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NEXCO東日本、準天頂衛星「みちびき」4機を活用した除雪作業支援システムを2018年1月に試行導入

みちびき新サービス開始に先駆け導入。2025年めどに雪氷対策作業の完全自動化を目指す

2017年10月25日 実施

NEXCO東日本、準天頂衛星「みちびき」4機を活用した除雪作業支援システムを2018年1月に試行導入 NEXCO東日本が2017年10月の定例会見を実施。東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 廣瀨博氏(中央)のほか、同取締役兼専務執行役員 管理事業本部長 遠藤元一氏(左)、取締役兼常務執行役員 サービスエリア事業本部長 萩原隆一氏(右)が出席した
NEXCO東日本が2017年10月の定例会見を実施。東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 廣瀨博氏(中央)のほか、同取締役兼専務執行役員 管理事業本部長 遠藤元一氏(左)、取締役兼常務執行役員 サービスエリア事業本部長 萩原隆一氏(右)が出席した

 NEXCO東日本(東日本高速道路)は10月25日、2017年度10月の定例記者会見を実施し、準天頂衛星「みちびき」を活用する運転支援システムを搭載した除雪車を北海道支社で試行導入することや、営業概要などを説明した。

 NEXCO東日本は、代表取締役社長の廣瀨博氏が「世界に類を見ないほど多くの重雪氷地域の道路を管理する会社」と表現するほど、降雪量の多い地域を管理しており、同社管理約3900kmの高速道路のうち、約6割に当たる約2500kmは年間の積雪が1mを超える重雪氷地域となる。2017年もすでに10月11日には北海道支社管内で初雪を観測し、路面凍結を防止する作業を実施。台風21号の影響があった10月23日には最大24cmの降雪があり除雪作業も行なわれた。

NEXCO東日本、準天頂衛星「みちびき」4機を活用した除雪作業支援システムを2018年1月に試行導入 東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 廣瀨博氏
東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 廣瀨博氏

 同社は例年10月中旬から4月末にかけて雪氷対策期間を設け、安全・安心に道路を利用できるよう除雪作業と凍結防止作業を行なっているが、その作業に約6800名の人員が携わり、その36%が50歳以上だという。農閑期であることから農業を本業とする人を期間限定で雇用するなどしているそうだが、農業人口そのものの高齢化などもあり、安定的な人員確保と、熟練作業員の高齢化が懸念されている。

 その対策として、「雪氷対策の高度化」を重点テーマとして、ICTを活用した雪氷対策車両の運転や操作支援、自動化技術の開発に取り組んでいる。近いところでは、2015年度に「GPSによる除雪オペレーターアシストシステム」、2016年度にブリヂストンと共同開発した「ISCOS(凍結防止剤最適自動散布システム)」を開発している。

 そして2017年度に試行を開始するのが、準天頂衛星「みちびき」による運転支援システムを搭載するロータリー除雪車。みちびきは10月10日に4号機の打ち上げに成功し、24時間体制で確実性の高い測位が可能なサービスが2018年度にスタートする見込みとなっている。NEXCO東日本では4機体制のサービスインに先駆け、2018年1月から4機体制に対応したアンテナと受信機を活用した除雪車運転支援システムを搭載するロータリー除雪車の試行を、岩見沢~美唄間の約21kmで開始する。

 このロータリー除雪車では、準天頂衛星「みちびき」からの信号を受信機を介して高精度地図の情報と組み合わせ、運転席のモニタに除雪車の正確な位置を表示するもの。運転席のガイダンスモニタには、除雪車の通行位置、ガードレールなどからの離れ、走行車線へのはみ出しやガードレールなどへの接触を回避するための車体修正角の情報や警告を表示。オペレータの運転操作を視覚的にサポートする。運転操作が容易になるとともに、オペレータを補佐する助手による除雪車の位置確認、視界不良時などの安全確認や作業位置の連絡作業が軽減するなど、ロータリー除雪作業の省力化、効率化、安全性の向上を図るとしている。ロータリー除雪車はまず1台の運用を行なう予定。

NEXCO東日本、準天頂衛星「みちびき」4機を活用した除雪作業支援システムを2018年1月に試行導入 準天頂衛星を活用した除雪車運転支援システムのイメージ(写真左)。GPSと準天頂衛星で測位した位置と、高精度地図を組み合わせ、除雪車の正確な通行位置を把握。写真右のようなガイダンスモニタでガードレールからの離れ具合や、ガードレールへの接触を回避するための車体修正角の指示などを表示する
NEXCO東日本、準天頂衛星「みちびき」4機を活用した除雪作業支援システムを2018年1月に試行導入 準天頂衛星を活用した除雪車運転支援システムのイメージ(写真左)。GPSと準天頂衛星で測位した位置と、高精度地図を組み合わせ、除雪車の正確な通行位置を把握。写真右のようなガイダンスモニタでガードレールからの離れ具合や、ガードレールへの接触を回避するための車体修正角の指示などを表示する
NEXCO東日本、準天頂衛星「みちびき」4機を活用した除雪作業支援システムを2018年1月に試行導入 準天頂衛星を活用した除雪車運転支援システムのイメージ(写真左)。GPSと準天頂衛星で測位した位置と、高精度地図を組み合わせ、除雪車の正確な通行位置を把握。写真右のようなガイダンスモニタでガードレールからの離れ具合や、ガードレールへの接触を回避するための車体修正角の指示などを表示する
準天頂衛星を活用した除雪車運転支援システムのイメージ(写真左)。GPSと準天頂衛星で測位した位置と、高精度地図を組み合わせ、除雪車の正確な通行位置を把握。写真右のようなガイダンスモニタでガードレールからの離れ具合や、ガードレールへの接触を回避するための車体修正角の指示などを表示する

 現在の課題としては、4機体制に対応したアンテナと受信機が調達できないことと、高精度なデジタルマップが用意されていないことが挙げられている。前者は2018年早々にも提供が開始される見込みになっているという。後者については今回の試行区間である岩見沢~美唄間の約21kmについてはNEXCO東日本で作成したが、管内全域を自社で作成するのは難しいことから、他社による地図の制作・販売を待つ姿勢を見せた。

 精度については、現時点ではまだ新システムのアンテナと受信機での試験はできていないとのことだが、GPSが最大で10mほどの誤差が出ることがあったのに対し、みちびき1機での測位では数十cmに留まっていたという。廣瀨氏は「除雪作業は数cmの単位で橋梁のジョイントや路肩ギリギリを除雪しなければならない。メートル単位ではなくセンチメートル単位の精度が必要であり、GPSの測位を補正するみちびきで、24時間正確な測位が可能になるのは、除雪作業において非常に大きな効果をもたらすもの」と期待を寄せた。

 NEXCO東日本では、2017年~2020年の中期計画においてロータリー除雪車による低速除雪と、除雪トラックによる高速除雪それぞれで運転視覚支援、作業操作・運転制御支援などの技術開発を進め、将来的には除雪・凍結防止のすべての作業を完全に自動化することを目指している。

 除雪の高度化や、完全自動化に向けて廣瀨氏は、「除雪や凍結防止剤の自動散布システムなど、さまざまな面で開発を進めてきているのがNEXCO東日本の強み」とし、「一般車両の完全自動運転化が期待されているのが2025年ごろからと言われているので、それに対して、それほど遅れることなく除雪作業の完全自動化を目指したい」と今後の計画を明かした。

 また、世界的にも類を見ないほど多くの重雪氷路線を持っているNEXCO東日本にとって雪氷対策の高度化は「至上命題」「大きな使命感を持って取り組む」とし、「世界に冠たる雪氷対策会社を目指すべきだと考えている」との意気込みを示した。

NEXCO東日本、準天頂衛星「みちびき」4機を活用した除雪作業支援システムを2018年1月に試行導入 NEXCO東日本が取り組んできた雪氷対策の高度化
NEXCO東日本が取り組んできた雪氷対策の高度化
NEXCO東日本、準天頂衛星「みちびき」4機を活用した除雪作業支援システムを2018年1月に試行導入 2017年~2020年の中期計画でさまざまな技術開発を行ない、将来的に自動化を目指す
2017年~2020年の中期計画でさまざまな技術開発を行ない、将来的に自動化を目指す
NEXCO東日本、準天頂衛星「みちびき」4機を活用した除雪作業支援システムを2018年1月に試行導入 2025年の雪氷対策作業の完全自動化を目指す
2025年の雪氷対策作業の完全自動化を目指す

 また、NEXCO東日本では、雪道研究家「マンモシ博士」をキャラクターに、冬道ドライブの注意ポイントをまとめた冊子の配布やポスターを掲示して注意喚起を行なう「雪道キャンペーン」を展開。

 先述のとおり、北海道では降雪、積雪がはじまっているが、例年、初冬期は冬タイヤ装着やチェーンの携行が遅れ、突然の降雪に見舞われるとスリップ事故などが多発することから、冬装備の早期からの携行などの冬道ドライブ対策を呼びかけている。

NEXCO東日本、準天頂衛星「みちびき」4機を活用した除雪作業支援システムを2018年1月に試行導入 「マンがいち、モシかして…に備えて~」と呼びかけるマンモシ博士による冬道ドライブの注意ポイントをまとめた冊子を配布するなど、「雪道キャンペーン」を展開する
「マンがいち、モシかして…に備えて~」と呼びかけるマンモシ博士による冬道ドライブの注意ポイントをまとめた冊子を配布するなど、「雪道キャンペーン」を展開する

 このほか定例会見では9月の営業概要を発表。91日平均通行台数は約297万5000台(前年比1.8%増)で、料金収入は約711億3500万円(同3%増)。この実績については、9月の3連休に台風が上陸するという減少要因があったが、2月に開通した圏央道 境古河IC~つくば中央IC開通のネットワーク効果の高まりの好影響が続いた結果、結果的に前年増となったとの見解を示した。

 一方、SA(サービスエリア)/PA(パーキングエリア)の売上高は約118億2700万円で、前年比3.7%増となったが、このうちガソリンスタンドの売上高が36億3000万円で同16.3%増であるのに対し、飲食商品販売は81億9000万円と同1.0%減となった。

 飲食商品販売部門は、やはり9月の3連休の台風上陸がNEXCO東日本管内の広い範囲で影響を受けて伸び悩んだ。ガソリンスタンドの売上高増の要因は単価上昇で、各油種ともに前年比で11円ほど上昇。また軽油の給油数量の増加も見られたという。