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航空機の疲労の研究開発動向を議論する「ICAF2017(国際航空疲労委員会)」が名古屋で開幕

JALは展示ブースで整備状況をVRで説明、御巣鷹山事故についても展示

2017年6月5日~9日 開催

ICAF2017(国際航空疲労委員会:International Committee on Aeronautical Fatigue and Structural Integrity)が名古屋市で開催

 ICAF2017(国際航空疲労委員会:International Committee on Aeronautical Fatigue and Structural Integrity)が名古屋市の愛知県産業労働センター「ウインクあいち」で6月5日に開幕、9日までの日程がスタートした。

 各国持ちまわりで隔年開催されるICAFは、航空機メーカーや航空会社などの研究者が参加し、金属疲労など航空機の疲労の研究開発動向を議論する場。

5日間の日程には、MRJの見学も盛り込まれる

 ICAF2017の5日間の日程のうち、6月5日と6日がカンファレンス、7日~9日がシンポジウムとなる。途中、テクニカルツアーとして三菱航空機のMRJ(Mitsubishi Regional Jet)の工場見学なども予定される。海外からの参加が多く、期間中、講演や展示ブースの説明は英語で行なわれる。

 ICAF2017では研究開発を議論するほか、メーカー、研究者、航空会社などが一堂に会することで新たな交流を生み出し、それぞれの立場からの意見交換が活発になることも目的の一つ。

 初日に行なわれた開幕の挨拶では、ICAF2017の委員長で東京大学教授の武田展雄氏が、ICAF2017のサマリー、スケジュールなどを説明。JAXA(宇宙航空研究開発機構)の航空技術部門 部門長の伊藤文和氏はJAXAの概要などを説明した。

ICAF2017 委員長 武田展雄氏
JAXA(宇宙航空研究開発機構) 航空技術部門 部門長 伊藤文和氏
日本航空株式会社 整備本部副本部長 兼 株式会社JALエンジニアリング 常務取締役 北田裕一氏

 JAL(日本航空) 整備本部副本部長 兼 JALエンジニアリング 常務取締役の北田裕一氏は、「オペレーターとして航空機疲労の何十年もの整備経験があるなかで、疲労に対する品質の向上を見てきた」と、製造や研究開発に携わった人に感謝を述べ、1985年に起こった御巣鷹山の墜落事故については「自分たちの役割を自覚するとともに、自分たちの経験を共有して貢献したい」と希望を語った。

JALは金属疲労による不具合の検査風景や作業行程を紹介

 展示コーナーにブースを出展したJALは、金属疲労による不具合を発見するための検査風景の紹介や、JALにおける疲労検査・修理事例、作業行程などを紹介した。そして1985年の墜落事故の展示を行なっている「安全啓発センター」をパネルで紹介した。

 展示では、疲労検査の修理事例を紹介。ボーイング 767型機の交換したパーツを展示し、交換を行なうための準備の詳細や行程などを紹介している。また、VRのゴーグルを置き、ボーイング 767型機のWheel Well内の検査の模様や、小型機の検査の様子などを全方位の映像で紹介した。

 JALでは整備ノウハウの蓄積を強調、ICAF2017参加者にアピールすることで、今後、JALのノウハウをメーカーや研究者に役立ててもらうことを狙う。その結果、航空機の安全性や信頼性を高めるほか、整備しやすい機体となることを期待している。

 一方で、1985年の墜落事故の展示を行なっている「安全啓発センター」の紹介にもICAF2017の参加者が注目、今回の来日中に、安全啓発センターの見学を決めるなど、実際の事故経験の共有にも進展があった。

 なお、展示ブースはほかの日本企業も出展。ANA(全日本空輸)はフライトの長短距離による疲労の進み具合の実例を紹介、疲労に対する整備要件などを提案した。

JALのブース
JALはパネルや、交換したパーツを展示
ANAのブース。こちらも交換したパーツを展示
会場は名古屋市の愛知県産業労働センター「ウインクあいち」