【イベントレポート】

【APEX2016】ティアック、マップ表示や4K対応の機内ビデオ配信システムを展示

8mmテープ時代にはシェア100%を達成した同社の航空機向け製品

2016年10月24日~27日(現地時間)開催

ティアックは機内ビデオシステム(Video Reproducer)の最新機種を展示

 シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ・エキスポ&コンベンションセンターで開催されている、航空機内での乗客の体験向上を目指す展示会「APEX EXPO 2016」。展示会場では最新の機内エンタテイメントシステムが多数展示されている。長距離の国際線を中心に、乗客が視聴したいコンテンツを選べるオンデマンド型のシステムが増えているが、短距離路線を中心に機内の天井などに取り付けられたディスプレイを利用している飛行機は多い。ティアックは、そうした用途で使われる機内ビデオシステム(Video Reproducerと呼ばれる)を展示していた。

 ティアックは古くから飛行機向けの機内ビデオシステムを提供しており、8mmテープを用いたシステムではシェア100%に達したこともあったという。同社の機械部品の信頼性から、航空機の規格に準拠したパーツなども販売しているそうだ。

 機内ビデオシステムでは、いまも一部で8mmテープが使われることがあるものの、多くはソリッドステートなストレージへ移行。同社はSDカードを利用したシステムを提供している。ラックやインターフェースなどは従来からの規格に沿っており、テープを用いたシステムと入れ替えるだけで利用できる。出力はNTSCで、SDカードにはMPEG-1/2やH.264といったデータを収録しておくことになる。

 テープに比べて、メカ部などがないことによる軽量化、テープやヘッドの摩耗による劣化がなくメンテナンスコストも抑えられること、複数の航空機へ搭載するためのメディアの複製に要する時間の削減などがメリットとなる。乗客にとっても劣化したテープの映像を目にすることはなく、高品質な映像を楽しめることになる。

 こうしたシステムは先述のようにシートモニターを搭載していない短距離路線などで活用されており、日本の大手航空会社の大型機でも採用されているそうだ。また、オンデマンドな機内エンタテイメントシステムを搭載している場合でも、バックアップに搭載する例があるという。これは機内エンタテイメントシステムがダウンした場合でも、例えば機内の安全ビデオだけは確実に上映できるようにしておくなどの目的で搭載されるものとなる。

SDカード対応の機内ビデオシステム「VE-801SDi」。既存のテープ機器の置き換えを狙ったもので、SDカードを3枚搭載できる
こちらはオーディオ配信のシステム。テープからCDの時代を経て、こちらもソリッドステートなストレージへ移行が進んでいる

 さらにティアックでは、4K対応モデルや、機内ビデオ再生機能にフライトマップの表示機能を備えたモデルも展示。4Kモデルは一般の旅客機よりもビジネスジェットなどに向けた提案を主と考えているそうだ。

 後者のマップ機能については、飛行機自体が持つセンサーによる位置情報などは有線で提供されていることから、マップ用にインターフェースや配線が必要となるため、一般的にはビデオ再生とマップ表示は別々のシステムを搭載する必要があるという。これを、「飛行機の位置情報を無線で受け取る」という仕組みで、従来との互換性を保ちつつ、マップ表示とビデオ再生を一つのシステムに統合したものとなる。無線での情報取得と言っても多くの飛行機が搭載している標準的な機能を使ったもので、ざっくり言えば飛行機の位置を知ることができるWebサービス「Flightradar24」のようなことを実装していると考えれば分かりやすいだろう。

4K再生に対応したモデル「VE-801SDi-4K」。VIP用のビジネスジェットなどへの導入を狙っている
従来は別機器で対応させていたビデオ再生とマップ表示を1台に統合した「VE-801SDi-MAP」