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日本旅行業協会、2016年度に取り組む7項目の事業方針を発表

ツーリズムEXPOジャパンに合わせて発表されるアワードも募集

2016年3月31日 発表

 JATA(日本旅行業協会)は、3月31日に記者会見を開催し、2016年度の事業方針を発表した。

2016年度の事業方針を説明する、JATA事務局長の越智良典氏

 現在国内の観光・旅行業界は、訪日外国人観光客の増加によって国内外から注目が集まっている。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催もあり、観光大国実現に向けたさまざまな政策も実現されようとしている。そういったなかJATAは、訪日外国人旅行需要を伸ばすだけでなく、訪日外国人旅行の10倍の規模がある国内旅行もしっかり伸ばしつつ、海外との相互交流も高め、国内外における日本の観光・旅行業界のさらなる地位向上を目指すという点を、2018年度までの目標として掲げている。

 そして2016年度は、以下に示す7つの事業を掲げて、業界の発展や観光立国の実現に取り組むという。また、JATA事務局長の越智良典氏は、「業界の代表や消費者の声を代弁し、国や政治家に政策や法制度などに関して発言するロビー活動も重要と考えている」とし、観光・旅行業界の地位向上や価値創造産業への進化を目指すとしている。

(1)海外旅行の復活を目指す

 現在、訪日外国人旅行は順調に伸びているのに対し、日本人による海外旅行は逆風下にあることを踏まえ、「海外旅行の復活なくしてJATAなし」(越智氏)とし、しっかり正面から取り組むとしている。特に落ち込みの激しいヨーロッパ需要については、6月にイベントを開催したり、9月の「ツーリズムEXPOジャパン」でも大きなイベントを開催するなどして、需要回復につながる道筋を作っていきたいという。また、若年層のパスポート取得無料化によって海外旅行を促進する「パスポートキャンペーン」などの政策提言も行なっているが、関係機関や政治家に働きかけ、政策提言の実現に向けて努力していくとする。

(2)国内旅行では東北復興支援活動を継続展開

 国内旅行に関する取り組みについては、東北復興支援活動を継続して展開していく計画。また、2016年2月に発生した軽井沢でのスキーバス事故の発生を踏まえ、事故の再発防止に向けて制度を整えていくだけでなく、「業界でできることはすべてやり尽くす」(越智氏)姿勢で取り組むという。

(3)訪日旅行における次のステージへの提言

 訪日外国人旅行については、2000万人の次のステージへ向けた施策を推進していく。まず2016年2月に、訪日外国人旅行の地域分散化や季節分散化を含めて拡大させるために必要となる施策を示した「訪日外国人旅行 次のステージに向けた提言書」を観光庁に提出。また、JATAが実施しているツアーオペレーター品質認証制度の推進や、ランドオペレーター(現地の交通手段などを手配する業者のこと)を対象とした制度作りも積極的に取り組んで行くという。

(4)国際ツーリズムでのリーダーシップ強化

 2015年に日本がUNWTO(国連世界観光機関)の理事国となったことを受けて、国際会議で発言したり、日本での成果を発表することが重要と越智氏は指摘。また、日本が世界に先駈けて制定した、UNWTOが定める倫理憲章に沿った表彰制度(ジャパン・ツーリズム・アワード UNWTO部門)と合わせ、UNWTOと連携して、質の高い日本の観光や旅行をアピールしていきたいという。

(5)「ツーリズムEXPOジャパン」を中核事業に位置付け

 ツーリズムEXPOジャパンは2016年の開催が3回目となるが、ホップ・ステップ・ジャンプのジャンプの年として、新しいことに挑戦したいという。また、旅行のイベントということだけでなく、2016年10月より始まる、東京オリンピック・パラリンピックのPR活動との連携も視野に入れているという。これによって、単なる旅行イベントではなく、日本を世界に発信するイベントに進化させたいとのこと。詳しい内容については、今後順次発表する予定。

(6)優秀な人材獲得と育成

 海外旅行販売に欠かせない広範な知識習得を目指す「エリア・スペシャリスト」養成講座など、企業では実施することが難しい教育・研修制度の充実を今後も図っていくという。また、合同インターンシップや、経済産業省の「産学連携サービス経営人材育成事業」に指定された東洋大学との連携事業の推進とも合わせ、優秀な人材獲得や育成に努めていくとのこと。

(7)「安心安全の旅」の提供

 安心安全は旅の基本として、このところ相次いで発生したテロやバス事故など、予測しないことが起きることを踏まえて、環境の変化に迅速に対応することを業界団体として取り組んでいきたいとする。そして、事件など危機に際したときにこそ、旅行会社を通した旅行することが安心安全を確保するという意味でいかに大事なことか、啓蒙していきたいという。

 また、2016年4月より「障害者差別解消法」が施行されることを受け、「障がいのある方の旅行参加を推進するための手引き」を配布したり、JATAに専用相談窓口を設置するなどして、健常者と障がい者の共生社会の実現に向け、しっかり取り組んでいきたいとする。


 これら7つの事業に取り組みつつ、「国や政治家から旅行業界に注目が集まり、さまざまな相談や打診を受けることが増えているので、業界団体としてしっかり発言して、業界の発展を目指して取り組んでいく」(越智氏)ことを、2016年度の事業方針にしたいとのこと。

2016年開催の表彰事業について説明する、JATA海外旅行推進部 担当副部長の佐野学氏

 続いて、2016年に開催される表彰事業についての説明が行なわれた。

 まず、2016年で23回目の開催となる「ツアーグランプリ2016」。こちらは、旅行業における企画力やマーケティング力の向上、「観光立国」の施策に寄与することを目的として、国内旅行、海外旅行で最も優れた企画旅行を表彰するもの。選考対象は、2015年7月から2016年6月末までに催行された企画旅行(募集型および受注型)で、2016年7月下旬に行なわれる第1次選考会、そして8月下旬の審査委員会による選定で、受賞賞品が決定される。

 2015年のツアーグランプリ2015では、国土交通大臣賞は国内旅行が初めて受賞。また、2015年の応募件数は113件(海外旅行部門77件、国内・訪日旅行36件)となっており、2016年は海外旅行の応募を積極的に働きかけていきたいという。

 受賞商品の発表と表彰は、2016年9月24日に「ツーリズムEXPOジャパン 2016」会場ステージ内で行なう予定。

 また、国内外の団体・組織・企業の、持続的に成果が現れている取り組みを表彰する「第2回ジャパン・ツーリズム・アワード」の募集を2016年4月1日より開始すると発表。ツアーグランプリ2016は、旅行会社の旅行企画を対象とした表彰事業となっているのに対し、ジャパン・ツーリズム・アワードはUNWTO倫理憲章に加盟している団体や会社などに限定し、地域と連動した事業創造や、新規路線開発などの大きな取り組みを対象としている。

 2015年の第1回ジャパン・ツーリズム・アワードでは、応募総数133件(大きく分けて国内・訪日領域が103件、海外領域が25件で、プラスアルファが5件)で、大賞は「瀬戸内国際芸術祭実行委員会」の「瀬戸内国際芸術祭の開催による地域再生の取り組」が受賞。2016年は海外領域の応募を増やすべく働きかけたいという。

 募集受付は、2016年4月1日から5月31日の期間で、表彰式は2016年9月22日に開催予定。

(平澤寿康)