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「京都Sound UDプロジェクト」で使用するヤマハ「おもてなしガイド」体験会

京都を舞台にアナウンス内容を多言語で情報提供する地域社会実証に官民が連携

2016年6月1日~2017年3月31日 実施

「京都Sound UDプロジェクト」で使用するヤマハ「おもてなしガイド」

 ヤマハは5月24日、京都府、京都市、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)とともに実施する「おもてなしガイド」を活用した初の官民連携による地域社会実証「京都Sound UDプロジェクト」の体験会を開催した。

 京都Sound UDプロジェクトは、日本語による音声アナウンスなどの内容が理解できなかった外国人観光客、耳が聴こえづらくなった高齢者や聴覚障がいの方々に向けて、対象エリアにおいてアナウンスの内容を多言語化した文字情報をスマートフォンやデジタルサイネージを通じて提供していくもの。京都の交通機関やショッピング施設、文化観光施設などにおいて「おもてなしガイド」を導入することで、官民が連携して京都の「おもてなし」の環境づくりを進めていこうという取り組み。

京都駅前広場で開催された共同記者会見。左から、ヤマハ株式会社執行役員 飯塚朗氏、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)理事 黒瀬泰平氏、ヤマハ株式会社 瀬戸優樹氏、京都市長 門川大作氏、京都府副知事 山田啓二氏

 ヤマハではこれまでにも企業や施設と連携して「おもてなしガイド」の実証実験を展開していたが、自治体と連携して「おもてなしガイド」の展開に取り組むのは今回が初。2016年6月1日~2017年3月31日の期間実施される京都Sound UDプロジェクト第1弾では、鉄道、バス、ショッピング、文化観光施設、協働メーカーなど25の機関がプロジェクトに参加する。

京都市長 門川大作氏
ヤマハ株式会社 瀬戸優樹氏がプロジェクトの概要を紹介した

 同日開催された共同会見には、京都府副知事、京都市長、NICT理事らが出席、京都市長 門川大作氏は「伝統と革新。京都はおもてなしの町。おもてなしガイドには必要な要素がすべて詰まっている。プロジェクトに取り組む企業や組織と大いに協力して、今回の取り組みとともに京都をよりよいものに進化させていきたい」とプロジェクトに対する意気込みを話した。

京都駅前で開催された共同記者会見に、京都府副知事、京都市長、NICT理事らが出席
プロジェクトに参画する代表者によるフォトセッション
「おもてなしガイド」を紹介するバスが京都駅前に展示された

 報道関係者を対象にした特別体験会では、スマートフォンにインストールされた「おもてなしガイド」を使ってデモンストレーションが行なわれた。実際に、バスの中で放送される音声アナウンスに合わせて、アプリのボタンをタップするとそれぞれ設定してある言語に合わせて、音声アナウンスの内容が文字情報として表示された。

 おもてなしガイドの大まかな仕組みは、音声アナウンスを流しているスピーカーから、利用者が持つスマートフォンのマイクに向かって、文字情報データを配信するもの。アナウンス音源にアナウンスの内容を示した文字情報をデータとして埋め込み、スマートフォン側では音源に含まれたデータを文字情報として再現するという仕組み。

 スピーカーから流されるデータ配信なので、端末とサーバー等の相互のやり取りを必要とせず通信回線を使う必要もなく、導入企業にとっても既存の放送設備を活用できるなどのメリットがあるという。また、音声アナウンスをリアルタイムで翻訳しているわけではないので、あらかじめ翻訳したアナウンス台本をデータとして登録しておくことで、さまざまな言語に対応することができるという。

 移動するバスの中で行なわれたデモンストレーションでは、騒音などの影響も考慮されているようで、音声アナウンスが聞き取りにくい状況にあっても、タップして数秒程度で文字情報が表示された。“アナウンスが流れている”と気づいてからでも、アナウンスが流れている間は繰り返しデータ配信されているので、アナウンスの途中からでも日本語の文字情報として確認することができる。

 今回の社会実証における対応表示言語は、日本語、英語、中国語(簡)、中国語(繁)、韓国語、タイ語、フランス語、スペイン語と、「京都観光総合調査平成26年」を元に京都に宿泊する外国人の約7割に対応できる8言語が選定されている。

 また、今回の社会実証のなかでは、決められた内容を録音したアナウンス音声を多言語化して情報提供する機能に加えて、肉声によるアナウンスやナレーションをリアルタイムで多言語化する機能についても、ヤマハでは国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が開発した「高精度音声認識技術及び自動翻訳技術」との技術連携により、機能の強化を進めていくとしている。

二条城にて「おもてなしガイド」に関する説明会がおこなわれた
二条城にて開催された「おもてなしガイド」に関する説明会で示されたスライド

(編集部:椿山和雄)