がそびえているといった具合だ。空はちょっと雲が多いのは気になるかな、という程度。

星空ガイドのタカさん。ジョークが得意な明るい方だ
黒い溶岩の向こうにマウナケア山が見える
空はどんどん晴れてきている気が

 マウナケア山の入口に入り、空港を発って1時間ちょっとで早くも標高2800m付近にあるオニヅカ・ビジター・インフォメーション・センターへ到着した。ここで身体を高山に慣らし、さらに上に登るための準備をするための休憩を取る……のだが、予想外の出来事が起きていた。

 タカさんによると、この先は上に行くために未舗装の道路を走る必要があるものの、前日の雨で道路が崩れているところがあったという。無事に補修が終われば通行できるそうだが、通れるかどうかは休憩が終わるころにはハッキリするらしい。悪天候が一過したからあとは山に登れば大丈夫だろう、と思っていたのだが甘かったようだ。

オニヅカ・ビジター・インフォメーション・センターに到着
標高約2800mのこの場所で、高山に体を慣らすためにいったん休憩
マウナケアの頂上へ行く道路は封鎖されている

女神の祭壇と珍しい高山植物を見る

 タカさんからいただいたバナナマフィンとお茶で休憩タイム。あまり息苦しいとは感じなかったが、オニヅカ・ビジター・インフォメーション・センターの時点ですでに酸素量は平地の80%だという。食後はタカさんお勧めの、銀剣草(アヒナヒナ)と女神ポリアフの祭壇を見に、センター脇の「アヒナヒナ・エンクロージャー」を散歩。

 銀剣草はハワイ独自の高山植物で、銀色の細長い葉が剣のように見えるからその名前が付いたそうだ。なお、寒い場所に適応した植物ゆえ、人間の体温の熱でも痛んでしまい枯れる原因になるので触ってはいけないという。

 実際にエンクロージャーに入り、ちょっと進むと銀色が目立つのですぐに見つかった。触りこそはしないが、葉の茂り具合や輝き具合は細工物みたいでつい眺めてしまう美しさ。また、2016年は25年ぶりに銀剣草が開花したそうで、枯れてきてはいたものの何とか花を写真に収めることもできた。

バナナマフィンとお茶でひと息
看板の向こうがアヒナヒナ・エンクロージャー
高山という厳しい環境の中で灌木や草などが生い茂っている
なかには花を咲かせるものも
名前のとおりメタリックシルバーが目立つ銀剣草
花穂が出ている株もいくつか見つけた
枯れてきてはいるものの濃いピンク色をしたのが銀剣草の花

 また、銀剣草が生えるなかを進むと、すぐに石積みと木で作られたポリアフの祭壇が見える。マウナケア山の「マウナケア」とはもともと「白い山」という意味であり、冬には雪に覆われることから名前が付いた。マウナケアの名前の由来になった雪、その女神がポリアフだ。

 祭壇の中心には白い布とネックレスがかけられたご神体らしき大きな石が。祭壇を見る際の注意として、祭壇の裏にまわってはいけないとタカさんに注意された。ダメなのは裏側だから側面はいいとは思うのだが、そこは小心者の筆者。女神さまのバチが当たらないように真正面から撮影した。

ハワイ神話に登場する雪の女神・ポリアフの祭壇

山頂に登れるのかどうか? その結果は

 さて、休憩が終わりに近づき、タカさんのところに戻るとお知らせが。道路の補修が終わらず、残念ながらこれ以上は上に登れないとのこと。「その代わり、あそこからサンセットを見ましょう」とタカさんが指したのが、センターと道路を挟んで向かいにある小高い丘。丘は「ハイ・ワヒネ・プー」という名で、「プー」とは噴火の際にできた噴石丘のことを言うそうだ。

 これから夕方になると寒くなるということで、クルマの中に用意されたジャケットとオーバーパンツを着用。そしてハイ・ワヒネ・プー頂上めざしてのハイキングがスタート。しかし、坂が急である以外にも思わぬ難関があった。呼吸である。標高が3000m近いということで、撮影のため何気に小走りするだけでも平地よりすぐに息が上がってしまう。タカさんは「ゆっくりねー。ハアハアしたら休みましょう」とツアー参加者に呼びかけていた。

今回のサンセット観測ポイント、ハイ・ワヒネ・プー
耐寒のため、服の上からジャケットとオーバーパンツを着用して出発
登る途中に生えていた高山植物、ママネ
足元の土が赤いのは溶岩の中の鉄分が酸化したため
ハイ・ワヒネ・プーの頂上に到着

 登ること30分弱ほど頂上へ。南方向を見るとなだらかなマウナロア山と数々のプーが見える。西方向はマウナケア山の袖になっており、今回はそこに太陽が沈むのを見るわけだ。頂上についてしばらく経つと、山もしくは雲と境目の空の色がオレンジや暗いトーンのブルーへ少しずつ変わってくるのが分かる。雲が多くてサンセットが見られるかなと心配だったものの、19時前になると奇跡的にマウナケア袖の雲がわずかに晴れ、太陽が沈んでいくのが見えた。

手前に見えるすり鉢状の小山はすべてプーで、奥の黒い山がマウナロア
こちらの大きいのも噴石でできたプー
空が少しずつ赤く染まってきて、いよいよサンセットの始まり
太陽が沈む予定のマウナケアの袖。雲が多め
雲の切れ目から太陽が顔をのぞかせる
夕陽がマウナケアに沈んでいく
赤く色づいていく空はきれいだけど、雲が多くなってきた模様

満天の星空を見られなかったのは残念だけど

 本来ならば、このあとに天体観測を……ということだったのだが、今回は空が雲に覆われてしまったため断念。残念ながらオニヅカ・ビジター・インフォメーション・センターから下山した。その後、トイレ休憩で立ち寄ったマウアケア・ステート・パークでちょっとだけ星が顔を出しているのを発見。ハワイでは幸せの星、喜びの星という意味の「ホクレア」と呼ばれている、うしかい座の1等星「アークトゥルス」をなんとか見ることができたものの、空一面の星はさすがに見るのはかなわなかった。

 天候の関係で最後はちょっと残念な結果になってしまった、今回のマウナケア山頂サンセット&星空観測ツアー。「個人的にはハワイ高山の植生と夕焼けが見られたからいいかな」と思っていたら、最後にタカさんがくれたのが50%オフのツアー割引券。これは太公望ハワイのツアーで天気などの関係でサンセットや星空が見られなかった場合に配布されるもの。発行日から5年以内に直接、太公望ハワイに連絡を取って申し込めば、通常料金の半額でサンセット&星空観測ツアーに再び参加できるのだ。

 思えば、今年2016年の12月21日にハワイアン航空が羽田からコナへの直行便の運航を開始するとの発表があった。次回チャレンジしたいと思ったときは、その直行便に乗って、直接コナに来ればよいのではなかろうか? そう考えると楽しみに思えてきた。

ツアー終了は夜遅いので最後にガイドさんから夜食が提供される
天候などが残念だった場合に配布される次回のツアー割引券

 ハワイ島は海と火山のイメージが強いかもしれないが、日本のすばる望遠鏡をはじめとするマウナケア天文台群があり、世界に名だたる天体観測のメッカ。やはり一度は山頂からサンセットはもちろん星空を見てみたい。今回のツアー記事を書いていて改めて思った次第である。

丸子かおり

フリーライター/編集者。主にIT系の記事を執筆することが多いが、科学系の書籍や料理本を手がけることも。趣味はごはん・手芸・デジタルなどジャンルを問わない自作。著書は「AR<拡張現実>入門」(アスキー新書)、「放射線測定のウソ」(マイナビ新書)など。ブログはhttp://mrk-reco.com/